- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167853013
作品紹介・あらすじ
部屋に戻ると、見知らぬ犬が死んでいた-。「僕」は大きな犬の死体を自転車のカゴに詰め込み、犬を捨てる場所を求めて夜の街をさまよい歩く(「世界の果て」)。奇妙な状況におかれた、どこか「まともでない」人たち。彼らは自分自身の歪みと、どのように付き合っていくのか。ほの暗いユーモアも交えた、著者初の短篇集。
感想・レビュー・書評
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実はブクロクに登録していない(2013年以降の本しか登録してません)本でして、新刊と間違えて購入してしまいましたσ(^_^;)
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作者初の短篇集。全五篇の全てが不条理もので、自分には合わなかった。
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今作までの中長編は全て読んで、ドストエフスキーの影響が大きいと強く感じながら、どんどん進化してきていたが、初の短編集は、より強くカフカ、ドストエフスキー時には安部工房を連想させられた。全て実験的で暗い作品で、読みやすいとは言い難いが、読んだ直後に、また読み返したい気持ちにはなった。特に表題作「世界の果て」は5つの短編の連作になっていて、互いに微妙に関連性もあるので、読み返すときっと新しい発見があると思った。
最後に中村文則さん自身の解説になっていて、作品へのヒントや背景が書かれていてとてもありがたい。 -
この作者はどういう作家から影響を受けたのか、それとも受けていないのか。初めてなので何の情報もないまま読んでみました。
ネットの書評だったかで、中村文則さんについて「この作者の小説は、ストーリーは面白くないが純文学として成り立つという、現代では稀有な読み物だ」みたいなことが書かれているのを読んだことがあったのだけど、実際読んでみて頷いた。
支離滅裂で奇妙な夢というのは誰でも見たことがあると思うけれど、そういう夢を人に話すのは骨の折れることだし、何の補足も感情の表現もないままだと、話された相手は「何のこと話してるの?」となると思う。
この小説はまさしく、そういった感じで誰かの夢の話をされているような感覚の読み物。という印象を私は受けた。作者の複雑な頭の中、なのだろうか。
「これはもしかして、こういうことのメタファーになっているのか?」と思い当たるところはあったけれど、それが当たってるのかどうかも謎のまま。
そういうのは自分の中だけで解釈して楽しむのが正解だとは思うけど、謎解きしてほしい気持ちも多少ある。笑
中村さんの小説のこと、ピースの又吉直樹がめちゃくちゃ推してた記憶があるのだけど、読んでみて何か勝手に納得した。
短篇集じゃなく長編の小説を読んでみればまた違う印象を持つのかもしれない。
ちょっとした“おかしみ”もあっていちばん読みやすく感じたのは「ゴミ屋敷」というお話。
個人的には、安部公房やカポーティと似たところに位置する作家、という感じ。
けどそれよりさらに暗いかな。
好みはかなり分かれそうだけど、私は好きなほうです。 -
初期中村文則らしく、陰鬱などこまでも憂鬱な作品群となっております。
表題作「世界の果て」は一番重厚さを醸し出しており、それぞれの登場人物の世の中への諦観、馴染めなさ、孤独感が湧き上がってきてる。自分の感情も侵食されてるようで、読み進める辛さを感じてしまう。特に、高校生の主人公が包丁を隠し持って小学校に向かう心情描写なんて、混沌としているけど何故か同調する部分もある不思議な魅力がある。
そんな中で個人的No.1は「ゴミ屋敷」。
コミカルさを初めて表現した作品と著者あとがきで語っているけど、中村文則のこういったブラックユーモアがツボなのです。パワーワードも飛び出してくるし、市役所の事なかれ主義を揶揄してるのだろう登場人物もなんとも愛おしい。
久しぶりに中村文則ワールドを堪能しました。少しご無沙汰してる間に作品が増えてるので、適宜追っかけていこうと改めて決意です。 -
5作からなる短編集。
私はいつも中村さんの文を上手く掴めない。書いてある言葉自体は何も難しくないのに、どうしてだろう。起承転結で作られていないからだろうか。ずっとゆらゆらともやもやとする、そんな本だった。しかし解説を読んでなるほどな、とも思った。確かにハッピーエンドの小説だらけも面白くない。時にはとことん暗く、とんでもなく重い小説に触れることも大事なのかもしれない。
表題作は割と読みやすく、一気読み。
因みにどの作品も救いやゴールはない。 -
表題作の世界の果てが好きだと思った。特に主人公が混乱し、破壊衝動を持ち、叫び、硝子やコンクリートを殴り、殺人未遂を犯す。どこにも到達できない怒りや憎しみや倦怠感に屈してしまう。その先に何があるだろう、彼はまたおそらく犯罪をするだろう。そのリアリティがたまらない
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だいぶキテる短編が5つ。イカれ指数MAX。
さながら狂気の世界に落ちている人々オールスター戦といった雰囲気。
内向的にのめり込む思念が閾値を超えてしまったとき、人はあっちの世界にいってしまう。
読者にはそのタイミングが明確に認識できない。いつの間にかあっちの世界に連れていかれたような感覚。
中村文則の描写はそこが巧みなので、完全にクレイジーな人物でもまったく共感できないわけじゃないように思えてしまうのである。 -
中村文則さん初めての短編集。
暗い夢の中を手探りで進むような読書体験。
「ゴミ屋敷」、とても好き。
世界の果て、というよりは世界の終わり、といいたくなるような陰鬱な暗さ。
だけどそれは終わりではない。果てだけれど、続く。どれだけ暗くても、続いていかなければならない。
崖のふちに靴が並んでいる情景。
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これは中村さんの言葉のストック場なのか。いや、ゴミ箱なのか・・
もちろん、それは良い意味で。
いずれにしろ、
僕は始終心地よくその言葉の渦に身を任せていたように思います。
好きな作家さんは短編集こそ面白いのかもしれませんね。