新装版 翔ぶが如く (2) (文春文庫) (文春文庫 し 1-95)
- 文藝春秋 (2002年2月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167105952
感想・レビュー・書評
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読了。レビューは最終巻で。
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大久保利通、伊藤博文、山県有朋、岩倉具視…。
そしてもちろん西郷隆盛。
役者は揃いつつある。
明治元年から明治10年にかけての日本に何が起きたのか?
ほとんど注目されることない地味な時代たが滅茶苦茶に面白い。
この小説が書けるのは司馬遼太郎だけだな。 -
主に征韓論が中心に話は進む。この時日本は生まれたばかりで確かな形を取っておらず、今事を起こす場合ではないのだが、西郷どんの言うことを誰も覆せない。登場人物はそれぞれの立場から動こうとしないのだが、なんとしてでも征韓論をつぶそうとする。ホントに登場人物が濃いですねぇ。
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征韓論とそれに関わる人達の背景や思いが事細かに描かれていた。征韓論を主張している政治家は西郷隆盛、板垣退助、江藤新平。対して、大久保利通、木戸孝允、岩倉具視、伊藤博文、山県有朋などが迎え撃つという図式。そして、間に挟まれて思い悩む気の弱い公家である三条実美は太政大臣であり現在の首相と言える立場であるから、今後の展開のキーパーソンとなることは間違いない。反征韓論も一枚岩ではなく、西郷とともに維新三傑と言われる大久保利通は孤高、木戸孝允は陰鬱な感じで距離を置いているし、岩倉具視は陰でコソコソ動いているよう。伊藤博文は長州藩時代の先輩:木戸よりも大久保に接近しているし、山県は汚職を西郷に揉み消して貰ったという恩義かあり、その山県の下にいる西郷従道は西郷隆盛の実弟と、それぞれスッキリとはいかない。また、旧薩摩藩国主の島津久光も反政府という立場から独自の動きを見せている。
このような入り乱れた抗争や人物関係が更なるドラマを呼ぶ。
主要人物ではないが、評論新聞を創刊した海老原穆も何かやってくれそうだし、謎の元武家屋敷の娘:千絵もどう絡んで来るかが楽しみである。
征韓論に決着がつく次巻も楽しみだ。 -
昨年、司馬遼太郎の「坂の上の雲 全8巻」を読みました。
坂の上の雲の中ですごく気になったのは、司馬遼太郎が描く薩摩藩型のリーダーシップ。
ネット上での解説を少し転載します。
明治時代も終わりに近づいた頃、ある座談会で、明治の人物論が出た。
ある人が「人間が大きいという点では大山巌が最大だろう」と言ったところ
「いや、同じ薩摩人だが西郷従道の方が5倍は大きかった」と反論する人があり
誰もその意見には反対しなかったという。
ところが、その座で、西郷隆盛を実際に知っている人がいて
「その従道も、兄の隆盛に較べると月の前の星だった」と言ったので、
その場の人々は西郷隆盛という人物の巨大さを想像するのに、気が遠くなる思いがしたという。
西郷従道(つぐみち)は「ウドサァ」である。薩摩藩(鹿児島)の典型的なリーダーの呼ばれ方である。
本来の語意は「大きい人」とでもいうようなものだ。
従って、西郷隆盛などは、肉体的にも雄大で、精神的にも巨人であるという点で、
まさに「ウドサァ」を体現した男であると言えよう。
薩摩藩型リーダー「ウドサァ」の手法は二つある。まずは最も有能な部下を見つけ
その者に一切の業務を任せてしまう。
次に、自分自身が賢者であろうと、それを隠して愚者のおおらかさを演出する。阿呆になりきるのだ。
そして、業務を任せた有能な部下を信頼し、自分は部下が仕事をしやすいように場を平らげるだけで、後は黙っている。
万が一部下が失敗するときはさっさと腹を切る覚悟を決める。これがウドサァである。
日本人はこのリーダーシップのスタイルに対してあまり違和感を持っていないと思う。
日本の組織のトップはリーダーというよりは殿様なのだ。殿様は知識やスキルではなく人徳で勝負。
細かいところまで口を出す殿様は
家老に 「殿!ご乱心を!」とたしなめられてしまう。
でも、このリーダーシップのスタイルは世界のスタンダードではないと思う。
世界の卓越したリーダー達で「ウドサァ」みたいなスタイルだった人を私は知らない。
スキピオ、ジュリアスシーザー、アレキサンダー大王
ナポレオン、リンカーン ・・・ ビルゲイツもジョブズも孫正義も
部下に仕事を任せはするが、後は黙っているなんて事は絶対にない。
古代中国の劉邦と劉備は「ウドサァ」かもしれない。(だから日本で人気がある?)
私も大きな組織で働いているが
トップに非常に細かいことまで指示される事を想像すると辟易してしまう。
そのくせ、「トップの方針が明確でない」みたいなことを言ってみたりもする。 どないやねん!
1年以上かけて、ようやく全10巻を読破しました。
いや〜〜長かった。
面白かったけど、やっぱり長いよ司馬さん。
「翔ぶが如く」本線のストーリーは、征韓論から西南戦争に至るまでの話なんですが、水滸伝のように、周辺の人物の描写や逸話に入りこんでしまって、本線のストーリーが遅々として進まない。。
新聞小説の連載だからなのかもしれないが、ふだんノンフィクションの実用書ばかり読んでる身としては、かなりじれったかった。
本線のストーリーだけ書けば、半分ぐらいの頁数で済むのでは?
と思ってしまいました。
[読んで思ったこと1]
本書を読み「薩摩藩型のリーダーシップ」について理解するという当初の目的は果たせませんでした。
著者にとっても、西郷隆盛という人物は、スケールが大き過ぎて掴みどころのない存在のようでした。特に征韓論以降の西郷隆盛は、現在の我々からは訳がなかなか理解し辛い事が多いです。
しかし、リーダーシップとは何かという事について、いろいろと考える事ができました。昨年一年間かけて考えた、私なりのリーダーシップ論は、後日別のエントリで纏めようと思います。
[読んで思ったこと2]
西南戦争は、西郷隆盛を担いだ薩摩藩の壮士と、山縣有朋が徴兵して編制した政府軍との戦いでした。
当時の薩摩藩は古代のスパルタのような軍事教育国家であったため、壮士達は世界最強の兵士とも言える存在でした。
しかし兵站という考え方がほぼ皆無に近かった。
一方で政府軍の鎮台兵は百姓出身者が大半であり、本当に弱く、戦闘となるとすぐに壊乱してしまう有様でした。
しかし、山縣有朋の綿密な軍政準備により、予備兵・食糧・弾薬などの後方支援が途切れる事は無かった。
両者が激突するとどうなるのか。
短期的には薩摩藩が圧倒的に有利なのですが、戦いが長期的になつてくるとジワリジワリと政府軍が有利になってくる・・・
古代ローマ帝国とカルタゴのハンニバルの戦いを見るようでした。
いや、普段の仕事についても同じ事かなと思いまして。
仕事でも、短期的に物事をガーと進められる人に注目が集まりますけど、さまざまな兵站をキッチリ意識して、長期的に組織的に物事を動かせる人の方が最終的な結果に結びつくのかなと。
この間、絶好調のアップルの決算発表がありましたが、今のアップルの収益性を支えるサプライチェーンとロジスティクスの仕組みを確立したのは、現アップルCEOのティム・クック氏だとの事。 -
明治維新直後の不安定な時代を描いている。
征韓論から西南戦争にいたる5年間が舞台。
西郷隆盛を始め多数の人物のエピソードと緻密な時代考証にその時代を知る思い。 -
司馬作品ははずれがないけど、山県のクソ野郎ぶりと木戸の評価の低さには・・・(笑)
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征韓論に端を発した明治政府政策闘争録。
著名人が多く出てくるが掴み所のない西郷という巨人を抜きにすると話がスカスカになる。 -
内諾を取り付けた征韓論への巻き返しに動く伊藤博文らの動き
三条ら公家の節操のなさ
死地を求める覚悟の西郷
27 三条、側室はねつける
32 西郷、算盤できた
39 山県の収賄事件
44 山県、天皇の権威的装飾に熱中
49 96人の将官・佐官の首を切り日本海軍近代化、山本権兵衛
150 伊藤の四賢堂、木戸、大久保、岩倉、三条
162 三条=長州系、岩倉=薩摩系
169 忌服
188 ポルトガル人に化ける、伊藤・井上
207 税金増えるか同じ+徴兵制
211 新政府出仕は1000分の1くらい、旧幕臣
223 十津川村と宮廷、壬申の乱から幕末まで
236 心が鬱すれば桐野に会いに行け
251 大久保、北海の氷山、取り付くしまなし
252 大久保、知事(藩主)の世襲を説く
254 薩摩辞書、個人で作った日本初、印刷英和辞典
264 木戸、難しい性格
276 伊藤と井上、仲良かった
291 従道、兄は人形。実計は僕と大山
294 死ぬべきときに死ぬ、敵にいたわり、やさしさ、でも倒す
304 久光、上京させるのに苦心惨憺。第三次勅旨、勝が成功
318 治外法権、外国人の政府批判新聞がうける。政府役人にして人気衰え。日新真事誌、ジョンRブラック
331 手紙で意見、相手が隣家にいても。
340 公家は節操なし
358 山県の汚職、西郷が救う
368 勝への信頼・尊敬あつい、除く長州系