物乞う仏陀 (文春文庫 い 73-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717919

感想・レビュー・書評

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  • 一度には読めずなんどか読んだりやめたり。読後感が悪くないのが不思議。

  • 著者が東南アジアから南アジアにかけての国々でホームレスのような障害者と出会ってのルポ。先天的な身体障害者、知的障害者もいれば、稼ぐために手足を切断されたような子どもたちも出てくる。子どもたちの手足をほんのいっとき稼がせるために奪い、使い捨てのように扱うようなことがこの世の中で起こっている不条理。「物乞う仏陀」という美しいタイトルとしっかり練られた文章と構成にぐんぐん読んでいけるのだが、それだけにちょっとあざといような感触も。
    何かというと売春したりスケベ話をすることで男どうし渡りをつけていくのって、それが真実なんだろうけど嫌悪感。実際そうなんだからしょうがないじゃん的にしっかり利用している感じが嫌だ。しかもこの本、障害者のことは気の毒だ何だといっておきながら、買われる女性には無頓着なんだもの。そういうところにもあざとさを感じるのだろうな。 
    この本に限らずなんだけど、読みながらふと思ったので書いておくと、最近の世界放浪ルポって著者の言葉が陳腐だし感じがするんだよね。どこかで聞いた、誰かも同じようなこと言ってるって印象。たとえば、「無論、このような利用する利用されるといった構図は肯定されるべきものではない。しかし、それによって絶望と悲嘆に暮れる者もいれば、喜ぶ者もいる。あらゆる人間がひしめき合っている。それが都市の姿、バンコクの真の姿なのではないだろうか。」(p.125)みたいな感じ。「だろうか」って、ふんわりと保険をかけて言い切らないのも何だかね……。

  • 世界の物乞いと障害者。貧困層にとって、障害者が産まれるとだいたい更に貧困になり、生活が苦しくなる。なかなか海外の障害者にスポットを当てている本に出会ったことがなかったので、知らないことばかりだったが、情景が浮かぶとなんだか辛くなってくる。
    カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、スリランカ、ネパール、インド。
    インドはずば抜けてエグい。赤子をさらい、レンタルチャイルドとして乞食に貸し出し、5才になって使えなくなったら、手足を切断し、物乞いさせる。マフィアももともとストリートチルドレンや、さらわれた過去を持ち、加害者であるが被害者でもあり、どうしようもない。どうしようもできない事実、現実に筆者も苦しむ。読んでいる方も苦しい。
    自分の想像を超える現実があるが、どうしようもできない。大抵の人はどうしようもしない。

    そして、どこにでもいる娼婦…。

  • 石井光太さんの本をあれこれ読んだので、最初に発行した本に手をつけた。
    やはり日本で暮らしていては想像もできない暮らし……。あまりにも衝撃的すぎる。
    そして日本にいても忘れがちだが、当然障害者はどこの国でもいる。
    厳しい世界で医療に頼ることもできない国での障害者は、本当に生きていけるのかと思う。だからこそ著者は調べにいったんだけど。
    身体的にある障害で同情を得ることによって物乞いで稼げるお金は、健常者とあまり変わらないことにも驚き。
    物乞いしかできない国なのはわかるけど、物乞いでお金をだす人がいるってことだ。
    どんな人がお金をだすのだろう?裕福な人たち?旅行者?物乞い同然の人が物乞いにお金を出すのでは?
    むしろ豊かな日本のほうが物乞いしてもお金は得られないのではないか。

    赤ちゃんのころに誘拐されて5歳まではレンタルチャイルド、それ以降は腕や足を切断されたり目をつぶされたあと障害者の物乞いになるなんてとても信じられない話だ。もちろん女性は娼婦へ。
    貧困な国ってここまで悲劇が当たり前なのか…。

    一番気になったのは、麻薬中毒者と仲良くなるために、著者がマリファナやハッシシを吸うところ。どっちも大麻だよね。知識ないので想像だけどまだ安心(というのも変だけど)な麻薬なのか?(タバコも麻薬みたいなもんだよね)身体は大丈夫なのかと心配。もちろん大丈夫な範囲で納めているんだと思うけど。
    私「異国の障害者を調べて本で稼いでいる」とは思えない。危険も多いし…。興味本位なのはあるだろうけどそれがあるからこそこうして踏み込めるのではないかと思う。興味本位だったらいけないのだろうか?本にすると日本に現実を知らせることができるし、売れればお金がはいってくるのは当然のことだ。
    まだまだ若い著者なので、これからも頑張ってほしいな。

  • 衝撃でした。20年前の事だけど、今はどうなっているのかな?
    貧富の差は、益々広がっていて、日本もそんな風にならないようにしないと。

  • 内容
    アジアの路上で物乞う人々と触れ合い、語り合ってみたい―。そんな思いを胸に、著者の物乞いや障害者を訪ねる旅が始まる。カンボジアの地雷障害者やタイの盲目の歌手、ネパールの麻薬売人らと共に暮らし、インドでは幼児を誘拐して物乞いをさせるマフィア組織に潜入する。アジアの最深部に分け入った衝撃のノンフィクション。

  • 2008-00-00

  • 本当にこれは現実のこのなのか疑ってしまうような内容。特に最後のインドの話は、マフィア物のフィクションを読んでいると思い込みたくなるような内容だ。しかし、そんな現実も実際にあるのだということ。自分が生きているこの時代に場所を変えれば、日本でだってそのような非情なことは沢山あるのだろう。それを知ったところで私がなにを出来るわけではない。しかし、知らないで良いということにはならない。
    知ったからと言ってどうにもできない、、、。う〜ん堂々巡り。

  • 凄まじい実情。
    東南アジアやインドに行ってみたいなと軽い気持ちで考えていたが、こういう面があることを知ると、怖いです。
    人間って自分が生きるためにどこまで他人に対して残酷になれるんだろう。

  • 小説のようでもある。詩のようでさえある。しかしこれはノンフィクションである。題名の『物乞う仏陀』が示す独特な世界観を以って貧困の世界を描く。

    衝撃度でいえば「第8章 インド」がもっとも貧困の闇を描いている。しかし他の章にもぜひ注目したい。「第1章 カンボジア」はさながら「羅生門」のような雰囲気を持つ。「第7章 ネパール」のザグリと少女の話は呪術の持つ「現実的な」効用とともに希望を感じさせる。

    特に私は「第5章 ミャンマー」が印象的だった。老婆の感情が瓦解する場面は胸が締め付けられる。現世を否定されることはいまの自分を否定することになる。だから輪廻転生の来世を信じる老婆。やりきれなさを感じずにはいられない。

    ときには生命の危険を冒しながらも貧困社会へ入り込み、自然な目線で人々を捉える石井氏。彼を突き動かすものはなにか。慈善心とは違う。好奇心だけでは語れない。使命感という言葉がもっもとしっくりあてはまる。良し悪しではなく「知らなくては」と「伝えなくては」という思い。

    多かれ少なかれ我々は差別や偏見を持つ。過度な拒絶と同様、過度な優しいも差別であり偏見である。文章はその要素、つまり視覚や嗅覚、触覚を徹底的に排除する。文字のみを通して素直に自分自身の感情と向き合うことができる。貧困を描くことに対する賛否両論はあるだろうが、その成果は大きい。

著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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