終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来 (文春新書 1419)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166614196

作品紹介・あらすじ

ウクライナ戦争から500日が過ぎ、いよいよウクライナの反転攻勢が始まった。しかしロシア、ウクライナ双方が苦戦を強いられ、膠着する戦線。戦争の終わりは見えず、2024年のロシア大統領選を見据えると、もはや4年目への突入が現実となりつつあるという。この「終わらない戦争」、そして世界秩序の行方は――。『ウクライナ戦争の200日』(文春新書)、『ウクライナ戦争』(ちくま新書)に続くロシア・ウクライナ戦争の著者最新分析。『ウクライナ戦争の200日』でも一つの核をなした高橋杉雄さんとの戦況分析を中心に、本戦争がもたらした日本人の戦争観や安全保障観の変化、終わらない戦争の終わらせ方などを語る。

感想・レビュー・書評

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  • ロシア・ウクライナ戦争がはじまった年に行われた対談も含まれているので、今更読む必要があるかなと思いつつ読みはじめたけれど、普通に参考になる本だった。

    日本の安全保障と朝鮮半島、台湾の安全保障の間には密接な関係がある。

    あっさり読み終えることができる割には読みごたえもあって良い。
    ロシア・ウクライナ戦争がはじまる前までは、もうこんな戦争は起きっこないと根拠もなく信じ込んでいたタイプなので、戦場のニュースを見ても、戦争をしていることしかわからない。
    こういう軍事的知見に立った読みやすい本が出てくれるのは助かる。こういう本が必要な世界であることは悲しいけど…。

  • 対談本なのでさっと読めました。
    前半は今回の戦争をやや俯瞰的に、後半は時系列で追っていくような構成です。
    おわりにで書かれているように様々な見地から戦争を考えないといけないと改めて思いましたし、終わらせるのは本当に難しいと再認識しました。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569208

  • 「ウクライナ戦争の200日」に続く対談集。

    6本掲載されるが後半4本は高橋杉雄氏とのもので、対談者は3人。

    米国の武器支援出し渋りもあり戦局は膠着、両国国内の事情から早期停戦は困難との見立て。

    本書は何よりマスコミ露出停止前の高橋氏と著者との対談が目玉であろう。

  • 2022年9月から2023年7月まで6回にわたり3人の識者と語ったものを加筆修正。

    ある時点における限られた(そして多くの場合は信憑性の不確かな)情報を専門家たちはどのように捌いているのか、という思考プロセスを記録しておくことにこの対談本の意義があると考えた。

    自身は軍服の色褪せ具合に目が行ってしまう所もありもっぱらロシアの軍事研究を生業にしているかなり珍しい立場にあるが、自身としてはなにかできることをするほかない。それは多分、社会に欠けがちな軍事的知見をフル回転させてこの戦争について語り合うことであろう。

    1.ウクライナ戦争を終わらせることはできるのか。
     千々和泰明氏と「文藝春秋ウェビナー」2022.9.9月号
     ~千々和氏は「戦争はいかに終結したか」の著書がある。この戦争の終わらせ方としては、ロシアがゼレンスキーを打倒してしまう、又はロシアの”妥協的平和”としてウクライナから撤退する、の二つがあるがどちらも現実的に考えにくいので、その中間のどこかになる。交渉では答えが出ず、やはりウクライナが力でロシアを押し返すしかないのではないか。

    2.プーチンと習近平の急所はどこにあるのか?
     熊倉潤氏と「中央公論」2023.3月号
     熊倉:プーチンはロシア社会の中から出て来た存在だから、プーチンがいなくなっても今のロシアは変わらないと思う。中国では賢人統治を望む意識が強い。まだ二十世紀の延長戦を戦っている人たちがいる。十代の時に文化大革命の洗礼を受けて人格形成がなされた習近平のような人たちがフィジカル面で限界を迎えるころに、驚くほど時代の動きか加速するのかもしれない。

    以下高橋杉雄氏と
    3.ウクライナ戦争「超精密解説」
     「文藝春秋」2023.5月号
    4.逆襲のウクライナ
     「文藝春秋」2023.7月号
    5.戦線は動くのか 反転攻勢のウクライナ、バイタリティ低下のプーチン
     「文藝春秋」2023.8月号
    6.戦争の四年目が見えてきた
     「文藝春秋ウェビナー」2023.7.25
     高橋:停戦は、ロシアがウクライナの占領を諦めて引き上げるか、ウクライナが占領されている土地を諦めてロシアに引き渡す、この2パターンしかない。・・現実的な停戦シナリオが描けない。
     小泉:どんな戦争も絶対に、地域的な知識がないと分からないこと、軍事的な知識がないと分からないことがあるので、様々な分野の研究者が皆で話し合いながら、全体像を描いていくべきだと思っている。


    2023.9.20第1刷 図書館

  • ロシアのウクライナ侵攻の経過を著者と軍事専門家の対談という形でまとめられている。終わりの見えぶ、全然も膠着している現状にどう落とし所をつけるのかというのは難問であり、長期化の様相を表している。

  •  小泉と研究者との対談集。この戦争が簡単には終わらないとの点では全員一致。
     千々石と小泉は、力で露軍を押し返すことが前提であり、戦場の状況を合意内容に反映、停戦協議も戦争の一部等と述べ、戦争と停戦協議・合意を一体とした考え方を示す。熊倉と小泉の対談では、指導者像や統治機構の流動性における中露の違いの指摘が面白い。高橋と小泉の対談ではその時々の戦況が主だが、その上で高橋は、現実的な停戦シナリオも戦争後のシナリオも描けないと述べている。

  • ウクライナ戦争の終わらせ方、習近平とプーチンとの比較、戦況解説。

  • こういった進行中の戦争についての本、防衛論などを研究している方の著作を読むのは初めてでした。
    題材が題材なので、感想の言葉の選び方を慎重にしなくてはならないかもですが、読み物として、興味深く自分にとっては気付けなかった視点がもたらされる有意義な読書となり、端的に言って面白かったです。

    この面白かった、という視点、言葉が。
    この本の中で淡々と戦争について語られる論の展開、考え方が。
    読む前にこう言った書物になかなか手が伸びなかった理由、懸念のひとつでした。
    今現在、生身の人間が苦しみ、悲しみ生活を奪われ、時には命まで落とす。酷く惨たらしい状況に対して、対岸の火事とまで無関心にいかずとも、火の粉がこちらに振りかからない他人事の様に、感情のスイッチや揺れ動きが現地の人や関係者と異なって、淡々としているのは何かの欠落ではないのか、良いのか?と引っかかっていました。

    戦争はいけない。
    ロシアによるウクライナ侵攻はとても衝撃でした。ここまで長く続くと思わず、どうしたら終わるかも全く皆目見当つかず。ただ無力に願うだけしかできませんでした。

    それが、考えも視野も狭く、きちんと世界の状況や戦争について考えられていなかったのではないかとこの本を読んで思いました。
    戦争反対も、ロシアのウクライナ侵攻に対する反対声明も、声を上げることは簡単です。人々にそれが広がり、ウクライナの国旗のカラーを身につけ、SNSで表明し、著名人が多くの人に影響を与え、知る機会にはなったとは思いますが、それ以降果たしてどれ程の人が真剣に、戦争を止めるために何ができるか考えたのか。
    戦争を止めるために武器の供与についてより戦略的に考え、効果的に使用するべきではと語るその意見は戦争推進派ではなく、攻撃的でなく、武力的でなく、現代において真摯に戦争に向き合っての意見のひとつなのかもしれない。
    戦いについて、武器について淡々と語るのは、冷酷ではと思っていたけれど、何もできず願うだけで自分たちはぬるま湯で贅沢してただ暮らしている人々よりかは、現地の状況に寄り添っているのかもしれないと思った。

    これはあくまで私の感想なだけで、この本の著者も、おそらく対談相手も、そういったお気持ち表明的な感情論ではなく、淡々と防衛論について考えているだけだと思うのですが、それが逆に、そういった人や考え、意見に今まで触れたことがなかったため、こういった人も意見も考え方も存在としてあるべき、異なる専門家や意見を持つ人が意見を交わして、最適解に辿り着ければ良いのではと思えるきっかけとなり、こういった本をさらに読んでみたい、日常的にも情報を追いたいと思ました。

    プーチンが退任すれば、ウクライナ侵攻も、他の問題も片付くと思ってプーチン憎しでいました。
    確かに「始めた」点では憎む感情は間違いはないかもしれないけれど、問題を矮小化というのか、複雑に絡み合った国内や、国家間の関係や問題を無視して簡単なところに問題を見出してそこだけで騒ぐのは愚かなことなのだなと気付かされた。

    ウクライナとロシアの、不思議な、タイミングの合わなさやお互いを騙せているのか読めていないのか、ズレていることが功を奏したのか、悪かったのか。
    こんなに長く戦争が続いていることについて、何故なのか、の一説として納得できる話であった。

    中国の官僚の不文律の定年制度がしっかりしていて、新陳代謝が進むのが羨ましいなと思いました。

    千々和さんとの対談は、ロシアのウクライナ侵攻だけでなく今までの戦争からの流れを汲んだ意見という感じ。
    熊倉さんとの対談は各国の政治、価値観を引き合いに出し、それが判断にどう影響するかという感じ。
    高杉さんとの対談は最新情報を元につぶさに観察された戦略、地政学的な感じがしました。
    千々和さんの本が読みたくなりました。

  • 小泉悠氏と三氏の対談。
    (ただし、戦況分析についてはどうしても書籍故のタイムラグが大きい)
    そして、改めて思うのは、この戦争、出口がない。両国とも二千層を水耕し続ける以外に出口が無い。詰んでる。と言う絶望である。
    そして、翻って日本を見たとき、我が国はここまで中国相手に抗戦できるのだろうか?と言う懸念である。経戦能力の劇的な充実こそが、抑止力になるのだろう。
    抑止力仕事しろ。

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著者プロフィール

小泉 悠(こいずみ・ゆう):1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP研究所、2022年)、『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022年)等。

「2022年 『ウクライナ戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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