ビッグ・ドライバー (文春文庫 キ 2-39)

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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167812188

作品紹介・あらすじ

息つくひま一瞬もなし! 巨匠の最新作品集突然の凶行に襲われた女性作家の凄絶な復讐――表題作と、長年連れ添った夫が殺人鬼だと知った女性の恐怖を描く中編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「1922」と同じ原著の後半で、同様に2つの長い中編小説が入っている。
    気になったのは、どちらも主人公が情報収集する際、パソコンでインターネット検索をするところ。グーグルとか、グーグルアースとか、Firefoxとか、なじみ深い名前がそのまんま出てくる。キングはもともと、アメリカ人の日常生活を極めて具体的に描くから、野球選手や歌手、車の名前なども頻繁に出てきた。それと同じ流儀で、今度はいよいよパソコン活用の日常が、流れ込んできたのである。
    もうひとつ、キングが描出する危機的状況は、まず「孤独」の輪郭が強調されるという点。まるで他者たちと隔てる四方の壁に囲まれて、そこに当然帰還するとでもいうように、主人公らは「孤独」に戻ってくる。そして、つぶやく。このへんが、現代人の状況を適切に描写していると思った。
    この本の2編とも、他者との隔絶がまずあって、主人公は「孤独」のなかに舞い戻る。個室でインターネット検索をすることが、とりあえず彼女らの「やるべきこと」である。壁の向こうの他者は恐怖の対象である。だから個室が必要であり、個室に戻らなければならない。
    その意味で、はじめから典型的現代人は「地下生活者」なのである。「地下生活者」の無力感、救済不能性を、この2つの小説は暗示している。

  • 「モダン・ホラーの帝王」スティーヴン・キングによる、2010年刊行の中編集"Full Dark, No Stars"から、既刊の「1922」に続く邦訳集。「1922」同様に”暗く容赦ない”2篇を収録。奇しくも、「1922」収録の2篇は男性が主人公だったのに対し、こちらは2篇とも、平穏な日常生活の中から突如恐怖と苦痛に見舞われた女性を軸に描かれている。

    詳しくはこちらに。
    http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2014-07-17

  • 理不尽に強姦された女性作家の復讐劇と、長年連れ添った夫が殺人鬼だと知った妻の恐怖劇の2編を描く、キングにしては珍しい超自然現象なしのクライム物。物語の進行が散漫で筋を追いにくいと思うのよねー…

  • 平凡な日常が瞬く間に転落する恐怖。それに遭遇したときにどう行動するかが人の本質を表すのだろう。面白かった。

  • 「ビッグドライバー」「素晴らしき結婚生活」の2中編収録。どちらも女性が究極の状態に置かれ、悩みに悩んだ末にある行動に出る。同じ女性として自分ならどうするか。「ビッグ~」の主人公ならこの選択はないが、「素晴らしき~」の主人公なら有りだろう。

  • ナオミ・ワッツ主演で映画化希望!しかし、今更ながらいろんな意味で銃社会アメリカは恐ろしいなぁ…。

  • 2013年9月11日読了。「恐怖の四季(スタンド・バイ・ミー)」「午前4時を過ぎて」に続く、キングの3冊目の中編小説集。既読の「1922」とセットになっており、あちらの主人公が男性なのに対してこちらの2篇は主人公が女性。田舎道でレイプ犯に拉致され辛くも逃れた女流作家・テスの復讐を描く表題作と、30年近く連れ添った夫が殺人鬼であることを知った妻の葛藤を描く「素晴らしき結婚生活」の2篇を収録。裏表紙のあらすじを読むだけで滅滅とした気分になるが、それでも先が一気に読まされてしまうストーリーテリング力はさすが!私が読んだ近年のキング作品の中では最も「面白かった(語弊のある表現だが)」。どちらも異常な環境とはいえ、現実に起こりうる脅威・シチュエーションについて描いており、テスの内部や夫ボブが隠し持っていた「狂気」の表現にはキングならではの書き込みを感じるが、ストーリーも「急転直下」というより、もし・現実でこのような事件に人が巻き込まれたとしても、このように対応するしかないのではなかろうか・・・と思わされる。それでいてどちらのお話もラストではちょっとホッとさせられるのが巧いところ。

  • 不愉快になる系のキング。

  •  「ビック・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の2本の短編。
     分冊された「1922」の片割れ。

     「1922」がとことん救いがなかったのに対して、こっちは救いと言えないにしろ、真っ暗ではない。
     が、やっぱ、後味が悪いんだよね。そこがキングたるゆえんなんだろうけど。

     2作とも、帯にあるように「日常が引き裂かれ、」た女性の話になる。彼女たちは「圧倒的恐怖」からもがき立ちあがろうとうする。
     
     と、書くと称賛される行動のように思えるのだが…。

     彼女たちも結局は、怪物、だからなのだろうか。
     そう、善良なおびえる被害者であると見せかけて、彼女たちは決してそうではない。それは彼女たちが行動を起こしたからというわけではない。
     いや、その行動の根底にあるのは強烈な<自己保身>だからなのではないだろうか。

     きっと、同じ話を他の作家が書くと、彼女たちは戦うヒロインとして描かれるのだろう。
     キングだって、一応そんな風に描いている。
     が、それは所詮<エゴ>なのだと、キングはページの向こうでうすら笑ってるそんな気がした。






     にしても、なんで毎度分冊しちゃうんだろうな。
     「ランゴリアーズ」&「図書館警察」はやたらゴツかったので仕方ないなって思ったんだけど、コレと「1922」なら分けなくても、と思うんだが。
     分けない方が原題「FULL DARK,NO STARS」が染みてきたと思うんだけどな。

  • 妄想がまざっているとはいえスーパーナチュラルじゃないから不愉快さが際立つ。上手い。この手のはなしは家で読みたくない。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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