イスラーム国の衝撃 (文春新書 1013)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610136

作品紹介・あらすじ

中東の問題にはどのようなことが根幹にあるのか、歴史的観点や国際情勢の変遷を分析しながら、なぜ、どのようにしてイスラム国は発生し今に至るのかをイスラーム国の衝撃ではわかりやすく解説してあります。テレビや新聞の報道では、偏った情報しか得られませんが、この一冊を読めばイスラム国とは一体何なのかということがわかります。

感想・レビュー・書評

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  • 2016.11.1 11/8読了

  • 池内先生のイスラーム地政学は間違いない。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/709802

  • ふむ

  • (「BOOK」データベースより)amazon
    謎の「国家」の正体に迫る――イスラーム国はなぜ不気味なのか? どこが新しいのか? 組織原理、根本思想、資金源、メディア戦略から、その実態を明らかにする。

    「イスラーム国」そのものは、イラクやシリアの現地で不満を抱く粗暴な若者たちに、目的意識と冒険を求めて流入する先進国育ちのムスリムが加わって、国際政治のパワーバランスの変化の過程で不必要に強力な武器と資金を手にした集団にすぎないという面もある。しかし、このような集団が誕生した背景には中東世界の構造変容がある。にもかかわらず日本のマスコミも知識人も、実態からかけ離れた日本的な理想を投影して「イスラーム」を論じてきたため、中東の現実も、「イスラーム国」の正体を正確に捉えられていない。本書は、以下のような視点から「イスラーム国」の誕生と勢力拡大がもつ意味を解きあかす。どこが画期的なのか? これほど大規模に武装・組織化したのはなぜか? どのような組織的特徴をもっているか? 資金源は? テロ行為だけでなく領域支配を実現できたのはなぜか? 周辺地域にいかなる影響を与えるか? 米国とイランの接近は何を意味するか? 「イスラーム国」とイスラーム教(コーラン)はどのように関係しているか? 「イスラーム国」にいかに対処すべきか?

  • 9.11以降、アラブの春を経てどのようにイスラム過激派が振興し、イスラム国がカリフ制復活を宣言するに至ったのかをかなり詳しく描いている。
    新しい知識が沢山。

  • イスラーム国の衝撃というタイトルにあるように、何が衝撃だったかといえば、以下の部分に端的に描かれている。
    「『カリフ制が復活し自分がカリフである』と主張し、その主張が周囲から認められる人物が出現したこと、イラクとシリアの地方・辺境地帯に限定されるとはいえ、一定の支配地域を確保していることは衝撃的だった」(14頁)。
    さらに、「既存の国境を有名無実化して自由に往来することを可能にした点も、印象を強めた。既存の近代国家に挑戦し、一定の実効性を備えていると見られたからである」(14頁)とあるように彼らは「挑戦」をしたのだと、つまり新しい展望を切り開くかのように見えたこと。
    そのように見えたことが重要である。
    なぜならそれは「現状を超越したいと夢みる若者たちを集めるには十分である」からだ。
    また、メディア戦略とその卓抜さも指摘される。「『イスラーム国』は…少なくとも『ドラマの台本』としては、よくできているのである。ラマダーン月の連続ドラマに耽溺して一瞬現実を忘れようとするアラブ世界の民衆に、あらゆる象徴を盛り込んだ現在進行形の、そして双方向性を持たせた『実写版・カリフ制』の大河ドラマを提供した」。(19頁)
    こうした戦略は「イスラーム世界の耳目を集め…それによって一部で支持や共感を集め、義勇兵の流入を促がし、周辺の対抗勢力への威嚇効果を生んでいるとすれば」(19頁)、その効果は単なるPR以上にイラクやシリアでの戦闘や政治的な駆け引きでも有効だと指摘されている。

    そしてこうした「イスラーム国」はどこから現れたのだろうか。基本的には「2000年代のグローバル・ジハード運動の組織原理の変貌を背景にしている」(34頁)。ここでいう組織原理の変貌とは2001年の9・11事件以降の「対テロ戦争」によってアル=カーイダという組織が崩壊したためである。これは「『組織なき組織』と呼ばれる分散型で非集権的なネットワーク構造でつながる関連組織の網を世界に張り巡らせ…アル=カーイダの本体・中枢は、具体的な作戦行動を行う主体というよりは、思想・イデオロギーあるいはシンボルとしての様相を強めた」(34頁)ことによる。米国によるアル=カーイダへの攻撃に伴い、「それに共鳴する人員と組織は生き残り、新たな参加者を集め、グローバル=ジハード運動が展開していった」(45頁)。この運動の展開を、以下のように筆者は四つの要因として指摘している。
    「(一)アル=カーイダ中枢がパキスタンに退避して追跡を逃れた。
    (二)アフガニスタン・パキスタン国境にターリバーンが勢力範囲を確保した。
    (三)アル=カーイダ関連組織が各国で自律的に形成されていった。
    (四)先進国で『ローン・ウルフ(一匹狼)』型のテロが続発した。
    」(45頁)
    (一)及び(二)はパキスタン、アフガニスタンという国家機構の脆弱な地域において組織の回復が行われたことを指摘している。これは今のシリア、イラクと似たような状況に陥っていた地域、つまり国家機構の脆弱性を突く形での勢力範囲の拡大ともとれる。一方、(三)(四)は「フランチャイズ化」と呼べるようなものであるが、これも様々な形での脆弱な部分を突く形である。特にインターネットを介しているという点が目新しいといえばそうだ。

    この本が刊行された時期はイスラーム国の衝撃が盛んに唱えられていた。そのイスラーム国誕生までの経緯は2000年代の9.11テロおよびイラク戦争を背景に、90年代のジハード主義者の国内テロ路線から対米およびグローバル路線への転換、80年代の冷戦構造下における対共産圏への対抗馬たるアフガンゲリラへのアメリカの支援等、イスラームの歴史として捉えるだけでなく、冷戦構造を支え、その後の唯一の超大国となったアメリカと関連する歴史上の産物でもある。もちろんその特性が宗教的特性と無関係ではない。
    しかし、私にとってのこの「衝撃」は現状の支配的な価値観、つまり近代ヨーロッパ的な様々な枠組みに対しての極端な相対化とそれを行う実効力があった事は間違いない。

  • 一見メチャクチャにもうつるISだが、かれらなりにオーセンティックなイスラムの教えに準拠しているということ。キリスト教が歴史的にそうしてきたようにイスラム教の世俗化が可能かどうかなど。

  • イスラム国解説本として一般向けでは良書というレビューを見て手に取りました。
    図書館予約から実に半年待ちました。人気はあるようです。

    しかし、内容は序盤の概説がひたすら表現を変えて繰り返されるだけで
    最も興味のあるイスラム国統治の実態、今後の領地拡大の可能性、米国などの対応(無人兵器の実験場にならないか?)といった内容はありません。
    (2名の邦人殺害事件以前の著作でもあります)
    2001年同時多発テロからの2014年イスラム国が認知されるまでの政治思想、国際関係がメインです。
    著者は学者であり、ジャーナリスではありません。
    そのためか、過剰なレトリックで文脈が追いづらく、難解なものになってしまっています。
    また、一連の事件を歴史書にとどめる視点で扱っており、全くと言っていいほどイスラム国への批判はみられません。

    ◆メモ
    グローバルジハード
    2001年米国同時多発テロあたりに、アルカイダによって、分散型組織によるグローバルジハードの「ローンウルフ」型テロは成立していあ。
    ネット進展とともに成長していく。
    本書では「ネイバーフッド」テロというワードは未使用。ただし、ほぼ「ローンウルフ」と同義と思われる。実際にテロ訓練経験の有無などニュアンスが違うかもしれない。
    イスラム教には、グローバルジハードを裏付ける教義があり、分散型テロの共通認識となっている。

    イスラム国の領地支配
    アラブの春が皮肉にも環境整備のステップになっていた。
    シリア、イラクと国境を超えたことを本書は持ち上げ過ぎ。たまたまの偶然の側面が大きいのでは。

  • 【由来】


    【期待したもの】
    ・大学図書館でサラリと読んで国枝本や中田考本と比較

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

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著者プロフィール

東京大学先端科学技術研究センター教授。専門はイスラーム政治思想史・中東研究。著書に『アラブ政治の今を読む』(中央公論新社)、『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)、『シーア派とスンニ派』(新潮選書)など多数。

「2022年 『UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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