- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167483104
感想・レビュー・書評
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小さな国境紛争から第二次世界大戦の端緒につながるノモンハン事件を、関東軍(主に23軍)、参謀本部、ソ連、ナチスドイツの視点を交えて説明する。
自分が読みたいのは、戦略や戦史なので、読みたい類の本では無かったかな。やたら、外モンゴルの地名が出てくるのと、カタカナ混じりの当時の手記やらが多かったので読み進めにくかった。
また、辻政信少佐を一方的に断罪している書き方も疑問を覚えた。戦記とするには記述が乏しく、思想史てして読みには深掘りが浅くて微妙な立ち位置の本だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっと気になってた作品。
失敗の本質の小説版。
司馬遼で読みたかった。 -
「半藤一利」の著書『ノモンハンの夏』を読みました。
『指揮官と参謀―コンビの研究』に続き「半藤一利」作品です。
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「司馬遼太郎」氏が最後にとり組もうとして果たせなかったテーマを、共に取材した著者がモスクワ・ベルリンの動静を絡めつつ描いた傑作
参謀本部作戦課、そして関東軍作戦課。
このエリート集団が己を見失ったとき、満蒙国境での悲劇が始まった。
「司馬遼太郎」氏が最後に取り組もうとして果せなかったテーマを、共に取材した著者が、モスクワの「スターリン」、ベルリンの「ヒトラー」の野望、中国の動静を交えて雄壮に描き、混迷の時代に警鐘を鳴らす。
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昭和14(1939)年5月~9月に満蒙国境で発生したノモンハン事件について、欧州の動静を含め、広範囲に及ぶ資料を収集し、深い分析と考察をした結果が、巧緻で切れ味鋭い文体でまとめてある作品でしたね。
■第1章 参謀本部作戦課
…"戦略戦術の総本山"参謀本部はすでに対ソ作戦方針を示達していた。
「侵されても侵さない。不拡大を堅守せよ」
■第2章 関東軍作戦課
…関東軍の作戦参謀たちは反撥した。
「侵さず侵されざるを基調として、強い決意を固めて万事に対処する」
■第3章 五月
…モロトフ外相はスターリンに指示された抗議文書を東郷大使に手渡した。
「これ以上の侵略行為は許さない」
■第4章 六月
…関東軍の作戦参謀辻政信少佐はいった。
「傍若無人なソ蒙軍の行動に痛撃を与えるべし。不言実行は伝統である」
■第5章 七月
…参謀本部は、関東軍の国境侵犯の爆撃計画を採用しないと厳命した。
「隠忍すべく且隠忍し得るものと考える」
■第6章 八月
…歩兵連隊長須美信一郎大佐はいった。
「部隊は現在の陣地で最後を遂げる考えで、軍旗の処置も決めています」
■第7章 万骨枯る
…死屍累々の旧戦場をまわりながら、生き残った兵たちはだれもが思った。
「ああ、みんな死んでしまったなあ」
■あとがき
■参考文献
■解説 土門周平
第二次大戦勃発前に発生した、満蒙国境ノモンハンでの悲劇… 『指揮官と参謀―コンビの研究』に収録されていた『服部卓四郎と辻政信』にも紹介されていましたが、概要程度しか知らなかったので、本書を読んで日本軍だけで2万人近い多大な犠牲(戦死、戦傷、戦病、行方不明等)があったことを改めて知りました。
指揮官や参謀の誤った判断により、多くの犠牲が出した悪例ですが、、、
二面戦争を回避したいという「ヒトラー」と「スターリン」の思惑が一致し、ドイツはイギリス、フランスとの戦いに集中、ソ連は日本、満州との戦いに集中できる環境が整った時期と重なってしまった不幸なタイミングだったようですね。
それにしてもなぁ、、、
統帥権を無視して暴走する関東軍(特に「服部卓四郎」と「辻政信」)の判断には憤りを感じますが、それを知りながら阻止できなかった(しなかった)参謀本部の無責任さには憤りを通り越して、呆れてしまいます。
そして、最も不幸なのは犠牲になった現場第一線の将兵たちですよねぇ… ソ連側の司令官「ゲオルギー・ジューコフ中将」が戦後に「スターリン」の質問に答えたという、
「日本軍の下士官は頑強で勇敢であり、
青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、
高級将校は無能である」
という言葉が全てを物語っている感じがしますね。
日露戦争に勝利したことが、精神力で敵に打ち勝つことができるという幻影を日本陸軍に植えつけてしまったのかもしれませんが、、、
作戦立案における無計画、無智、驕慢、横暴、無責任な体質や、保身と昇進と功名と勲章が誇りであることしか学んでこなかったことが、この結果を生んだのかもしれません。
こんなことって、現代の企業でもありそうなことですよねぇ、、、
競争社会を生き抜くための教訓になる出来事ですね。 -
第二次世界大戦に進む前の、世界、日本の情勢が、わかりやすくまとめられていて、大戦前の複雑な情勢にも関わらず、理解しやすくて、面白かった。大国の様々な思惑が錯綜して、大きな戦争に進展したんだなと思った。
この本には、多くの教訓が記されていると思う。
日露戦争での成功体験が尾をひいて、時代遅れな技術、戦術を使っていたこと、撤退することは臆病者と判断され、イキリ散らかすことが評価されるという組織だったということ、また失敗を反省できないということ。なんか、現代の精神論大好きな組織にもありそう。こうはなりたくないものである。 -
著者の陸軍、特に辻政信に対する怒りを強く感じることができる内容であった。
ただ、同じ立場、同じ時にいたとして、私たちは彼らより適切な判断を下せるのか、と考えると多分無理だろう。
仕事をしていても、情報が足りず分析も充分でないまま、なんらかの判断を下し、まずやってみよう、としてしまうことは多々ある。理屈をこねくりまわすよりも行動するほうがリーダーとして認められることもあるだろう。ここで描かれる陸軍の面々についていってしまうことは少なくないのでは。大勢の人の命がかかっている戦争とは責任の重さは比べ物にならないが、、 -
半藤さんの辻政信に対する怒りが切々と伝わってくる名著。それにしても今の日本の官僚機構がかなりダブって見える。
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実に細かい史実を元にノモンハン事件を描いている。全く無知だったが当時の背景や人間模様、何故この事件が起こったのか、よくわかった。
上層部の一部の傲慢な人間の為に何万人の命が簡単に失われた現実は、とても衝撃的で、また怒りの感情が湧いてきた。
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ノモンハンでの凄惨な戦闘と、それを生起させた要因について精緻に、分かりやすい筆致で語りかけてくれる。
しかし、そもそも満州国を建国するとなればソ連と長大な国境を接すること、日中戦争を進めるためにはその手当をしながらでなければならないこと、南進すれば北にも相応の兵力を残置しなければならず、米国からの石油輸入も止められることを想定しなければならないこと・・歴史の結果を知っている我々は何故日中戦争、ノモンハンの事変、太平洋戦争へと突き進んでいったのか理解に苦しむのであるが、その時の時間軸にいた人々はそのようなことは見えない。歴史の本質なのかもしれない、と思う一方、我々は歴史から学び、今この時間軸から未来にかけてより平和な世の中にしていく責務があるのだと実感。 -
日ソ蒙両軍の詳細な勢力状況が記され、第二次世界大戦開戦直前期の各国外交判断の経緯が情景として目に浮かぶ著作。
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神楽坂の本屋さんで購入。