前日島(上) (文春文庫)

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制作 : 藤村 昌昭 
  • 文藝春秋 (2003年11月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167661519

前日島(上) (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1643年、難破船アマリリス号から海に投げ出され、ただ一人生き延びたロベルトは無人の船ダフネ号に流れ着く。すぐ傍に島影が見えているがカナヅチのロベルトは泳いで上陸することができない。無人船ダフネには食糧もあり、不潔でもなく、流行病で死滅したにしては死体すらない。奇妙な船の中でロベルトは手記(手紙?)を書きはじめ、どうやら後にそれをみつけた語り手がロベルトについて書いているという体裁らしい。

    正直、序盤は船内とロベルトの過去の回想(30年戦争)を行ったり来たり、語り手は勿体ぶるし、ロベルトの手紙も言い回しがいちいち面倒くさいし、なかなか物語に入り込めずに苦労しました。回想の中のカザーレでの戦いも、戦況が複雑すぎてなかなか状況把握できず、ただロベルトの親友になるフランス人サン=サヴァンだけは好きだった。戦争が終わってからはパリのサロンで恋にうつつをぬかすロベルトの回想が続き、その後やっと、ロベルトがアマリリス号に乗った経緯になる。ふう。

    そしてダフネ号のロベルトは、無人のはずの船の中に「闖入者」がいることに気づく。というか、どう考えても後からきたロベルトのほうが闖入者だと思うのだけど、地味な攻防のすえ、ようやくその先住者が姿を現したところで上巻終わり。

    ロベルトの妄想の中の兄の存在と、錬金術的な胡散臭さはあるけど「共感の粉」は考え方として興味深かった。しかし緯度とか経度とか定点とか専門的なことになると難しいなあ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    時代はバロック。主人公の名はロベルト。
    1643年、枢機卿の密命を受けて乗りこんだ船が南太平洋で難破、命からがら流れ着いたのが、美しい島の入り江にうち棄てられた無人船「ダフネ」だった。
    たまたま島は日付変更線上にあり、入り江を泳ぎきれば、向こうは一日前の日。
    あのユダだってキリストを救い出せるのだ―そこは『前日島』だから。


    商品の説明・メタローグ
    『薔薇の名前』、『フーコーの振り子』など、本国イタリアだけでなく、日本を始め世界的にヒットした著作のあるイタリア人作家ウンベルト・エーコの力作。
    オリジナル、日本語訳、英語訳といずれも美しい装幀で楽しませる長篇は、17世紀に南太平洋で突風に見舞われ難破船の中にあって、現世の時空間を超えたブラック・ホール的な世界を迷い込んだ男の物語。
    帯に書いているように、まさしく「『知』の航海」と表現するにふさわしく、歴史、文学、地理学など知的スリルが物語のそこかしこにある伏線によって仕掛けられている。
    他のエーコ作品同様、ファンタジックな人物造形がここでも健在。(新元良一)
    『ことし読む本いち押しガイド2000』

  • Wikipediaによると「バロック」とは
    「16世紀末から17世紀初頭にかけイタリアのローマ、マントヴァ、ヴェネツィア、フィレンツェで誕生し、ヨーロッパの大部分へと急速に広まった美術・文化の様式である。~中略~ 誇張された動き、凝った装飾の多用、強烈な光の対比のような劇的な効果、緊張、時として仰々しいまでの豊饒さや壮大さなどによって特徴づけられる。」
    なのだそうである。実際、数行でなんとか言い表そうとするならこんな感じに落ち着くのだろうと思う。しかし、「バロック」という言葉の裏側にあるものを正確に探り出そうとして行くとどういうことになるのか?「前日島」という小説は、その答えの一つとして読むこともできるのではないだろうか。

    久しぶりに読み通すのがなかなか大変な小説にかかり、読むのに3週間ぐらいかかった。カザーレの回想のあたりで急に人物関係や地理がよくわからなくなり、久しぶりに紙にメモをとりながら小説を読んだ。しかし、流し読みをしてしまうよりはやはりじっくり取り組むのが面白いことを再確認した。

    当時の哲学だったり、~学と呼べるようなものがありとあらゆるところで語られ、本の中で迷宮の様相を呈している。私は昔、この~学と呼ばれるようなもの(例えば地理学とか)はそれぞれを分けて考えることが可能、と思っていたが、柄谷行人さんの「トランスクリティーク」などを読んで出てきた、カントとコペルニクス的転回などといったくだりを読むうちに、もっと総合的な把握、視点が必要なのではないのか、となんとなく思っていたところに、「前日島」を読んだので、ここで出てくる諸学について非常に興味を覚えるのである。

    また読みながら思い出していたのは奥泉光さんの小説である。奥泉さんは確かエッセイか何かの中でこの「前日島」を面白い、と言っていたような気がして(いまいち記憶が定かでないので「フーコーの振り子」とかの間違いかもしれないが)話が進むうちに思わぬ場所へ迷い込まされる手法、感覚を、奥泉さんのものを頭に浮かべながら読んでいたような気がする。

    「前日島」っていったいなんなんだろうか?いろんなメタファーとして読むことも可能なんだと思う。それから日付変更線って確かにロマンを掻き立てられる気がする。そこから先は「前日」なんですから。

  • 2011/1/30読了

  • 鳥のモチーフに引っ張られてか、何重にも何重にもかさなる鳥籠のようなイメージ。
    向こうは見えるのに、そことここは別の空間になっている。
    あるのはむしろ、壁や境界が無いことへの恐れみたいなものなのに。
    恐れとか恐怖というとちょっと違うか・・・・・・
    ロベルトは現状を恐れていたりはしなくて、それがまた不思議に湿度を下げている。

    縦横無尽というべきか、縦と横では足りなくて、
    過去も夢も思いも妄想も、なにもかもがひとつの流れを作って
    ここにしかない世界を描いているような小説。

    ぱんこ、貸してくれてありがとう。

  • 小説にはストーリーなんていらないんだ。

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前日島(上) (文春文庫)の作品紹介

時代はバロック。主人公の名はロベルト。1643年、枢機卿の密命を受けて乗りこんだ船が南太平洋で難破、命からがら流れついたのは美しい島の入り江にうち棄てられた無人船「ダフネ」だった-知の巨人・エーコはこの無人船を一瞬にしてバロック世界と化す。『薔薇の名前』、『フーコーの振り子』に続く世界的ベストセラーの傑作。

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