- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167900175
作品紹介・あらすじ
この世はこんなにも美しく、残酷だ。感動の相聞歌2010年夏、乳がんで亡くなった歌人の河野裕子さん。出会い、結婚、子育て、発病、再発、そして死。先立つ妻と交わした愛の歌。
感想・レビュー・書評
-
じっくりと時間をかけて読ませて頂いた。永田さんと河野さんが出会ったころから、河野さんが亡くなるまでの時間を短歌とエッセイで追体験をさせて頂いた。その間に刺激を受けて僕もいくつか歌を詠んだ。だから読み終えるまで時間がかかったのだ。最後は涙が止まらなかった。
「手をのべてあなたとあなたに触れたときに息が足りないこの世の息が」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この間借りた「あの胸が…」を図書館に返却したときに借りてきた。後半の癌末期の闘病記録は読むのが辛かった。だけど素晴らしい夫婦、素晴らしい家族でした。歌のある暮らしは人生を倍以上に豊かにするな。うらやましい。
-
一度には読めない。特に後半は、泣けて泣けて読み続けていられないほど胸が痛くて何度も本を閉じてしまう。最後の歌の下句「息が足りないこの世の息が」挽歌の「てのひらが覚えてゐるよきみのてのひら」の生々しさと40年の月日に憧れすら覚えるのは、まだその年月を生きていないことと、連れ合う相手を持たない身ゆえ。
-
キャッチボールできる相手がいる幸せ
-
心に誠実であることのお手本のようなお二人
-
「たとえば君」という書名は、河野裕子の歌からとられている。歌の全体は下記の通りだ。
たとえば君 ガサッと落ち葉すくふように私をさらって行つてはくれないか
河野裕子と永田和宏は夫婦であり、2人ともが歌人である。2人は、学生時代に知り合い、付き合い始めたのであうが、河野にはその時に既に恋人がおり、その恋人と、新たに付き合うようになった永田の間で気持ちが揺らいでいた。そういった背景が、上記の歌にはある。
2人の出会いは1967年である。結婚は、1972年。以降、河野が乳がんの再発で亡くなる2010年まで添い遂げる。出会いから43年目のことである。
河野に乳がんが見つかり手術をしたのが2000年のことである。以降、8年間何もなく、河野も永田も緩解かと安心し始めた2008年に再発し、2010年に亡くなる。
再発が分かった後の歌が悲しい。
【河野の歌】
まぎれなく転移箇所は三つありいよいよ来ましたかと主治医に言へり
大泣きをしてゐるところへ帰りきてあなたは黙って背を撫でくるる
【永田の歌】
あなたにもわれにも時間は等分に残ってゐると疑はざりき
あつという間に過ぎた時間と人は言ふそれより短いこれからの時間
私自身も妻を乳がんで亡くしている。手術後の安定期を過ぎた後の再発という経緯もこのご夫婦と同じである。
そういう経験から、主に夫である永田の歌に感情移入しながら本書を読んでいたが、私の妻が河野のような気持ちで再発をこわがり、再発後の恐怖と闘っていたのかと思うと、あらためてたまらない気持ちになった。 -
たとへば君 ガザッと落ち葉すくふやうに
私をさらつて 行つてはくれぬか -
これほどまでにと思う家族、夫婦の歌。フィクションではないほんもののドラマ。
-
愛されること、愛することの全てを教えてくれる。