問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610938

感想・レビュー・書評

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  • 歴史を忘れ経済に暗い政治へ口出す人口民俗学の弁

  • 「今、世界で一番危なっかしいのは、アメリカではなくヨーロッパなのです」2016年刊行時点の衝撃的な発言だが、改めて読み返してみるとなるほどと感じてしまう。EUの求心力低下が危惧される。

  • 東2法経図・6F開架:304A/To17m//K

  • イギリスがEU離脱したことを受け、現在の主にEUの情勢を分析した一冊。

    著者がフランス人ということもあり、フランスによってる部分はあるものの、ヨーロッパ人が見たEU、アメリカ、そして日本の情勢を知ることができた。

  • トッドにはかねてから興味はあったのだが、ぶあつい著作にはなかなか手が出なかった。これはインタビュー・講演や雑誌への寄稿をまとめたお手軽な新書。現時点で最新のようでもあるので気軽に手にとってみた。時事ネタを扱っているのも良いし、なるほどとうならせる箇所も多いのだが、一方で分量ゆえ仕方ないながら、踏み込み不足というか物足りない感じもある。なかなかうまい広告なのかもしれない。

    1,2はBrexitに関する論考で、やや内容はかぶる。本書の中では小手調べ的なかんじ

    3はトッド自身の仕事や方法論を振り返っており、初読の身には大変おもしろかった

    4は人口学による各国近未来予測、これも興味深い

    5は中国論、日本への言及も

    6,7はお膝元フランスでのテロ(およびその後の国民の反応)を受けて。切実な問題意識を感じる


    フランス人らしくなく観念論は嫌いで経験主義的。定量的な歴史人口学が性に合った。ただイギリス留学で、イギリス人のヒエラルキー感覚を目の当たりにし、自分の平等主義的フランス人性に気づいたと。

    「自由」をめぐるパラドクス。トッドによる家族構造が政治体制を決めるという発見は決定論的であるが、かならずしも個人の選択を決定するものではない(それでもイギリスのような絶対核家族の文化に生まれると、自由でなくなる自由にとぼしい)。ただ、それが人間の自由を否定する決定論と捉えられ批判もされている。特に自由(リベラル)な国において。自由が強迫観念になってなぜ自分が自由であるかを自覚できない。また、個人主義ほど国家を必要とする。

    歴史を動かすのは中産階級。今日の先進国では、高等教育を受けた層が中産階級と言える。
    →米大統領選挙のNate Silverによる分析(学歴が投票行動を決めるファクターだった)を思い出した

    核家族のほうが共同体家族よりも原始的な家族形態。現代での分布から伝播モデルで推測できる
    →日本での方言の分布なんかと同じ話か

    普遍性と文化相対主義、多様化と画一化のせめぎあい。トッドは家族構造が似ている文化同士に普遍性を見出す。

    場所(テリトリー)のシステム。移民なども行った先の文化に同化することが多い(例:アメリカ)。人間は可塑性を持った存在であり、文化の差はそれほど決定的でない(弱い価値)。ただし場所単位で見ると、永続的な「文化」が立ち現れる。それは家族由来の価値観が「弱い価値」であるからこそ

    ネオリベラリズムにより家族の扶助なしに個人で生きるのが難しい状況ができてきている。個人主義的なものと矛盾がある。アメリカにとって国家とは何なのかが大きな課題。国家の再評価が必要。一方、日本では家族の過剰な重視が、少子化による家族の消滅につながっているのでは

    ネオリベラリズムの次の潮流だが、世代ごとの断絶があるアングロサクソンからまた次の流れが出てくる可能性は高い。

    ロシアの復活。出生率も1.8まで回復し、女性の高等教育進学率もあがって社会が安定化に向かっている。プーチンみたいな強権的なリーダーを好むのは家族構造ゆえ。
    →認識が古かった。よいインプット

    サウジアラビアは出生率激減、中東の不安定の核。安定化しているのはイラン

    中国はいびつな人口構造、過剰投資など不安定。また中国の家族構造は平等主義的で(だから共産主義も根付いた)本来的には格差を許容できない

    ドイツにも辛い。低い出生率をむりやり移民で埋めようとしているが、トルコからの移民の社会統合ができていない。シリア人は家族構造的にもっと遠いのでさらにむずかしい

    ヒエラルキー的な家族構造を持つ日本では、国際関係もヒエラルキーで考えがちである(アングロサクソンや中露は対等な国際関係が前提としてある)。また、日本の家族構造では長男以外は家族構造の外で一人で生きようとするので、いったん強い国であることをあきらめると孤立主義への誘惑がある。それを乗り越えて米露と連携して中国問題にあたる(方向性は助け舟)べき。

    フランスでカトリシズムはすっかり衰退したが、その文化的影響は地域ごとにはっきり残っている。

    とにかく日本は少子化対策をがんばれよと

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 英国のEU離脱問題をはじめとした現代の国際的な諸問題に対し、主に文化人類学的観点からメスを入れた本。

    あらかじめ告白すると、ボクはこの本が非常に読みにくかった。というのは「全体として、ネオリベラリズムおよびグローバリズムの言説に抵抗する本」(あとがき)であり、経済学がめたくそに批判されているので、はっきり言っていい気持ちがしないです。が、視野が狭くなるのは大問題で、耳障りが悪いものほどしっかり読んだほうがいい。

    面白かったのは、家族システムから世界を捉えるという考え方。アメリカやイギリスは核家族。子供は大きくなったら親元を離れます。兄弟は平等だし、親子の関係もそこまで縦の関係ではありません。一方、日本やドイツは基本的に一家の長男が家を継ぐ直系家族制度で、長男とそれ以外の兄弟の間には差があります。親子の関係も対等ではありえません。アメリカやイギリスは個人主義で自由主義。対して日本やドイツは全体主義で権威主義。家族システムが「下意識」(無意識と意識の間。おそらくunder-consciousの訳だけど、日本語にすると変な感じだね。)となって個々人の思想が作られていく。言語や宗教もそうだけど、そのひとの思想の根幹を成している部分を無視して、経済的な利害だけで繋がれって言われてもっていうのは、確かにそうだ。いとこ婚が盛んな地域もあり、そういう地域では考え方も違ってくるでしょう。

    日本についても言及されています。「日本の唯一の問題は人口問題」とし、「移民を受け入れない日本人は排他的だと言われますが、実は異質な人間を憎むというより、仲間同士で互いに配慮しながら摩擦を起こさずに暮らすのが快適で、その状況を守ろうとしているだけなのでしょう。その意味で日本は完璧な社会です。」(p184)その完璧さを守ろうとすると、日本は存続できないかもしれない、ということです。

  • 出版のタイミングとタイトルから、ブレグジットを中心として書かれた書籍かと思いましたが、それは話のきっかけでしかなく、内容は世界動向のなかでのEUについて記載されているもので特に独仏の現状を懸念する内容でした。

    予想していた内容とは若干異なりましたが、人口学や家族構成から世界の動向を探る見方は新鮮でした。

  • 人口学者の視点から見たヨーロッパとはどう見えるのか、というよりもすでにヨーロッパというものは存在していない、とまで言い切る著者の魅力は素晴らしい。
    今回は日本についての記述が多く、フランスの人口学者から見た今の日本(というネーションに存在する自分自身)についての客観的な視点が得られるのも素晴らしい。

  • EUはドイツとその手下たち
    移民の受け入れは慎重に
    2016年の話の内容だとするとかなり予見があってると思った

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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