赤ちゃん取り違え事件の十七年 ねじれた絆 (文春文庫 お 28-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656416

作品紹介・あらすじ

小学校にあがる血液型検査で、出生時の取り違えがわかった二人の少女。他人としか思えない実の親との対面、そして交換。「お家に帰りたいよう。」子供たちの悲痛な叫び-。沖縄で実際に起こった赤ちゃんの取り違え事件。発覚時から、二人の少女が成人するまで、密着した著者が描く、家族の絆、感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和40年代に起きた事件のノンフィクション作品。前半は取り違え発覚後から交換、裁判の行方がメイン。中盤は取り違えの起きる構造的な背景・状況の開示。後半は交換後の当事者心理状況を明らかにしていく。血か情か?親とは?子を育てるとは?昔ほどではないにしろ、日本はまだまだ血縁関係を重んじる社会であること、それが里親の委託率の低さにも影響しているように思う。正解は出ないだろうが、自分が当事者だったらどうしただろう...。

  • 「そして父になる」参考書籍という。
    映画はそんなに特別思い入れもないけど
    奥野さんという方の著作が興味深いラインナップなので、
    この本が真っ先に入手しやすかったので読んでみました。

    取り違え事件の家族がどうなっていったか、親と子の心や事情など貴重なドキュメンタリーだと思いました。

    さらに取り違えもさることながら・・
    片方の家族の母親が、母親じゃなかったことがしんどい。

    取り違えがあってもなくても、母親の役目を放棄してる家庭の子は元から厳しい環境。

    もしその母親が普通に家にいてくれる、一般的な母親だったらこんな結末にはなってない気が…と思えた。

    手間暇かけて、育ててくれる、家庭らしい家から、
    突然、崩壊家族の家につれてこられたら…
    比較対象があるだけに、厳しい。
    人生てどうしても比較対象で、幸不幸を感じてしまいがちなので。

    沖縄の歴史や暮らし、事件に直接は関係ない背景なども読みごたえがありました。

  • 映画の原案にもなったノンフィクション。
    取り違えられた子供とその家族の苦悩が描かれる。
    最も心を通わせるはずの親と子がそれを断たれ、再生しようともがく姿は切ない。
    ノンフィクションを読んで泣きそうになったのは、これが初めて。

  • こちらはノンフィクションで、映画よりも凄絶だった。初めて実の娘に会った時の「似ている!」という衝撃、ふたりの娘達の育ての親への強烈な執着。

    やがて親としての資質の違いも明らかになっていく。
    「子どもは親を選べない」というけれど、この場合は完全に子どもが親を二択で選んでいる。親同士の子どもの取り合い、そして子ども同士のライバル意識もすごい。

  • そして父になる、の参考資料としてテロップが出ていたので読んでみました。
    こちらの方が深刻な感じでした。
    親の家庭環境と取り違えられた子どもの育て方、関わり方、複雑に絡み合ってます。
    取り違えようとそうでなかろうと親子の絆は愛情で左右される、というようなことを解説等でも書かれていましたが、その通りだと思いました。

    仮名にしてるけど、詳しく書かれてるから調べたら本人たちがわかるのではないか、と不安な気持ちではありますが、
    これを最後まで読んだなら本人たちを知っても傷つけようとは思わない、と信じたいです。

  • 40年前の沖縄での嬰児取り違え事件をその後25年に渡って追いかけたノンフィクション。自分は親でもあるのでこの本を取り違えられた親子両方の視点で読んだ。血の濃さはは情を超えるけども、情の濃さは血の繋がりすらも凌駕する。一見パラドックスのようだけども、結局どこまで親が愛情を注いだかの一点に尽きるのだなというのが大まかな感想。両家の両親の姿があまりにも対称的なために、どちらの子も片方の母親を慕うといったくっきりとした実験結果のような結論になったのが皮肉だなと思う。実際自分の子が取り違えられていたら、と想像するとその葛藤は想像するに余る。久々に素晴らしいノンフィクションを読んだ。取材者の姿勢に脱帽。

  • ノンフィクションなのに小説を読んでるように細やかな心情が伝わってくる。自分にも同じくらいの子供がいるので、子供の気持ちを思うと苦しくなる。そしてそれ以上に親の状況▪葛藤に自分を重ねてしまう。

  • 血は血の濃さがあるのかもしれないけど、情は相対的に大きくも小さくもなるということなのだろう。ただまぁ、照光・夏子夫婦がよく取材に応じたものだと思わずにはいられない。それこそ「一族の恥」なのではないか。一方で重夫の存在感が薄いなぁ。

  • 以前から『生まれか育ちか』『血か情か』といったテーマには興味があったが、自分自身が子どもを授かったことで改めて向き合ってみたいと思い、読んでみた。厳密に言うと『そして父になる』を見返そうかと思っていたところ、この本の存在を知って思わず購入したもの。

    このタイミングでこの本と出会えて本当によかった。
    と強く思うほどに感銘を受けた。

    実話であることに驚くほどの展開ですぐに読み切ってしまったが、とにかく智子さんの子どもを想う気持ちに圧倒されるし、親を冷静に見る子ども側の意見からは感じることが多かった。
    親の教育の一貫性と教養、さらには親が自分自身をコントロールして、子どもから尊敬に値する人間で居ることこそが何より大事なのだと感じた。

    ここに出てくる両家はあまりにも対照的だと感じるが、自分自身も親の言うことの矛盾は敏感に察知していたことを思い出した。
    親も人間である以上、完璧で居ることは難しいが、それでもこうしたことは常に心に留めて、子どもの幸せを願える親でありたいと思う。

    エピローグでそれぞれが今を力強く生きる姿には勇気をもらいました。
    過去は変えられないから、起きたことを踏まえてどうあるべきか、きちんと考えて、真摯に向き合っていける人間でありたい。

  • 親の愛って偉大やなあ、、沖縄の歴史・文化も色々知ることができて面白い作品だった!

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著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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