鷺と雪 (文春文庫 き 17-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167586072

作品紹介・あらすじ

昭和十一年二月、運命の偶然が導く切なくて劇的な物語の幕切れ「鷺と雪」ほか、華族主人の失踪の謎を解く「不在の父」、補導され口をつぐむ良家の少年は夜中の上野で何をしたのかを探る「獅子と地下鉄」の三篇を収録した、昭和初期の上流階級を描くミステリ"ベッキーさん"シリーズ最終巻。第141回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 『鷺と雪』
    その時々において、いろいろな出来事があり、時と共に流れていく。
    ドッペルゲンガー ハイネの『影法師』森鷗外・訳『分身』芥川龍之介『凶』梅若万三郎『鷺』『源氏物語 葵上』能面

  • ベッキーさん完結編…なんだけど、正直「えっこれで終わっちゃう?!?!」という気持ちも強い。恋愛ものじゃないのだけれど、思わせぶりな軍人がチラチラ出てきて2.26事件か~あぁー…となってしまった。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の解釈や芥川の腹巻のことは「なるほど~」と思った。華族の地位を捨てた『不在の父』、この当時からお受験はすごかったんだな…と思わせる『獅子と地下鉄』、いたずらにしても底意地が悪いお嬢様とカメラ、そして勝久…となった『鷺と雪』。まあここで余韻を残して終わるのが綺麗なんだろうなぁ…

  • ベッキーさんシリーズの最終巻にして、直木賞受賞作。
    直木賞受賞作ということで本作から読む人もいるかもしれませんが、「街の灯」、「玻璃の天」と順番に読むことをお勧めします。
    分かりやすさが優先された作品ではないので、万人受けする作品ではないかもしれません。
    それにしても、何という幕切れなのでしょうか。
    その後の歴史について、現代の我々は知っているのですが、主人公がこれから歩む道を想像すると、息が止まりそうです。
    シリーズ全体を通じて、フィクションですが、その時代を体験したような気持ちになりました。

  • 個人的には三作の中で「不在の父」が一番心に残った。父はなぜ消えたのか。「わたし」との対話では、人の避けられない業のようなものがあるのかと思った。

    「鷺と雪」では再び『漢書』の一節が出てくる。「善く敗るる者は亡びず」
    ベッキーさんは問いに対して「はい、わたくしは、人間の善き知恵を信じます。」と答える。
    その答えが、不穏な時代の雰囲気を感じさせる話の中で、人が縋れる真摯な強さを与えてくれているように感じた。

  • この時代が好きな方は良いのかなと思います。

  •  
    ── 北村 薫《鷺と雪 2009‥‥ 20111007 文春文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/416758607X
     
    (20231128)

  • 二つ目の話のあたりで、これはシリーズものの途中から読んでしまったな…と気づいた。
    ラストがとても切ないし、うわぁ〜…となった。そこに辿り着くまでも節々に戦争の影が見えてたので少し落ち込んだが、話はどれも面白かった。ベッキーさん素敵

  • 時代は、昭和初期。当時の士族のお嬢様と、その付人としての運転手の女性“ベッキー”さんが、日常生活の謎解きをする「ベッキーさん」シリーズ。第3作で最終作の、短編3編。
    第1作から読まなかった事は、大失策。
    推理小説ですので、各作品その時代らしい謎解きが楽しめます。そして、作中に何作かの文芸作品を絡めます。その作品にも興味がわきます。
    「不在の父」
    自宅から突然失踪した子爵。その行方と理由を探します。実際にあった男爵失踪事件を題材にされています。山村暮鳥の囈言という詩の一節が、最終話への布石となります。この詩は、はじめ知りましたが、犯罪名と名詞で熟語としたような魅惑的な作品でした。
    「獅子と地下鉄」
    受験を控えた少年の上野補導事件。銀座三越のライオンにたどり着きます。
    「鷺と雪」
    ドッペルゲンガーと思われる現象の謎解きです。
    そして、お嬢様が密かに想いを寄せる青年将校と最後になるであろう奇跡的な語らいが見事な最終話です。

    この最終話のベッキーさんの語らいの部分が、理解できず、まあいいか?と諦め気味だったのですが、直木賞評価を読んだところ、宮部さんの論評で納得させていただきました。当初から、謎多き女性でしたが、未来から来たお嬢様になるほどと。

    二、二六事件が、最終話を飾るのですが、三島由紀夫の憂国、宮部みゆきの蒲生邸と、視線が変われば小説も変わりますね。数行の昭和史から含まれるものが多い創作でした。

  • うーむ、この作家とはどうやら合わない気がする。最初から文体に馴染めず仕舞い。
    内容は大正・昭和を背景にして、色々伏線を張り巡らしていて、世俗も感じさせるなとは思いつつ。。。
    まぁあくまで好みのレベルのような気はしますが、文体に乗れないというのは読み手にとっては致命的な訳でして。

  • 昭和初期、古さより新鮮で清々しく色鮮やかな感じがしました。全体のバランスが素晴らしく、現代もよいけどこういう時代ってステキだなと感じました。最後が切ない。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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