新装版 青が散る (下) (文春文庫) (文春文庫 み 3-23)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167348236

作品紹介・あらすじ

退部を賭けたポンクと燎平の試合は、三時間四十分の死闘となった。勝ち進む者の誇りと孤独、コートから去って行く者の悲しみ。若さゆえのひたむきで無謀な賭けに運命を翻弄されながらも、自らの道を懸命に切り開いていこうとする男女たち。「青春」という一度だけの時間の崇高さと残酷さを描き切った永遠の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって、もうこの登場人物たちとは会えないのかと思うと寂しくなる、そう思わせる読後感を与える物語こそ、最高の作品だと思う。
    大学4年間はあっという間だと感じさせる。疾走感がそこら中に散らばっている。大きな出来事は起こらないが、多くの出来事を通して絆を深めるテニス部の部員たち。恋に部活に全力な主人公たちに嫉妬してしまった。
    そして、新装版に追加された、森絵都さんの解説もよかった。

  • 部活や恋愛、友情、モラトリアム。
    眩しくて、時にダークで、でも全て青い。
    最後は切なく青が散った。その青の余韻がしばらく漂っている。

  • 結構古い作品ながら、それを感じさせない瑞々しさが漂っている。若い時ならではの澱みが魅力的。
    中でも、ラストが切なくてとても良かった。

  • 一人一人の「若者」をここまで緻密に美しく表現できる宮本輝は凄いとしか言いようがない。

    大人になって大学生活を懐かしむ時期にもう一度読んだら、その時は違った感じ方をすると思う。将来再読したい。

  • これは青いです。
    こんな多感な大学時代をすごせただろうか?
    大学ってとても特殊な環境であるし、体力と時間と好奇心の総量がMAXの時期だろう。
    ここで何を体験するかで人生かわるんだろうなぁ。

    このモヤモヤした感覚、何者にかになれるのかの期待と不安と現実、そして行動。
    ホント行動できなかった自分。失ったものは大きいんだろうな。
    もう、ボクには訪れることのない青春です。
    そんなムードが溢れていてとても青いのです。

  • 主人公は大学でスポーツに打ち込み友人たちに囲まれ、一見リア充のようにも見えるが、本気で惚れた女には言いたいことの半分も言えない、今の何者でもない自分に対する不安にただ今はテニスに直向きに打ち込むしかないという部分にはいじらしさや青春の影を感じた。
    主人公はその潔癖さ故に結局は夏子を受け入れず、主人公だけが最後まで若者だった。しかしそれも直ぐに喪われてしまうのだと思うとなんだか切なくなった。

  •  下巻。
     仲間たちがそれぞれ思う道をもがきながらも進む中、あてどがなく焦る燎平はひたすらテニスに打ち込むが、恋い焦がれていた夏子が別の男性と駆け落ちをしてしまう。歌手を目指していたガリバーや、不動産ビジネスを手伝い始めた端山たちもそれぞれつまずき、仲間の一人は悲しい決断をしてしまう。
     完璧に進んでいると見えた仲間たちの挫折を見て、燎平はかえって自身の喪失感を実感し、あらためて自分自身と向き合うことを決心する。

    ”そして燎平は、自分は、あるいは何も喪わなかったのではないかと考えた。何も喪わなかったということが、そのとき燎平を哀しくさせていた。何も喪わなかったということは、じつは数多くのかけがえのないものを喪ったのと同じではないだろうか。”(P.310)

     それは燎平の青春時代が終わった印なのかもしれないし、新しい何かが始まった区切りなのかもしれない。

     読み終わってみると、見事なくらいに登場人物たちがきれいに書き分けられていた。読んでいる途中、もがいている若者たちの姿がテレビドラマの『ふぞろいの林檎たち』と重なり、本作のオマージュだったのかと思うほど近いものを感じたが、調べてみると『ふぞろいの林檎たち』は1983年放送開始で、1982年に単行本として刊行された本作とそれほどずれていなかった。

     途中までテニスの場面は退屈だったが、下巻のポンクとの試合シーンは手に汗握るもので、迷いが吹っ切れたように精神集中する燎平の心境が刻々と描かれ、スポーツ小説としても読めた。この試合の場面で初めて辰巳先生が登場するのだが、本作で唯一と言える大人の男性なので、せめてちらっとでも上巻から登場させてほしかった。


  • 読んだのはかなり前になるが、微塵も色褪せない名作。
    青春と、青春の中にしかない刹那や哀切が凝縮され結晶している。
    幕引きも含め隙の無い宮本輝の一番槍(だと勝手に思ってる)

  • 上巻では、そこまで面白いとは思わなかったが、下巻で、夏子への恋やテニスの試合など、盛り上がる場面を読んで、やっとこの作品の面白さがわかった。
    面白い。普通の主人公なのに、周りでは、ちょっと普通じゃないことが起こったりして、青春ってこんなものなのかなと思わせてくれる。
    私はあまり昔の作品が得意ではなかったが、少しづつ読むようになって、その作品が何十年も人から愛される理由や、面白みがわかってきた。嬉しい。

  • 何かを得て何かを失い、その繰り返しでひとは大人になっていく。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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