トワイライト (文春文庫 し 38-3)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167669034

作品紹介・あらすじ

小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代-しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。

感想・レビュー・書評

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  • 人生の折り返し地点を迎えた登場人物はトワイライト・黄昏時を迎えている。
    リストラ、家庭内暴力、盛りを過ぎた予備校講師。
    彼らが夏のある日、小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こすことから、事態は動き出す。
    登場人物はドラえもんのキャラクターになぞらえられる。
    のび太、ジャイアン、スネ夫、静香ちゃん、そしてドラえもん。
    彼らが熱い夏の日をどう過ごし、これからの10年後に向かってどう変わっていったのか。
    最初は辛い話だっだが、最後は希望を感じさせる。

  • 多摩ニュータウンの没落と万博での太陽の塔。小学校のときに埋めたタイムカプセルを開けるために集まった同級生が過去と現在を行き来しながら話が進む。人生は楽ではない。

  • 小学校のタイムカプセルを掘り出した日から、始まる物語。読みながら、小学校の友達って私立に行くとご縁が無くなるな〜って思った。

  • 登場人物の全員に嫌な部分と好きな部分があった。
    うまくまとまって終わったわけでも、破滅的な終わり方をしたわけでもなく、ただここに書かれた話はまだ「途中」であって、彼らはまた10年後に今回を振り返るのだろう。そういう意味でもトワイライトという題名とのつながりを感じた。

  • トワイライト 重松清 2001初版

    今あなたは幸せですか?という問いかけが話の中で度々出てくる。死に近い存在である白石先生と杉本が未来について考えて、今を生きる人々(徹夫、克也、真理子、淳子)が未来を失っている。幼い頃に期待していた未来とは、自分含めふるさとであるたまがわや太陽の塔も違っている。幼い頃見えていた輝かしい未来が失われている。自分自身でもそのズレをコントロールできず、こんなはずじゃない、時代のせいだ、と現実に納得できなかったり、感情を抑えられなかったり。

    将来なんとなく幸せなんだろうなぁという気はしても、こうだといいな、が考えの根底にあって、悪いことは不思議と出てこない。それがなによりの、いま幸せな証拠なんだと思う。40歳の自分にタイムカプセルを埋めるとしたら、どうするかな。名刺とか手紙かな。我ながらベタだな。

  • 「負けず嫌いって2種類あると思う。負けるのが嫌だからその場所で必死になって頑張る人と、負けるのが嫌だからそこから逃げちゃって自分の勝てそうな場所を探す人の2種類」
    ビジネスにおいては勝てないフィールドで勝負することと、勝てるフィールドに移って勝負することのどちらがいいのだろうか。ビジネスと人生ではまた違うのかもしれない。

  • 「40歳になったら開けよう」と埋めたタイムカプセルを、学校が閉校になったため1年早く開けることになった。
    ジャイアンと言われていた徹夫と、しずかちゃんのようにしっかり者の真理子夫婦。のび太と言われていた克也、誰とも群れずに孤高を保っていた文学少女ケチャこと淳子、たった数ヶ月だけしかクラスメートではなかった転校生の杉本、そして、ずっと変わらずにのんびりマイペースの浩平。

    夫の暴力により家庭崩壊寸前の徹夫と真理子。かつての天才少年克也はリストラの対象になり、カリスマ予備校講師だった淳子の人気は翳っていた。
    あのころの未来はバラ色ではなかったのか?

    もう、読み進むのが辛くて辛くて。
    ねっとりと絡みつくような負の感情。
    自分で立とうとせずにもたれ合う。
    問題を先送りし、ダメだと思ったら逃げ出す。

    確かに40歳って、仕事でも家庭でも行き詰ったりする時期かもしれない。
    だけど40歳って、人生のトワイライトか?

    21世紀になったばかりの、バブルがはじけて沈んでいくばかりだったあの時代。
    誰にも等しく転機はおとずれたはずだ。
    だけど、彼らの落ちっぷりはどう?

    闘病中の杉本と、変わらない浩平以外の4人はうじうじぐるぐる悩み続ける。
    ああ辛い。
    鬱陶しい。
    読むの止めたいけど、読み始めちゃったしなあ。

    特に真理子はひどい。
    自分しか見えないから平気で他人を降りまわすし、おいて行かれている子どもたちの気持ちも考えない。
    最後の彼女の心の動きは、正直よくわからない。
    ストーリーの都合としか思えなかった。

    ただ、淳子は、いい。
    選ばなかったもうひとつの道に、戻れたかもしれないのはいつまでだったのか?
    そんなことくらいは誰でも考えるだろう。
    負けないようにまっすぐ立つだけではなく、自分をいたわることを覚えた淳子はこの先も自分らしく生きていけると思った。

  • タイムカプセルを掘り出すため、26年ぶりに再会した小学校の同級生たち。
    かつての少年少女も大人になり、おじさんおばさんになり、責任を持ち、親になっている者も多い。
    それぞれの抱える問題、家庭内暴力やリストラ。いくら取り繕っても、見えてくるお互いの事情。
    すがれるほど美しい過去じゃない。泣き言を聞いてくれる友人だっていない。
    泣きたい大人たちの夏の始まり。

    ----------------------

    若さの代わりに多くのものを得て、色んなことを忘れて、大人になる。だれだってそうなんだけど、そこにセンチメンタルな感情を持たずにはいられない。

    一期一会とか奇跡とか、いくらでも綺麗な言葉で表せる。友人たちとの繋がり。たとえ何年も何十年も会わなくても、お互いのことを覚えていえばそれでいいような、そんな繋がりの友人たち。いつか彼らに再会できるように生きてるような気がする。感傷的だけど本当にそう思う。

    七月の三連休。子どもたちが夏休みに入る直前に始まる大人たちの物語。ちょうどまったく同じ日に読みだすことが出来た。奇跡なんて言葉をつかうのは申し訳ないような偶然。登場する大人たちがスタートの準備をするところで物語は終わる。おじさんになってもまた始められる。おばさんになってもまた誰かを想うことが出来る。
    ちょっと出来過ぎた話のような気もしたけど、夕暮れを眺めるような気分で読むことが出来た。
    偶然の出会いを楽しみに、またこうやって本を読む。

  • 太陽の塔が好きなので、表紙に惹かれて。
    感動、ともなんとも言い難い読後感でした。
    どうしても徹夫が酔って妻を殴ったりすることに関して最後まで謝罪の描写がなかったのがひっかかって評価が低くなってしまった。

  • ちょっと20代では読むのが早かった気がする、、
    主人公と同じ年齢になったら沁みるのか、いや沁みない方が良いのかも

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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