猛スピードで母は (文春文庫 な 47-1)

著者 :
  • 文藝春秋
3.53
  • (111)
  • (266)
  • (398)
  • (31)
  • (12)
本棚登録 : 2180
感想 : 284
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167693015

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 約10年ぶりの再読。
    自転車のサドルが盗まれたら隣の自転車のサドルをとって使うと即答する父の愛人洋子さんと、ためらわずに男子トイレに入るような母、どちらも非常識といえばそうなのだが、豪快で芯があってかっこいい。

    洋子さんと薫は友達宣言していたし、慎は慎一さんのことを徐々に受け入れていたのに、突然別れはやってくる。どちらも大人の都合で付き合わされ、大人の都合で会うことができなくなる。大人って勝手。

    『猛スピードで母は』は母の愛を感じた。猛スピードな母の愛!母が最後キレながらはしごをのぼっていくシーンは愛そのもの。
    憧れのワーゲンを抜いて先頭を爆走する母は、母の生き方が表れてる様でおもしろい。
    慎一さんは母と別れてひと月程(夏休みの旅行後に別れて、9月に病院で会った時に結婚宣言してるから、読み間違えじゃないよね!?)で別の人と婚約していてなんて奴だという感じ。学校の先生は片親の家庭環境を細かく気遣うくらいだから、いじめにも気が付いてくれよと思う。

  • 表題作と「サイドカーに犬」2篇収録。両方ともキャッチーなタイトルで知ってたけど読んでなんだわー。最近のもんも読んでみよかしらんと巻末まで来て、にじう年前てっ!自分の最近どないなってんねん問題はさておき、小学生のひと夏の体験ものが好きなのでサイドカーに軍配。

  • 国立が出てきて驚く。
    この人の本に出てくる人物の温度感がすき。
    国立の方に出てくる女の人がすてきでかっこよかった。
    渋谷のコーヒー屋さんの外で読む。

  • 借り物。
    コインロッカー・ベイビーズが途中だったけれど、そちらがかなり重く、心身が疲れきっていたので、こちらを読んでみた。

    短編が2つ。軽くて穏やかな文章。こういう大人でいいんだよと思った。

  • 「サイドカーに犬」の洋子さんは強かで恰好良い人だと思った。音もなくひとりで泣く所、すぐに泣き止んで散歩に行く所、私と接する時も無邪気でいる所が魅力的に感じた。
    粛々と物語は進んでいくけれど、軽さはなく、きちんと心に入ってくる感覚。

  • 登場人物の少なさが気に入った。無駄がない。中編二つ。デビュー作の「サイドカーに犬」と、芥川賞受賞作の表題作。どちらもタイトルがすごくいい。センスの良さを感じる。ブルボン小林名義のコラムはよく読んでいたが、長嶋有の本は初めて。

  • 「サイドカーに犬」と「猛スピードで母は」の2話編成。

    サイドカーに犬:小学校四年生の女の子と母親が家出中に急に転がり込んできた父親の愛人との友情物語。設定とは裏腹に二人の関係がとても爽快に描かれていて、物語に吸い込まれるような感じ。周りを巻き込んでく強さを持っていてどこか憧れる愛人の人物像が印象的。映画では竹内結子が演じてるそうですね。

    猛スピードで母は:シングルマザーの母親と小学5年生の息子との、依存から自立への過程をを描いた物語。この作品も母親の人物像が印象的。一見強引で自分中心に物事を進めるものの行動の裏にどこか表には出ない愛情が潜んでることが感じられます。だからこそ息子が異様になついてる。結末が明確に描かれていなくてフェイドアウトしてく感じがとても心地いいです。

    さすが芥川賞受賞作。なんか勝手に両作の主事項の人柄に憧れさせられます。とてもお勧めです。

  • ◯サイドカーに犬
    子供ながらに親の入れ替わりを不思議と思うことなくなんとなく受け入れてそれなりに親しんでいく。不器用ながらもしっかりと私に愛情を注いでいる洋子さん。感受性豊かで雑なところがある分、子供としてみられがちなだけど、今でも私はある意味尊敬していて、逆に自分に情けなさを感じる。キレイに生きるのではなく、がむしゃらに大切な人のことを大切と言える人、何事にも全力でぶつかれる人を「大人」と感じている私。ラストの私もそろそろかなぁのところは、そういう意味だと感じた。

  • 表題作+サイドカーに犬
    サイドカー乗ってみたいな。
    語り手(どっちも子ども)が淡々としてて鈍くてその温度感が読んでて心地よかった。

  • 大人の事情に巻き込まれながら淡々と暮らす2組の子どもの視点から描かれた物語。色々感じながらも大人に全てを聞くことはできず、恨むこともなく受け入れようとする複雑な心理描写が素晴らしい。1話目の洋子さん、2話目の母、どちらも子どもを大人のように扱い、自らも意思を持って人生を歩む姿がかっこいい。

全284件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長嶋有の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×