植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611195

作品紹介・あらすじ

ゲノム科学の進展で、今、薬用植物の世界が熱い!ポリフェノール、カテキン、フラボノイドなど、今や日常用語として使われている植物由来の成分です。モルヒネやキニーネ、ヤナギの成分から作ったアスピリン、生薬を用いる漢方薬など、人間は古代から植物の作る薬を使ってきました。しかし、つい最近まで、なぜ、どのように植物が薬を作るのかは解明されていなかったのです。その根源的なメカニズムがわかってきたのは、2000年代に入って植物のゲノム配列が決定されてからのこと。「動かない」選択をした植物が「生き残り」戦略として、動物などの捕食者から身を守るため、いかに巧妙なシステムで「毒」のある成分を作るのか。しかも、その「毒」から自らを守るためにどのような方法を採っているのか。その「毒」には抗がん薬の元となる成分も含まれます。そうした巧緻なしくみが、ゲノム科学の発展により遺伝子レベルで突き止められるようになってきました。中国からの輸入が困難になりつつあるカンゾウ(甘草)の成分も人工的に作ることが可能になるなど、最先端のバイオテクノロジーにも触れつつ、驚くべき植物の戦略を明らかにします。

感想・レビュー・書評

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  • 全く知らないことばかりで、植物って本当にすごいなというのが正直な感想。
    チンパンジーも生薬を使うというのも驚きで、世代を超えて受け継がれる知恵のようなものは人間以外にもあるのかな、と思った。

  • 「植物由来で身体に良い」その意味と、そこに潜む誤解

    こういう本を読むと植物も動物も同じ生き物なのだと痛感する

    たかだか40万年の歴史しかないホモ・サピエンスは、5億年かけて進化してきた陸上植物のことをまだごく一部しか知らないのだ!

  • またしても、良い入門本に出会えた。本草学って感じだ。
    タイトルで興味を持ったが、内容はそれに答えるものというより、バイオテクノロジーへの導入本のような感じだ。

    身近にある薬が植物由来であることから始まり、その植物の生態系、なぜそのような薬効が得られているかの説明があり、最後に植物研究の話も簡単にお披露目がある。

    学びはいくつもあったが、、これどっかで質問できるところとかないのかな。。笑

    アレロパシーの話は印象深い。大好きなコーヒー、そしてカフェイン。そんな目的があったなんて。。。

    少し調べて見たが、例えばデカフェは遺伝子組み換えの応用でできるようだ。しかし実用化されてないと書かれてるが2004年時点。今どうなったんだろう。さすがにできてそうだが。。。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7

  • <目次>
    第1章  植物から作る薬
    第2章  薬になった植物成分
    第3章  植物はなぜ薬を作るのか?
    第4章  植物はどのように薬になる物質を作るのか?
    第5章  植物の二次代謝と進化のしくみ
    第6章  バイオテクノロジーと植物成分
    第7章  人類は植物とどのように相互共存してくべきか?

    <内容>
    植物の生合成のしくみからさまざまな化学成分の抽出(これがいわゆる漢方)、さらには化学的に生成、さらに遺伝子配列の分析からいわゆるバイオテクノロジーと研究を進めてきた著者の、こうした分野での解説書。わかりやすい書き方で、高校程度の生物・化学の知識があれば読める内容である。そして、逆に薬や味、匂い(これは食べ物として)、たばこや麻薬などの嗜好品(麻薬を嗜好品というのは…)、これらの多くは植物由来であり、さらに言えば彼ら植物が光合成をしてくれているからこそ、我々がこの地球上に生かされていられる訳だし、太古の植物の死骸などが石炭、石油となっていることを考えると、もっと植物のことを考えねばならない。
    また、バイオテクノロジーに関しても、「怖い」イメージがあったが、こうした啓蒙を受けると今やなくてはならない技術であり、もう身近に恩恵を受けている。こうした研究者の方の働きかけも弱いと感じたが、反対派のヒステリックな反応もどうかと感じた。

  • 文教堂書店2017.5.26

  • とても良かった。
    植物といかにして相互共存して生きていくかという言説そのものがおこがましい。人間は植物に生かされている。それは薬だけでなく食物として、建築の素材として、我々人類の同類というよりも、地球の先輩として敬意を払う。

  •  薬と植物について、これらの薬としての関係性について述べた本。よく耳にする言葉として、抗がん剤やアヘン、ポリフェノールだろう。これらの成分は、植物から作られており、植物の二次代謝によるものがほとんどである。

     植物は薬として古来から利用されており、チンパンジーですら薬として用いる。その歴史は生薬から始まっている。それが近年、薬学として確立され、東洋医学や西洋医学として発展していった。本書では、薬の起源、薬となったもの、生成経路などがまとめられている。自然環境の機能は、興味深いことが多く、それらを体系化して薬としてデータを集めるのは、よほどたくさんのデータが必要な道筋であったことが容易に想像できる。

  • タイトル通りの内容で新書らしい一冊でした。
    植物から得る薬にも毒にもなる効用。その成分。ではなぜ薬を作るのか。どのようにその物質を作るのか。薬にも毒にもなるその成分に植物自身は耐えれるのか。
    細かい話は流し読みしてしまいましたが、知識として面白く、十分楽しめました。
    ただ分かりやすくを意識して、書いて頂いているのは感じましたが、カタカナも多くなり後半は眠くなってしまった…。

  • 結構レベルが高い。

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著者プロフィール

千葉大学大学院教授、理化学研究所環境資源科学研究センター副センター長、薬学博士。1977年 東京大学薬学部卒業。東京大学大学院薬学系研究科に進学。慶應義塾大学助手、千葉大学助手・講師・助教授などを経て現職。2018年 紫綬褒章受章。主な著書に『植物はなぜ薬を作るのか』(文春新書)、『天然医薬資源学[第6版]』(共編、廣川書店)、『植物の代謝コミュニケーション』(共編、共立出版)などがある。

「2019年 『植物メタボロミクス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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