クチュクチュバーン (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.34
  • (15)
  • (19)
  • (39)
  • (6)
  • (7)
本棚登録 : 237
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679477

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「クチュクチュバーン」「国営巨大浴場の午後」「人間離れ」の三作を収録しています。

    「クチュクチュバーン」は、人びとが異形へとすがたを変えていく世界のなかで、生きる意味を求めるなどということがまったくうしなわれてしまった状況をえがいています。他の二作も同様の趣向で、「国営巨大浴場の午後」ではナッパン星人の襲来以後の世界がえがかれ、「人間離れ」は緑と藍色の奇妙な生物が人間たちを襲うなかで「人間離れ」を試みて助かろうとする人びとがおこなう「直腸出し」などの奇妙なふるまいをえがいています。

    「解説」を担当している椹木野衣は、「クチュクチュバーン」に登場するシマウマ男が体現している「見る」ことを、本作の重要なモティーフとしてとりあげています。こうした見かたに悪乗りしていえば、世界がその法則性を崩壊させてしまったなかで、なんらかの理論的背景にもとづいておこなわれるはずの「見る」ことが、もはや実践的なふるまいと見分けがつかなくなってしまうような臨界点を示しているところに、本作のひとつの読みかたを見いだすこともできるのではないかと思います。

  • 『クチュクチュバーン』
    退廃した世界。人々の身体は異形のものに変わり、みんな合体していく。

    『国営巨大浴場の午後』
    退廃した世界。ナッパン星人に襲われて誰もが狂ってしまった。「こっこっ」

    『人間離れ』
    退廃した世界。全裸の人々は緑に襲われそうになると自ら直腸を引っ張り出す。

    ---------------------------------------

    3つの話すべてが退廃した世界の話だとは思わなかった。
    朝昼晩の食事がぜんぶニンニクラーメンだったような気分。

    下品。グロテスク。ありえないほど汚い。けれども目が離せない。それどころか凝視してしまう。
    直腸を自力でほじくり出すことで襲われないようにした人々が次々に死んでいく描写を読みながらどんな感情を持つのが正解なんだろう。きたねえ話だけど思わず見ちゃうんだよな、という気持ちで読んだけど、これでいいのだろうか。

  • 【本の内容】
    ある日突然、世界のすべてが変わる。

    蜘蛛女、巨女、シマウマ男に犬人間…地球規模で新たな「進化」が始まる。

    究極のグローバリゼーション?

    新しい人類の始まり?

    「巨大な塊がクチュクチュと身をよじらせて、バーンと爆発する」。

    小説界を震撼させた、芥川賞作家、驚異の文学界新人賞受賞作。

    単行本未収録作品併録。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    表題作は、あらゆるモノと人間が同化していき、異形の人間というより化け物で溢れた世界で、人々が愛し合い、憎しみ合い、散々に殺し合う。

    蜘蛛女にシマウマ男、巨女、犬人間、これは進化なのか?

    到底受け入れたくないような、異常な光景。

    もうやめて欲しいくらいなのに、なぜか吸い寄せられ、あっという間に読了。

    それから、何が起きたのかもう一度確認するように、二回目はもう少し落ち着いて読んでみた。

    じっくりと読んでも、未来にこんなことが起きたら、という恐怖は全く沸いてこない。

    読む前はクチュクチュバーン?

    何それ?

    だったのが、読了後は、私たちがいる世界で、他者、情報、開発などと遠い距離感を感じた時の虚無感と、クチュクチュという音が、私の頭の中でもやもやと同化してくる。

    このまま行ったら世界はバーンなのかな、等とぼんやり考えが浮かんだ時、著者の想像力が紙の上で今繰り広げている、クチュクチュバーンという世界に、初めてぞっと恐怖が沸いてきた。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 発想の豊かさに乾杯!納められた作品は必ずしも快適ではないが、力強く響くものがある。

  • 「ボラード病」で開眼し、「ハリガネムシ」で病みつきになったこの作者。
    もとから「ボラード病」に潜む、畸形や変形や集団への違和などがあった、ことが本書でまざまざとわかった。
    それが原発事故を経てああいう形で噴出したのだ。

    さて本書は、はっきりいってぐっちゃぐちゃ。
    漫画や映像から影響を受けた趣味や衝動がぶち込まれたごたまぜの鍋。
    僕は大好きなのだけれど、どうして新人賞を獲れたのかが理解できない。
    むしろ「ハリガネムシ」は(藤沢周に寄せて)芥川賞を狙っていったのだとわかる。

    でも、いいね。

  • うーん、すごい世界観w
    エログロが耐えられるなら一度読んでみてもいいと思う。
    発想は小学生みたいで、舞台も構成もそういう鼻で笑ってしまうような物。だから、この作品は設定とかは気にせず読むべき。

    自分が感じたのは圧倒的無力感。
    これを読み終わったのが大地震の後だったので、そうした自然災害に対してあまりにも無力である人間という生物がいつもよりさらに惨めに思えるように思えた。
    読んでいると洗脳されているかのように作品の世界に吸い込まれ、少し淀んだ薄暗い雰囲気になれるのでそういう気持ちを体験してみ買ったら読んでみてもよいと思います。

  • 081009(n 090103)

  • トラウマになりかけた、ある意味ホラーとしては逸品。<br>
    コレを読んで『純文学』の定義が分からなくなりました。<br>
    <br>
    実は母と妹は吉村萬一先生ご本人と面識アリ。<br>
    頭のバンダナを取ると地球が爆発するんだとか。。。

  • 好き嫌いがはっきり分かれそうな作品。
    これでもかってくらいバイオレンスですが、ぶっとんでるんである意味爽やか。
    宇宙の何を信じればいいのかわからなくなる、素敵なおはなし。

  • クチュクチュっとして、バーン!!

著者プロフィール

1961年愛媛県生まれ、大阪府育ち。1997年、「国営巨大浴場の午後」で京都大学新聞社新人文学賞受賞。2001年、『クチュクチュバーン』で文學界新人賞受賞。2003年、『ハリガネムシ』で芥川賞受賞。2016年、『臣女』で島清恋愛文学賞受賞。 最新作に『出来事』(鳥影社)。

「2020年 『ひび割れた日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉村萬壱の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×