死体は語る (文春文庫 う 12-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656027

作品紹介・あらすじ

偽装殺人、他殺を装った自殺…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 単行本として本書が世に出たのは1989年、文庫化されたのは2001年。

    多くの重版を重ねてきた本書、読めば納得のノンフィクション作品でした。

    法医学、監察医、臨床医、検死、司法解剖、行政解剖...言葉としては見聞きしたことはありますが、無知故に違いは何か?と問われればわからないと答えるしかなかった。

    故意に死体を傷つける事(死体損壊)が罪になる事は知っていましたが、死体解剖保存法なる法律のことなど、全く知りませんでした。

    監察医としての実体験。

    偽装殺人、自殺を装った他殺、またその逆、一見すると見落としてしまう死の本当の原因。

    死体と向き合い、そこの残された僅かな痕跡から故人がどのように亡くなったのかを法医学に基づき解き明かす。

    作られたミステリーではなく、これがノンフィクション。



    説明
    内容紹介
    あなたにも死者のメッセージが聞こえますか? 法医学入門のバイブルとなった大ベストセラー。
    偽装殺人、他殺を装った自殺、猟奇事件…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。その死者の声を聞き、丹念に検死をし、解剖することによって、なぜ死に至ったかを調べていくのが、監察医の仕事である。
    浅沼稲次郎刺殺事件、ホテルニュージャパン火災事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。
    テレビドラマ『監察医 篠宮葉月 死体は語る』シリーズの原作にもなった、話題の書。
    解説・夏樹静子
    内容(「BOOK」データベースより)
    偽装殺人、他殺を装った自殺…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    上野/正彦
    1929(昭和4)年、茨城県生まれ。東邦医科大学卒業後、日本大学医学部法医学教室に入る。59年、東京都監察医務院の監察医となる。84年から同院長となり、89年退官。以後、法医学評論家として執筆活動を始め、89年、初の著書『死体は語る』が、60万部を超える大ベストセラーとなる。その他、専門書、学術論文多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、法医学ノンフィクションの大ベストセラー。

    元監察医の上野正彦さんによる、法医学ノンフィクション・エッセイ本です。
    ドラマ化もされたと書いてあったので調べてみた所、そのまま『監察医・篠宮葉月 死体は語る』というタイトルで 2001年からドラマシリーズが放送されていたみたいですね。

    私の手元にある文庫本で19版目、何度も重版されたベストセラーだけあって、それこそドラマや小説の中でしか知らなかった監察医という仕事が、くっきり輪郭を持った気がします。
    偽装殺人や親子鑑定、外から見ただけでは分からない、死体に秘められた真実を明らかにする監察医という仕事。ときには割り切れないような事実や事情に直面することがあっても、誇りをもってその職業と向き合っている姿がとても格好いい。
    語られる事件に添えられたコメントも、人情味のある人柄があらわれています。

    ちなみに、単行本の初版が1989年発行なので時代的に仕方ないのですが、現代の感覚で読むと、ちょっとハラスメント意識やら性的指向、性的マイノリティに対する意識など若干気になるかもしれません。
    法医学部分についても、DNA鑑定がなかった頃だったり、現状とは違う部分も多いのかなと思うので、最近の法医学を扱った本などもあれば読んでみたいですね。

  • 読み応えあり。

    海外ドラマの影響で法医学に興味がありいろんな本を探っている時に、この本にたどり着いた。
    監察医という仕事がどんなものなのか。
    読んでいて辛い事件もあったが、解剖されないとわからなかった死因もあったり、本当に大変な仕事だなと思う。尊い職業ですな。

  • 元東京都監察医の上野先生は、これまでに20000体以上もの検死体にかかわってきた。
    昔、未解決事件や行方不明者を捜査するスペシャル番組に、出演されていましたね。

    上野先生は初対面の人から、「死体を検死したり解剖して、気持ち悪くないですか?」と質問されるそうだ。
    即座に、「生きている人の方が恐ろしい。」と、応える。

    生きている人は平気で嘘をつくが、死体は監察医が問い掛ければ、真実を伝えてくれる。
    確かに、暴れず、おとなしく、素直ですからね。

    監察医制度が導入されている地域は5都市で、東京23区・大阪市・名古屋市・横浜市・神戸市のみ。
    全国的に制度を導入することは予算上、無理だが、このような態勢を確立できるよう願いを込めて、文筆活動を続けている。

    この制度のおかげで、生命保険の問題や交通事故、労災問題でのトラブルを正当に解決できる。

    死者の声を聞く監察医という仕事に興趣が尽きない。

  • 元監察医によるベストセラー。
    35年前に書かれたものなので今読むと倫理的にどうなんだろうと思う箇所もちょいちょいある笑

    「死者の人権を守る」「死者にも医師を選択する権利がある」という視点には驚かされると共に、著者の強い信条を感じた。

    死後解剖を拒否する遺族がいることは知っているが、ただ単に死者の尊厳を保つ為の拒否ならば、それは本当に死者のためを想った発言ではないということを遺族は理解しなければならない。

    執筆された当時でも監察医制度は五大都市でしか施行されていなかったみたいだが、現在でもそれは変わってない。「監察医制度を全国的制度に」という著者の願いはなかなか実現されそうにないようだ。
    見逃されそのまま闇に葬られた不自然死もいまだに数多くあるのだろう。

  • 小説やドラマなどでは遺体の死因を特定する人の背景にはスポットライトがあまり当てられない印象だが、この本は実際に監察医としてキャリアを積んだ方のエッセイということで興味を持った。監察医制度というものをこの本を読んで初めて知ったので、監察医制度の知名度向上という点からも有意義であると感じた。
    実際の業務についても小説が一本書けそうなエピソードが数多く掲載され、読みやすい文体で書かれているので読んでいて感心することが多かった。
    著者にとっては内科は「重箱の外側を触って中身が赤飯か牡丹餅かを当てるようなもので、見方によってはかなりいいかげん」であり、外科は「もっと大雑把で、悪いところを切り取って捨ててしまう」ところが合わなかったと書いてあり、そういう見方もあるのかと驚いた。出版されてから時間がたっているので、現在の法医学がどうなっているのか知りたくなった。

  • タイトルはシュールだが、決してホラーではないし、小説でもない。著者は東京都の監察医を務める先生である。不自然な死体を検視し、時に行政解剖を行う監察医制度が、五大都市(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸)にしかないことにまず驚いた。著者は予算上、全国にあまねく本制度を導入することは困難だと語るが、それにしても犯罪かどうかを認定するために非常に重要な制度が、たった五つの大都市にしか施行されていないことに、釈然としないものが残った。

    著者は監察医の意義として、死者の人権擁護を語る。監察医制度が五大都市でしか機能していないのであれば、他の都市で死んだ者は、五大都市で死んだ者と比較して、死者の人権が守られていないということになる。某国の愚かな首相は「憲法で定める『基本的人権』は、生存するものにのみ適用される」という大した根拠もない法解釈を勝手に披露するかもしれないが、監察医の視点から死者の人権を擁護しようとする著者の見解のほうが、明らかに合理性がある。

    といっても、本書は決して固い内容ではない。否、書いてあることは非常に崇高であるが、著者の軽妙な語り口が固さを感じさせない。監察医か、少なくとも法医学を志しでもしなければ、一生現実には出会うことがないであろう不自然な死体とその裏に隠された真実は、著者の語り口の軽さに乗せられてすっと読み進んでしまう。タイトルの『死体は語る』にしても、一見シュールに思えて、著者の洒脱な文体の一部となっている。その結果、不自然な死を遂げた死体にまつわるエピソードを扱ってはいるが、堅苦しさのないエッセイとなっているのである。

    監察医ゆえ、時に専門的な用語も登場するけれども、検死の所見や行政解剖で得たわずかな手がかりから、ただ死体を眺めただけでは決して判ることのない真実が導き出されるプロセスは新鮮な驚きに満ちている。エッセイでありながら、ミステリーの趣をも備えているのだ。すなわち死者の専門家たる監察医が、目の前の死者に静かに耳を傾けるとき、「死体は語り」かけるのである。死者の言葉を聞くための条件はただ一つ……一流の法医学者であることだ。

    生きている者たちは、程度の差こそあれ偽善者であり、嘘をつく。中には犯罪に手を染める者もいるだろう。一たび法を犯した生者は、おのが罪の隠ぺいに躍起になる。そうしたときにありのままを語ってくれるのは、もはや死者しかいないのかもしれない。そうであるならば、五大都市でしか施行されていない監察医制度は、本来的に制度としての欠陥を内包しているように思う。死者が検死や解剖を通して語り掛ける言葉こそ、何よりも真実に近い、大事なダイイングメッセージだからである。

  • 法医学者の著者の経験を通じて、人生観なりモノの考え方を綴った本。インパクトのあるタイトルだけど、グロい描写などはない(個人差があるかもしれない)
    「死者の人権と尊厳を守る」のが法医学。

    犯罪だと調査したらすぐ分かりそうなものが、調査という舞台に上がらずに処理されてしまうケースで隠れていることが多いのかなと感じた。
    警察・医者・役所などの現場の人の感じた違和感を、法医学者がデータドリブンで裏付けするって感じ。
    割と前の本なので、法医学を取り巻く状況や法律はもう少しアップデートされているのかもしれない。

    俗っぽい読み方をしているので、著者の意図した捉え方ではないと思うが、前半に割合多かったの実際の事例ベースの章が、ミステリや犯罪モノのような出来事が実際にあったのか… という読み物として興味深かった。
    文庫版あとがきにも書いてあるが、当時は痴情のもつれケースが多いのも時代を表していそう。

    生活反応という、生物が生きている間のみ起こる反応がある、というのも初めて知った。例えば、死後に刺されても血が出ないなど。

  • 死体は語る
    良いタイトル
    内容も興味深い

  • DNA鑑定が存在しなかった頃の古い作品。今作者は監察医を取り上げられたTVドラマをどのように見ているだろう。昔の公害薬害事件の甚大さに驚く。東京、横浜、名古屋、大阪、神戸でしか監察医制度がないのは今も変わらないのであれば、隠れた事件は相当ありそうだ。老人の自殺は独身世帯より同居世帯で多いというのも何とも言えない。

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著者プロフィール

昭和17年、和歌山県生まれ。京都大学法学部卒業。職業:弁護士・公認会計士。●主な著書 『新万葉集読本』、『平成歌合 新古今和歌集百番』、『平成歌合 古今和歌集百番』、『百人一首と遊ぶ 一人百首』(以上、角川学芸出版。ペンネーム上野正比古)、『光彩陸離 写歌集Ⅲ』、『ヨーロッパの大地と営み 写歌集Ⅱ』、『ヨーロッパの山と花 写歌集Ⅰ』(以上、東洋出版)

「2016年 『万葉集難訓歌 一三〇〇年の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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