問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)
- 文藝春秋 (2016年9月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166610938
作品紹介・あらすじ
大ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』に続く第2弾! 現代最高の知識人、トッドの最新見解を集めた“切れ味抜群”の時事論集。テロ、移民、難民、人種差別、経済危機、格差拡大、ポピュリズムなどテーマは多岐にわたるが、いずれも「グローバリズムの限界」という問題につながっている。英国EU離脱、トランプ旋風も、サッチャー、レーガン以来の英米発祥のネオリベラリズムの歴史から、初めてその意味が見えてくる。本書は「最良のトッド入門」でもある。知的遍歴を存分に語る第3章「トッドの歴史の方法」は、他の著作では決して読めない話が満載。「トッドの予言」はいかにして可能なのか? その謎に迫る! 日本オリジナル版。「一部を例外として本書に収録されたインタビューと講演はすべて日本でおこなわれました。その意味で、これは私が本当の意味で初めて日本で作った本なのです」(「日本の読者へ」より)「今日の世界の危機は『国家の問題』として捉えなければなりません。中東を始めとして、いま真の脅威になっているのは、『国家の過剰』ではなく『国家の崩壊』です。喫緊に必要なのは、ネオリベラリズムに対抗し、国家を再評価することです」(本文より)「イギリスのEU離脱は、『西側システム』という概念の終焉を意味しています」(本文より)(目次)日本の読者へ――新たな歴史的転換をどう見るか?1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」3 トッドの歴史の方法――「予言」はいかにして可能なのか?4 人口学から見た2030年の世界――安定化する米・露と不安定化する欧・中5 中国の未来を「予言」する――幻想の大国を恐れるな6 パリ同時テロについて――世界の敵はイスラム恐怖症だ7 宗教的危機とヨーロッパの近代史――自己解説『シャルリとは誰か?』
感想・レビュー・書評
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「ヨーロッパとは何か? ヨーロッパとはドイツを怖がる全ての国民の連合。そして、この定義はドイツ人を含む」という冗談がかつてEU本部のあるブリュッセルで流行った、とトッド氏は言います。EU内一強となったドイツを抑制する力が働かず、暴走する危険について氏は警鐘をならしています。
トッド氏は、家族形態の分類から国家や地域の文化的背景を特定し、出生率、高齢化率、識字率などの統計データの動向により国家の発展や衰退を予測する手法で、ソ連の崩壊を予測したことで知られています。
本書では、日本について言及した部分も多く興味深く読みました。日独の直系家族制度の類似性と相違点。日本の家族の重視とその功罪、など。
また日本の移民の受け入れの必要性について、同質性を重んずる日本人がパーフェクトな調和を前提とするあまり、移民による異質な文化の流入を受け入れづらいと指摘しています。逆にそうしたパーフェクトな状態がそもそも国内に無いフランスやアメリカが異質なものを内包するタフさを持っている、と氏がのたまう点に考えさせられるものが多くありました。
英国の分断性とフランスの連続性、中東イスラム宗派の家族形態の違いなど、氏の縦横無尽な分析力がそこかしこに感ぜられました。 -
直系家族の社会は、アングロサクソンの核家族の社会ほど、国家を必要としない。直系家族自体が国家の機能を内部に含むから。核家族は個人を解放するかシステムだが、そうした個人の自立は、公的な、つまり国家の福祉を前提としている。ネオリベラリズムは、それを忘れている矛盾がある。この話は、奇しくも、渡辺京二の話と同じ結論になってる。
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2017.2.21 ブックオフ富士見
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自分の見てきたヨーロッパはとても解像度が低かったんだと改めて感じた。
今のEUがドイツが牽引していて、EUの移民政策に関しても、他国ではさほど問題になっていない人口減少がドイツでは深刻で、それを移民でまかなおうとした結果だというエマニュエルさんの見方も面白かった。
もっと他の本も読んでみよう -
・2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
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ブレグジットに対して、いわゆるエリートが反対し、庶民が賛成した構図と断言されている。日本でもだいたいそういう論調だったと記憶してます。トランプ現象に対しても同様。
5年が経過した今、世界はコロナとCO2と戦っているわけですが、控えめに言って訳がわからない。虚構と戦っている。それでもグローバリズムを維持できればエリートとしては良いのでしょう。
健全な民主主義を維持できる言論空間の必要性を痛切に感じますし、トッド氏のような良質なエリートの方々の活躍を切望します。 -
トッド2冊目。ずっとカバンに入れてて細切れで読んだのと、中身も細切れなので印象は散漫。それでも面白い。こういうのは基本的にそのとき読むべきものなのだろうけど、少し遅れて読むとまた違う評価ができますよね。そろそろ主著に手を伸ばすべきだな。多作なので全部は無理だろうが。