子どもは判ってくれない (文春文庫 う 19-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679910

感想・レビュー・書評

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  • 内田さんの本は以前に「寝ながら学べる構造主義」という本を読んだことがありました。
    今回はエッセイ集。

    中々おもしろかったです。
    どこがどうおもしろかったのだ、とせっかく感想を述べる機会なんだからしっかりと書きたいところなんですが、なかなか難しい。
    「この本は要するにこういうことを言っている」というようなやり方で、物事を簡単にまとめ断定してしまうのはあまりよくないよ。というのが内田さんの主張したいところであるようです。


    話をあえて複雑にする方が実は話が早い。これは面白い指摘です。
    話を複雑にするというのは、対立的主張を含んだ議論を、「自分の主張は間違っている可能性がある」ことを念頭に、妥協点を探っていくということであり、「正論」を主張しあう非生産的な議論よりも、よっぽど知的に高度な営みだからである。


    あと、はっとしたのは格差とか自由競争社会なんかについての指摘。
    「自由競争から生まれるのは『生き方の違い』ではなく、『同じ生き方の格差の違い』だけである」例えば、全員が「金欲しい」と思っていて、「金持ち」と「貧乏」の間に差別的な格差のある社会。これでは、生き方の多様性が確保された社会ではない。(多くの自由競争推進論は自由競争が個人の行き方の多様性を担保することを主張する)
    確かに。自分が格差社会などに関する議論を目にしたときに感じていた違和感の出所がわかった気がする。

    ・・・なんとなく「正しそうな」物を目にして、分かった気になっている、というまさに自分のいまの状況こそ、内田さんが警鐘を鳴らす「大人的」でない人に陥る可能性を持ってそうなのが怖いですね。

    なんだかまとまりのないレビューになりましたが。
    メッセージを発信する、という行為において、配慮されるべきことはメッセージが「正しいこと」よりもむしろ、「聞き手に届く」ことである、ということを語り、現在の情報社会に蔓延する「病」を指摘する、「たいへんに長いまえがき」だけのためにでも読む価値ありの一冊です。

  • やっぱりおもしろい内田樹。

    多様な価値観の選択が可能になっているのに、
    構造や制度がそれに追いついていない。
    同一特徴集団の中での帰属感によるアイデンティティ確立。
    他の価値観を排除してしまうから、コミュニティを離れるとアイデンティティを失うんだ。
    大事なのは「弱い敵」つまり自分とは異なる他者を認めること。

    「『愛している』は私の中にすでに存在するある種の感情を形容する言葉ではなくて、その言葉を口にするまではそこになかったものを創造する言葉」
    「大切なのは『言葉そのものが聞き手に届いてそこから何か始まる』こと。論理的で首尾一貫していることよりも」
    「市民として正しいく振舞うというのは、ほとんどの場合『不快』に耐えるということ。私人としては不愉快でも、市民としてはその矛盾に耐えなくてはならない」
    「排他性が彼らの共生感を担保している」
    「マンガの中には、ある時代に固有なもの、言い換えれば、その時代が過ぎてしまうと消えてしまい、別の時代の読者に含意が通じないものは書き込んでいけない。という不文律があった。それが江口寿士によって崩れた」
    「自らの位置を知るために、もっぱら、同学齢集団を参照にし、年齢が上下に離れている人々は『競争』の対象として意識されない。=偏差値」
    「人間の多面的な活動を統合する単一で中枢的な自我がなくてはすまされないという考えが支配的になったのは、ごく最近のこと。内面とかほんとうの私とかというのは近代的な概念である」
    「魔が差した というのは潜在的欲望を、本人の同意のもとで顕在化させただけ」
    「自分の考え方で考えるのを停止させて、他人の考え方に想像的に同調することのできる能力、これを論理性と呼ぶ」
    「ある時間のためにいくら時間を割いて、どれほどエネルギーを注いでも、まったく苦にならないで、それに従事している時間がすみずみまで発見と歓喜に満たされているような活動が自分にとってなんであるかを知っていて、それをためらわず選び取る人間が才能のある人間」
    「有用な幻想は役に立つ」
    「」「」「」「」

  • 「節度のなさ」か。
    いい言葉ですね。
    「一緒にいて疲れる人」っています。
    なぜ疲れるかって、本人に
    直接言っても届かないんですね。
    (この間実際に伝えてみたけど)
    「呪いのコミュニケーション」という
    題で書かれています。

  • 目からウロコ!!

  • 特にこの本の面白さは。

  • おもしろい。
    私の頭でわかるように書いてくれてる。
    ときどきわからないけれど。

  • 準備中

  • 人の指す将棋を見てると大局が良くわかったりする。
    もしくは、
    全身鏡を持つと服のセンスがちょっと良くなるって言われてる(ほんまかいな)
    全体のバランスが分かるのかもしれない。
    この本も同様。
    物事を当事者であっても俯瞰的に見てるような、そんな視線を感じる。

    あとがきにも書かれているが、この本である問題がクリアーになるわけではない。
    「問題なり、周りの環境なり、モヤモヤしたものはそのままモヤモヤしててもいいんじゃないか」
    という見方は、ずいぶん私を楽にしてくれた。

    話を複雑なままにしておく方が、話を簡単にするより「話が早い」

    これに尽きますよ。

    若者向けに書かれた「大人の思考とは」って本らしいが、世間からは大人と見られる私でも大変勉強?励み?になりました。
    ハイ。

  • 購入:2008/5/24、読了:2008/7/19

  • 以前読んでた本で理解できなかったことがあり, もやもやとした気分が続いていたが, この本を読んでその理由が分かった.
    それは, 本というのは著者と同じ意見を持つ読者だけを対象としているから.

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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