駆ける少年 (文春文庫 さ 21-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167266035

感想・レビュー・書評

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  • 「痩せた背中」でかなり大泣きしてしまった!ほとんど言葉にしているがそれでも感覚として受け取る別のもの、ここでは過去の取り戻せないものが父として表れているように思える。

  • 鷺沢萌文学忌、葉桜忌。
    「葉桜の日」からか、季節からか?
    2004年35歳自死。

    1992年泉鏡花賞受賞作。
    上智大学在学中に文學界新人賞を最年少受賞。そして美人さんだったのだ。才能と美貌に羨望していた。

    銀河の町・駆ける少年・痩せた背中 の短編3編

    「駆ける少年」は、彼女の父親の物語に近いのだと思う。鷺沢さんは、父親の事業失敗により、高校時代からは、経済的に厳しい生活を送っていたようだ。そして、大人になってから、隠されていた家族の出自を知る。そこにかなりこだわりを持って調べている。その家族を父親の視線で書かれている。
    みずみずしいという表現で紹介されているけれど、行間を読ませる巧みさがあり、若さより苦しさを感じる。

  • 彼女の作品は力を感じる。
    彼女の作品に出会ってから本屋で見かければ、買うという行為を繰り返している。

    もしはないが、まだ生きていてくれたら、と感じることがある作者の一人です・・・

    作品は短編からなります。

    表題作は、

    父の過去の手帳に記されている内容で、父の生きざまを初めて知る龍之
    一人一人にある人生、他人から見れば、なんでもないことかもしれない
    でもそこに1人に人間が生き、軌跡を残してきたことは、確実であり、確かな生きたあかしであり・・

    自分の父親が何を考え何を求めようとしていたのか・・・
    父の生きざまをたどる旅が始まる・・・



  • 短編三作を読み終えた後、あとがきを読んで、妙に納得した。
    なるほど、これは父親の話だったんだ、と。
    一作目の『銀河の町』は大人というものの哀しみみたいなものを感じ取ったけど、残り二作は、形の違う父親の物語だった。
    エッセイも多少読んだ今だから言えるけれど、実際、二、三作目に登場する父親は、鷺沢先生のお父さんが投影されている部分があるらしい。
    でも、これは同時にいつかの子ども自身の話でもあるのかもしれない。
    昔ながらの「背中で語る」というのではないけれど、子どもって、どこか父親の背中を見て育つところがある。
    父親が駆けていたなら、その子どもも、いつか駆けずにはいられなくなる。
    そういうものなのかもしれない。

  • 「生」を静かに書き上げたはなしに、すごく胸がいっぱいになった

  • 怖くなかったのでは決してない。
    ただ、その怖さを抑圧してでもどこかへ行かなければ、自分自身を救えなかったというだけだ。

    (銀河の町/駆ける少年/痩せた背中)

  • 表紙裏
    なぜ少年は走り続けるのか?ある夜見た夢がきっかけとなって、龍之は死んだ父のことを調べ始める。過去帳の中に記された見知らぬ名前から明らかになってゆく父の複雑な人生。父とは誰だったのか?私とは何なのか?青年の感性をみずみずしくとらえた表題作を始めとする三篇を収録。第二十回泉鏡花文学賞受賞。

    目次
    銀河の町
    駆ける少年
    痩せた背中

  •  文章の流れるかんじが好き! お話の内容は、多少「どこかで見たような…」という気がしてけれど、この文章の世界にもっとつかっていたいと感じました。

  • 公木龍之が主人公で、父親が龍之介と呼ぶ。これだけで父の後ろ姿を息子がたどり解かろうとしていくのが切々と伝わってきます。切
     亡くなった父親の過去帳から生い立ち、自分の記憶の中にある父親に事業の失敗までをたどる。
     冒頭の夢の少年は父で今の自分の不安定さでもある。その姿が。文末まで引きづられていく。
     あとがきに公木は父のペンネームでもあり、亡くなった父のことが解らないとも著者は書いている。
     家族から見えていない父親の姿。見えていなかったからこそ、滋味深く思う。愛しく思う。

  • 「銀河の町」「駆ける少年」「痩せたせなか」を収録。鷺沢萠は早熟だったなあ。どれも二十歳そこそこの小娘とは思えない題材だよ。時代が今よりもっと軽佻浮薄な感じだったと思うんだけど、そのなかにあってどうして作品を書こうと思ったんだろう。こういう世界に関心をもったんだろう。
    3つとも底に流れているのは、「あきらめる」「あきらめられる」「あきらめられない」ってことかなと思った。もちろん、「あきらめずに頑張らないとダメ」みたいな軽いメッセージじゃないよ。人はちょっとしたはずみで、自分でも知らないうちにあきらめてしまうことがある。あきらめようと思っても、あきらめきれないことがある。あきらめたかのように見えて、あきらめていないことがある。荒んだ情景のなかで、心の中にポッと光を灯すような佳作たち。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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