ジェノサイド国家中国の真実 (文春新書 1333)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613335

作品紹介・あらすじ

ウイグル語の使用禁止、不妊措置による出生数の半減、スマホ・GPS・カメラによる徹底監視、「政治的信頼度」の点数化、100万人以上の収容所への強制収容……習近平政権が推し進める「ウイグル人根絶」の恐るべき実態を告発する!

■強制収容所で「漢人化」を強要
少なくとも1000カ所を超える「強制収容所」が設置され、少なくとも100万人以上(アメリカ国防総省高官によれば、約300万人)のウイグル人が収容され、「漢人化」と「中国共産党への忠誠」が強要されている。

■不妊措置で新生児が半減
中国当局によるウイグル人に対する不妊措置(子宮内避妊器具装着や不妊手術)の結果、新疆ウイグル自治区の出生率(人口1000人あたりの出生数)は、2017年に約16人だったのが、2019年には約8人と半減した。

■「政治的信頼度」の点数化
ウイグル人の「政治的信頼度」が点数化されている。ウイグル人ならマイナス10点、パスポート保持者ならマイナス10点、礼拝していればマイナス10点、問題とされる26カ国への訪問歴があればマイナス10点とされ、マイナスの合計が70点に達すると、要注意人物として強制収容所に送られる。

■スマホ・GPS・カメラで徹底監視
ウイグル人は「テロや違法な宗教に関するファイルの所持を確認するため」として、当局指定のスマホアプリのインストールを強要されている。スマホを持たない子供や高齢者は首にQRコード付きのカードをぶら下げている。

●于田ケリム(うだ・けりむ)
1979年、東トルキスタン・ウルムチ生まれ。日本ウイグル協会会長。機械工学専攻で、中国石油大学で学士課程を、次いで新疆大学大学院で修士課程を修める。2008年に来日。東京工業大学大学院で博士課程を修めた後、日本で就職。

●楊海英(よう・かいえい)
1964年、南モンゴル・オルドス高原生まれ。静岡大学人文社会科学部教授。北京第二外国語学院日本語学部卒業。文化人類学専攻。著書に『独裁の中国現代史』『「中国」という神話』『逆転の大中国史』『チベットに舞う日本刀』『墓標なき草原』など多数。

感想・レビュー・書評

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  • 中国への遠慮なのか、過去の自国の過ちからなのか、あまり日本のニュースでは取り上げられない中国による周辺民族弾圧を伝える内容である。ネット動画や信頼性の解らないようなニュースサイトから流れてくる程度の情報では、特に新疆ウイグル自治区に対する弾圧が世界中から避難を浴びていると言うのはよく知られている。記憶に新しいところでは、平和の祭典オリンピック前後では民族弾圧に対する世界各国からの避難が、開会式参加辞退などに繋がるため国内ニュースでも取り上げられていた。
    中国の周辺民族問題としては、1944年にイリ、タルバガタイ、アルタイていう北部新疆の三地区で独立運動(三区革命)で、ウイグル人、カザフ人、モンゴル人が独立運動を起こしている。1949年に東トルキスタン共和国として一旦は建国されたものの、地理的にソ連・中国の二大国に挟まれその思惑に翻弄される。現在の形はソ連(スターリン)に見放されて、中国編入された新疆ウイグル自治区となっているが、東トルキスタン人は自分たちの国を取り戻そうとしてる。それに対して中国は漢民族への服従や漢民族以外の人権侵害的な行為を継続している。
    具体的には、よく知られているのは、中国が設置している収容所への強制収監である。そこではイスラムの名前を子供につけるのも禁止であるが、漢字名を名乗らなければならない。またチベット語やウイグル文字などの使用も禁止し、自分たちの言葉を喋る事が許されない。優秀な学生は海外留学など努力に応じて教育を受ける機会はあるものの、中国の政治や体制に少しでも批判的な発言、立場を取れば、あっという間に政治犯扱いされて勾留されてしまう。そうなるとその後の出入国もままならなくなる。要するに黙っておけよ、といったところなのだろう。中国はこうした漢民族ではない人々を減点方式で管理しており、パスポート作るとマイナス10点といった「目立つ」要素は全て減点されてデータ化されている。中国は何かにつけて、この人民を点数化する事、監視による完全な追跡を行う事が得意であるから、大きな驚きは感じないが、非常に息苦しい社会の中でも更に息苦しさを強要している。当然移動の制限 も厳しく(監禁してるくらいだから)、車はGPSをつけないとガソリンを入れることもできず、宿泊するにも、その事実を報告する必要があるため、小さいホテルなどは宿泊拒否する様な状況だそうだ。チベットやモンゴル人は当局通報義務があり、大手ホテルでないと対応が難しいようである。驚いたことに病院を自由に使えないため、たらい回しにされた挙句に死亡してしまうなど、生死も中国に握られているようだ。これらは見た目だけでなく、名前などからも判断される様なので、迂闊にそれっぽい名前をつけてしまうと、中国では生活に支障をきたしてしまう。
    こうした事は長い人類史の中では繰り返されてきた事ではあるが、21世紀になっても「民族浄化」を進めているのは驚きだ。歴史を消し去ったり、無かったことにする歴史修正主義も徹底しており、正に地球上から消し去る事を目的に進められている。過去を消し、未来に向かっては女性に対する強制的な避妊措置などは、国連が定義するジェノサイドの要件そのものだ。
    確かにナチスドイツやかつて侵略を行った日本でもそうした行為は行われてきたが、それら過ちを繰り返さぬ様に国連があるのでは無かっただろうか。過去を反省し繰り返さぬ様に各国が連携して防ぐ、これができないなら確かに国連の存在意義は影を潜める。そう考えると、中国の経済に依存し、同国をここまで発言力の強い国にしてきたのは世界各国であるから、ある意味自業自得だ。
    だがもし今新疆ウイグル自治区で起こっているこれらが真実なのであれば、やはり世界は結束してアクションを起こすべきだ。人は誰しも安全に平和に暮らす権利を持っている。見過ごしてはいけない。

  • AIで判断して点数化して多い時には1週間に1万人逮捕している。
    ウイグルの家に中国人がホームステイといって入り込んで豚肉食べさせたり、酒を飲ませている。アラビア語もウイグル語も禁止。とにかく恐ろしいことがたくさん書かれています。
    ウイグル人が最も恐れているのは中国への同化。
    ここに書かれていることが事実ならば、本当にジェノサイド国家であり、国際社会から追及されるべきであり、ウイグル人は守られるべき。

  • ● 2017年以降、ウイグルでは、1000カ所を超える「強制収容所」が設置され、1,000,000人以上(3,000,000と言う説もある)をウイグル人が収容されています。
    ●家庭に残された女性に対しては「不妊処置」がなされています。2018年に中国で実施された不妊処置の8割はウイグルで行われている
    ●現在在日中国大使館は、在日ウィグル人に対して、パスポート更新手続きを受け付けていません。なので帰国したとしても収容所行きの運命が待っています。筆者は日本で活動するために、日本に帰化することを決断しました。
    ●ウイグル(東トルキスタン)は「現在は中国共産党に支配されているけれども、もともとは独立国だった」と言う点を強くアピールしたい。
    ●ある民族を抹消するには、先に歴史を消せ。

  • <目次>
    はじめに
    第1章ウイグル民族ジェノサイドの惨状
    第2章ウイグル強制収容所の実態と日本への期待
    第3章古い中国の新しい疆域政策

    ウイグルへの圧力が強くなったのは2016-2017からだと
    いう。2914-2018まで上海に住んでいたが、そのころは
    まったくその気配はなかった。新疆人には、泥棒が多い
    という噂はあったものの、新疆料理のレストランは
    満員で、ステージで歌ったり踊ったりのイベントも
    行っていた。
    これまで、中国の王朝の辺境の統治は、民族はそのまま
    で、ゆるやかに統制をしていたものと理解している。
    なぜ、急にここまでに事を進めなければならないのか。
    共産党は何を恐れているのか。
    ウイグル、モンゴル、朝鮮、チベットと中中原の周りは
    ぐるっと他民族にかこまれて、そので守ってもらって
    いるはずなのに。その辺境をも漢民族に変えて
    しまいたいのか?

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