コルシア書店の仲間たち (文春文庫 す 8-1)

著者 :
  • 文藝春秋
4.02
  • (106)
  • (115)
  • (84)
  • (7)
  • (1)
本棚登録 : 1317
感想 : 113
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167577018

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 階級も信条も異なる人々が集う書店。

    生きてゆくことは出会いと別れの繰り返しであること。

    読み終わった後、少しの切なさと
    静かで温かな喜びに包まれる感覚がしました。

  • 2020年1月19日に紹介されました!

  • 読めば読むほどに味わいが深くなり、ミラノの街の風景とその世界にどんどん引き込まれていく。
    でも何だかもの悲しく感じる。
    30年の時を経て紡ぎ出される、遠い昔になじんだ人たち。
    年老いてもなお、心に寄り添うさまざまな想い。人生は儚い。
    やがて孤独と向き合い、それでも想い出は人の心に生き続ける。

  • コルシア書店の仲間たち 須賀敦子 文藝春秋

    昔読んだ事があるのに
    なぜまた手にしたのかわからない
    エッセイという知識を転がす
    乙に済ました遊びが好きでないのに

    重たい本に気が滅入っている間の気晴らしだったのか
    いずれにしても外を描くことで間接的に自分を押し出す
    こうした表現には貴族趣味を覚える

  • 著者が出会った個性豊かな人たちが、イタリアの生活や時代背景とともに描かれている。どんな人にも魅力的なところがあるのだということを気付かされた。

  • たしかに、最初の方はとっつきにくくて、大丈夫かなと思ったがだんだんこの書店の魅力、ミラノの雰囲気、詩的な表現に取り込まれていった。

    こういう穴ぐらのような場所というのは、みんなが求めていて、たとえば大学の部室なのか、行きつけの飲み屋なのか、なんとなく誰かが集まる親友の家なのか、そういう人間くさい、人があつまってしまう場所というのは居るだけで居心地がよくて、理念や目的があってもなくても、結局はそこにいる居心地の良さが目的になるのだと思う。

    そして、それぞれが目的をもってそのねぐらを離れていくときがくる、やはり心の指針を定めることができるのは自分だけであり、それなくして、本当の意味での心の平静を手に入れるのはできないと気がつく。

    第二、第三の、大人の思春期、青春の物語だなあと思った。それが、自分たちから程遠いイタリアのそれも戦後の混乱のなかでという、この距離感と運んでくる風のおしゃれさが、半端なく気持ちよかった。落ち着いて読めた。そして自分の身に照らすことができた。こんな場所が欲しいけど、いつまでもこんな場所にはいられないのではないかという、憧れと焦りと日常の無機質さをほどよく埋めてくれる物語だった。

  • 著者がイタリアに留学し、ミラノの小さな書店に集う人々と交流した若き日々をたどるエッセイ。

    当時はまだ日本人女性が珍しかったせいか、さまざまな人に紹介されたり、招待を受けたり。
    何かをスルドク分析するとか考察するとかではなく、とても素直な目で、書店の仲間たちの姿が、丁寧に淡々とつづられているのが心地良い。


    その昔、学生時代に冷やかしによく立ち寄った、見たことのない雑誌や単行本、自費出版本ばかりの書店を思い出した。
    最近、店内でくつろいでお茶を飲めるとか、読書会を開くとか、店主の個性を反映したユニークな書店がちらほら。
    いつかそんな書店で時を過ごした誰かが、こんなエッセイを書くかもしれない。
    ネット書店は便利だし、電子書籍もいいけれど、やっぱり街でへ出て、本を買おう!

  • <仲間たちから一人ずつへ>


     あの須賀敦子(!)が約10年暮らしたミラノ、その生活の中心にあったコルシア・デイ・セルヴィ書店について明かした、特別な位置づけにある一冊★

     教会の物置を改造したその小さな書店は、本を売るだけではなく、胸に理想を抱いて、瞳に静かな星を持ったひとたちの集まる場所でした☆ 生きることについて真摯に考え、自分の信念を張る人たちの……。須賀さんは共同体の一員として受け入れられ、さらには書店仲間の一人と結婚したことで、コルシア書店が彼女の日常となったのでした。

     コルシア書店は小さいながらも雰囲気のある舞台で、数多くの仲間たちが現れます。司祭、教師、学生、記者、弁護士。さまざまな人たちが来てそれぞれに動いていて、いろいろと面白い配役があるのです、お芝居みたいに★ みんな何やらやっていて高いカロリーが渦巻いている感じが、コルシア・デイ・セルヴィ書店を作っています。

     本当を言うと、何度か読んでいるのに恥ずかしながら、私は書店の目指した未来がつかめずにいます。彼らがここに集ったのは何の目的からだったのか? 宗教のようでもあり、政治のようでもあり……、しかし何より共同体であることが大事だったのかなと思います。

     しかし『コルシア書店の仲間たち』は、書店の活動が盛り上がっていくのではなく、失われていく話。現れたさまざまな人たちは、少しずつ一人ずつ去っていきます。
     彼らは長い間、空間を共有して理想について考えてきたけれど、同じ夢を描いていたわけではなかったのですね。互いを尊重しあいながらもちょっとずつ別の絵を見ていて、やがて別れた。自然なこととして。

     ある時期、共同作業が重要に思える時もあるのだろうけど、それがいつからかばらばらになっていっても驚くにあたらないのでしょう★ 悲しい話かもしれない。ですが、仲間たちは、一人ずつになる。もともと私たちは一人ずつだったのです。

  • 須賀敦子氏の作品を読むのは「トリエステの坂道」に次いで2作目。ミラノのコルシア書店での仲間たちとの思い出を語っている。

    出会いと別れ、年月の経過による人の変節など少し物悲しいけれど、どこか心温まる話が散りばめられている。それと文章が美しい、というか洗練されている。

    大切な人との死別、友人との別離等があっても、人は全くの孤独ではない。

  • かつてイタリアのミラノに存在した小さな書店を共同体として集まった仲間たちを、著者の目線で綴ったエッセイ。
    回顧録といってもいいかもしれない。

    時は1960年代。

    情熱を燃やして集う仲間たちの生き生きとした姿、人間味溢れる姿は最後までとても美しい。

全113件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1929年兵庫県生まれ。著書に『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』『ユルスナールの靴』『須賀敦子全集(全8巻・別巻1)』など。1998年没。

「2010年 『須賀敦子全集【文庫版 全8巻】セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

須賀敦子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ポール・オースタ...
ポール・オースタ...
ウンベルト エー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×