日本人へ リーダー篇 (文春新書 752)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607525

作品紹介・あらすじ

なぜリスクをとるリーダーが出ないのか-危機の時代こそ歴史と向き合え!21世紀の「考えるヒント」40本。

感想・レビュー・書評

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  • 月刊「文藝春秋」の連載の新書化。
    リーダ篇とありますが、私あるいは民に対する「公」はどうあるべきかを論じた内容。
    とはいえ、割とさらっと読めました。塩野氏自身が丸くなったのかもしれません。(2010.6.23)

  • 「律法」と「法律」の話は非常に興味深かった。ルールに自分を合わせるべきか、ルールに自分を合わせるかというスタンスはどちらが正解という訳ではないが、盲目的にならずにしっかり自分で考えなければいけないと思った。

    そして、何よりローマ史についての自分の不勉強を痛感した。。

  • なぜ彼らにだけ優れた戦略なり戦術を考えだすことができたのか。それらは彼らが他の人々よりは柔軟な思考法をする人であったからです他者が考えつくことと同じことを考えていたのでは絶対に勝てない。疑問を常に抱きその疑問を他者が考え付きもしなかったやり方で解決していく。それには思考や発想の柔軟性こそが不可欠でこれこそが勝敗を分けるカギになるのです。
    国益とは具体的な利益になって帰ってこない限りそれを追求したことにはならないのである。ではそれをどうやれば国益追求には有効か。500年昔の外務官僚だったマキャベリは次のように言っている。「いかなる事業といえどもその成否は参加する全員が利益を得るシステムを作れたか否かにかかっている
    マキャベリの次の言葉を明日の外生担当者たちに送りたい「常に勝ち続ける秘訣とは中位の商社で居続けることにある」
    自己反省は絶対に1人でなされなされねばならない。決断を下すのも孤独だな反省もまた孤独な行為なのである自分、自分と向き合うのだから1人でしかやれない。もしかしたらプロとアマを分ける条件の1つである「絶対感覚」とはそれを磨くことと反省を怠らないことの2つを常に行っていない限り習得も維持もできないものなのかもしれない。
    会社でも破産でもすれば最も被害を被るのは外資でもどこでも行き先に不足しない人ではなく会社が潰れようものなら行き場のない人々であろう。ならば会社の経営状態に誰よりも関心を持ちその工場を誰よりも願うのは幹部社員ではなくて一般社員であるはずだ。国家もそれと同じなのである。
    マキャベリは次のように言っている。「天国へ行くのに最も有効な方法は地獄へ行く道を熟知することである」国政担当者ならば二股かける位当然ではないか。この人たちにとっての責務は国民を天国に向かわせることにあるのだから。この程度の事前対策はいくらなんでもなさっていたのでしょうね。
    歴史に親しむ日常の中で私が学んだ最大の事はいかなる民族も自らの資質に合わないことを無理してやって成功できた例は無いと言うことであった。
    要するに交流・安定期と衰退期を分けるのは大同小異と言う人間の健全な知恵を取り戻せるか取り戻せないかにかかっているのではないかと思っている。つまり問題の本質は何かに関心を戻すことなのだ。言い換えれば問題の単純化である。そして単純化ができなければ百家争鳴をしても改革は頓挫する。
    それは日本人の法律に対する盲信と言っても良い位の過剰な信頼である。まるで宗教でもあるかのようにいちど決めたら一切買えないいや変えてはならないと思っているのではないか。法律とは政策であり人間の考えたものである以上完全と言う事はありえない。それ故法律は通ってもその後には微調整が必要なのは当然のことなのだ。法律を通すことでの国家改革と個人のダイエットは完全に違うのである。ダイエットならば微調整しながら進むのが健康を損なわないで成功する唯一の道だから体格はこの反対でまず先に大筋を変えその後で微調整をすると言う順序にしないと効果がない。


  • 題名と中身が少し異なる印象(※)だが、塩野七生氏の考察が面白い本だった。ローマ人の物語もぜひ読みたい。
    (※リーダー編とのことで、ローマ史に基づいて組織の中でリーダーシップを発揮する手法が書かれていると思ったが、雑誌連載コラムをまとめただけの要素が強かった。)

    ビジネスにおいて参考になりそうだったのは、政策の継続が大事だということ。
    危機の時代は、状況を打開できると夢をみるためか指導者が頻繁に変わる。そのため、政策の継続性を失うらしい。神曲を書いたダンテは、「痛みに対処する、病床の上で輾転と身体の向きを変える病人」として例えている。

    よく組織の中で「上が悪いから」と思うことがサラリーマンなら一度は思うかもしれないが、指導者が変わったところであまり効果がないことをローマ史から学べた。

  • 戦争を潜ってきた女は、口がわるい。

  • 塩野さんの「ローマ人の物語」を3分の2ほど読み終えたのですが、いつも思うのは歴史から学ぶことは多い、と言うことです。この本は彼女が10年ほど前に書いた著書で、まだ「ローマ人の物語」が完結していない時に書かれたようです。執筆中の心境なども綴られていて興味深いのですが、なんと言っても国の在り方や政治についてなど、国際情勢を交えながら日本のリーダーたちへ物申している内容が、ローマ人の物語で再三取り上げていることに通じているので、やっぱり黙って見ているわけにはいかないのだろうと思ってしまいます。
    私自身もローマ人の物語を読んでいて文章を抜き出していますが、政治家やビジネスマンには必携の書ではと常々思っていたので、この本の苦言は塩野さんなら、さもありなんと思ったのでした。
    この時代のブッシュはいなくなり、アメリカはトランプへ。イギリスはEU離脱を巡り国が割れ、安倍首相は長期政権下で外交に精を出しても、日本の立ち位置はパッとせず、北朝鮮の動きに手も足も出せず、韓国とは犬猿の仲状態の現在。これを彼女はどう思っているのか気になります。この頃の首相は小泉さんでしたが、案外塩野さんが彼を評価しています。この本の筋とは離れますが、最近では息子の進次郎氏に注目している記事が雑誌にあったようなので、政治オンチの日本人にあって彼が本物のリーダーになるのか…ホント誰かいないのか…と思うのです。
    それにしても、世界における日本の非力は目に見えるし、国際連合の力の低下も今じゃ歴然。国際政治におけるプレーヤーの持つ切れ味の良い剣は、5つということです。1.拒否権をもっている 2.常任理事国である 3.海外派遣も可能な軍事力 4.核をもっている 5.他国に援助も可能な経済力 。日本はこの中で一つしか持っていないのですから、力がある筈はありません。そこでどういう国を目指すのか考えるのは私たちなのですが…

  • 文藝春秋連載のエッセイ集。イタリアに住む著者の視点から、日本への鋭い批判、提言が面白い。印象に残った記述を記す。
    「ユリウス・カエサルは、言っている。「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」
    「なぜか、危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、人々は夢見るのであろうか。だがこれは、夢であって現実ではない」
    「情報に接する時間を少し節約して、その分を考えることにあててはいかが」

  • 文藝春秋への寄稿文(2003/6-2006/9)をまとめたもの。時事テーマである、戦争を通じて、政治について考えさせられる一品。

    以下注目点
    ・意思を持続させるエネルギーの中で、最も燃料効率が良いのは私利私欲。
    ・相手がどう考えどう出てくるかを知って”勝負”に臨むのは、ゲームに参加したければ最低の条件である。
    ・派兵の目的はいずれも軍事ではなく政治にあるのでは共通しているのだから。
    ・「やる」ことよりも、「やりつづける」ことのほうが重要である。
    ・体力、国家にとっての経済力、の回復が必要不可欠になる。
    ・政策の継続性の欠如こそが三世紀のローマ帝国にとって、諸悪の根源であったのだった。
    ・大義とは、客観的ではなくて主観的である場合はなはだ多し。
    ・アレクサンダーとカエサルは、敗者さえも納得する大義に変えた。
    ・他の国が大義と言おうが日本だけは心中でせせら笑い、それでいながら冷徹に国益を考え、その線で行動することだけである。
    ・伸縮自在な距離を保つということは、手段の目的化という、専門家を事象する人々の犯しがちな誤りから、自由でいられるやり方の一つではなかろうか?。
    ・傲慢とは、心中にひそむ劣等感の裏返し。
    ・「いかなる事業といえどもその成否は、参加する全員が利益を得るシステムを、つくれたか否かにかかっている。」
    ・「自分ならばどう考えるだろうか」を、あらゆることのスタート・ラインにしてみてはどうであろうか。
    ・政治とは、個人ではできない事柄を代わって行うことでないか。
    ・魚は頭から腐る。ローマ帝国末期に起こった真の悲劇。

  • 塩野七生『日本人へ リーダー篇』文春新書 読了。年間定期購読しようねw 歴史家ほど政治を見る目に優れた者はいないな。数年前の内容ではあるが、日本外交が崩壊している今、示唆するところは多い。彼女のエッセイが、くだらぬジャーナリズムに陥っていない証拠。
    2010/09/24

  • 著者塩野七生女史の文芸春秋の連載をまとめたもの。連載時期は2003年6月から2006年9月ということもあり、時に小泉純一郎が日本国首相であり、ジョージ・ブッシュがアメリカ合衆国大統領であったこともあり、たびたび登場する。また、ローマ時代のカエサルや敵将ハンニバルもたびたび登場する。マキヤベリの引用もところどころ出てくる。

    本書を通じて一貫して著者が主張していることは、民主主義は血であがなうことである、ということであるように思う。湾岸戦争で多額のお金を出した日本が認められないのはなぜか?なぜ、日本の民主主義はこうも堕落してリーダーシップあふれる真の政治家が少ないのか?に対しての答えとなる。

    著者はローマ時代の専門家だ。ローマ共和国では、市民は政治に参加する権利を有していたが、ローマのために戦う義務も負っていた。市民ではない周辺地域の住民は、政治に参加する権利もなかったが戦う義務もなかった。

    日本の民主主義は、権利だけが尊重され、義務が置き去りにされてしまっている。

    本書は雑誌の連載の再掲でしかないにもかかわらず、連載終了後4年経過した後に新書として出版したというのは、いかがなものかと思う。


    「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。
    多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない。
    ユリウス・カエサル」

    2013.11.02 借りる
    2013.11.12 読了

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