人口減少社会の成長戦略 二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか? (文春文庫 い 17-14)
- 文藝春秋 (2007年8月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167431143
感想・レビュー・書評
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全く新しい(知らなかった)二宮金次郎像を知ることができました。現代との比較など、非常にためになりました。自分の行動にも何か活かしていくヒントを得たいと思います。
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「マムシの猪瀬」
著者を私はそう呼ぶことにした。今から。
マムシに最初に睨まれたのは、コクド・西武グループの総帥堤義明だった。
『ミカドの肖像』を書いたとき、著者は無名のルポライターにすぎなかった。プリンスホテルってどうしてあんなに一等地にばかりにあるんだろうねえ。誰もが抱いていたそういう素朴な疑問から出発して、執念とも言うべき地道な取材を通じ、隠れた巨悪を実証的に糾弾した名著であった。その年の大宅壮一ノンフィクション賞を獲った。
20年後、マムシの毒が回り、セイブ堤帝国は崩壊し総帥はいまや刑事被告人となった。
マムシが次に狙ったのは道路公団。
最初は民営化推進委員に「物書き」が一人紛れている程度の受け止められ方だった。委員会のもう一人の民間委員が大宅映子、あの大宅壮一の娘だったのも何かの因縁であろうか。
そして、巨大な「道路の権力」道路公団もまた倒れた。マムシの毒は必ず効くようだ。
そのマムシの猪瀬が、「校庭のニノキンちゃん」について書いた本がコレである。
二宮金次郎は苦学と努力の人だったのは事実だが、たったそれだけの人物ではない。背負った「薪」は苦労の象徴なだけではなく、後に商売や運用で巨利を獲得したものの「原資」でもあったのだ。
それらの過程を著者は、家の家計簿のようなものから、貸付帳面、藩財政の建て直しのための計画書など、金次郎自身が記録した膨大な資料を丹念に丹念に読み込むことで浮き彫りにしている。結果として、一級の経済政策論に仕上がっている。マムシの執念に他ならない。
著者が賞賛する「予想外の困難があっても目的を見失わずに、執念深く地道に努力しつづけた」金次郎の姿勢は、猪瀬が本を書き改革に取り組む時の姿勢そのも。
更には、幼いころの家計の建て直しから出発して、奉公先の建て直しを経て、最後には幕臣として困窮する村々の建て直しを任されることになる金次郎と著者の近頃の活躍ぶりとがオーバーラップしてしまうのは私だけではないはず。
そもそもこの本、仕事で青森の県庁に行った時、県議会資料室の「今月の新着資料」としてガラスケースの中に展示されていた。この出会い方の中に、本書と著者の性格が如実に示されていて面白いと思った。
かつては巨悪に挑む批判派という印象の強かった著者だが、いまや地方議会の先生方も注目し、政策の参考にでもと考えるほどなのだ。
最後は幕臣となった金次郎同様、石原都知事に請われて副知事にまでなってしまった猪瀬直樹。
今私がもっとも注目し尊敬する「マムシ」である。 -
昔私が通っていた小学校にも二宮尊徳が薪を担いで本を読んでいる像がありました。
当時は薪を担いで本を読む二宮尊徳は偉い、とだけ聞かされていましたが、猪瀬氏の本ではその理由=経済の視点でみる理由が解き明かされて、なるほどそうなのかという謎解きの本になっているのです。
そして読み進んでいくうちに「○○思想」なるものが成立、現在でもそれは連綿と受け継がれており、誰でも知っている高校野球の名門「○○学園」につながるのだということが自然に理解できるようになるのです。
「そうだったのか」ということがわかる本の1冊だと思います。 -
戦後復興から現代社会にかけて、日本は人口減少していく。どうやって日本存続すべきか。
二宮尊徳は、理想を掲げてるが、理想だけを言うのは寝言だと。 -
2008.12
旅の友。