すみれ (文春文庫 あ 62-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903329

作品紹介・あらすじ

涙がおさえられない最後が待ち受ける十五歳のわたしの家にやってきた三十七歳のレミちゃん。作家を目指していたレミちゃんには「ふつうの人と違う」ところがあった……。

感想・レビュー・書評

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  • レミちゃんが危うくて魅力的だ。

    ちょっと「普通」じゃないレミちゃんだけど、藍子の両親も「普通」だろうか、と思ってしまった。「普通」は難しい。

    でも藍子の両親のレミちゃんをなんとかしてあげたいっていう気持ちは優しいなと思う。でも藍子が偶然とはいえレミちゃんに怪我をさせられて藍子を守るためにレミちゃんを追い出す気持ちもよく分かる。

    どっちの気持ちも本当だろう。白黒はっきりできないなと思う。

  • 著者初読み。かわいらしい物語風でいて全く違った。レミちゃんみたいなある意味純粋過ぎる人にはなれない。かと言って藍子のように素直に接することも、藍子の父母のようにいたわるように接することもできない。それが苦しくて読むのが辛かった。

  • また子どもの主人公の本で、感動した。
    子どもの考えるようなこと とされていること をわたしはよく考えているのかもしれない。

    へんなひととまっとうなひとがでてきた。
    お盆の帰りに電車で読み、泣きそうだった

  • いつからか私は大人になって、隣には大切な人がいて、当たり前の幸せが当たり前のように訪れるときが来るのだろうか...でもしっくり来なくて、ずっと独りぼっちで、大人の私の目には何も映っていないのではないか...そんなことを一人静かに考えていたのはいつまでだっただろうか。いつから考えなくなったのだろう。いつから私はもう大人になってしまったのだろう。いつから戻る場所も失くなって、いつからひとりで考えて、どんどん殻を重ねて、いくつにも繋がっていた糸が、気が付けばたった1本の線しか見えなくなっている。笑顔に着けすぎた飾りを全部脱ぎ捨てたら、少しだけ明かりが見える気がした。殻に重ねすぎた言葉を一枚ずつ剥がしていったら、最後に誰かへ届くような気がした。最後の線の反対側から、必死に私を呼ぶ光がさしている。

  • 心を打つ、という言葉はプラスイメージのある言葉だけど、私にとってはマイナスイメージで心を打たれた。ばーん。

    でも、私はレミちゃんが好きだ。

    きっと、沢山の読者が彼女を好きになるだろうなあと思う。
    二人ならば、一緒にいてもいいかな、と思う。
    けれど、「守るもの」が出来たときに彼女の存在は苦しいものになる。

    貴女だけが中心の世界に、私は入っていけないのだ、ときっと言ってしまうだろう。

    パパもママも藍子も。
    きっとそれぞれレミちゃんが好きなのだ。
    でも、三人ともに「守るもの」が確かにあるからこその結末なんだろうと思う。

    大人になれない大人なんて、本当はないのだ。
    それは彼女の、生きている、今があるだけ。
    子供っぽいとか、フツウじゃないとか、何かに例えたってどうにもならない今があるだけ。

    可哀想とか、心配とか、そんな言葉よりも彼女は確かに生きていくんだと思う。
    いつかを振り返って嘆くのではなく、ただ愚直に進むしか出来ない。

    小説を、そんな風に言わないでよ。

    レミちゃんの「守るもの」を、見つめてあげて欲しい作品。

  • 15歳の藍子の家に転がり込んできたのは、父と母の大学時代の友人で、37歳のレミちゃん。彼女は心の病を抱えていて、大人なのに大人になりきれない部分があった。

    藍子のレミちゃんを見る目はあたたかい。けれど、レミちゃんの「大人になりきれない」原因……世界に対する甘えになんとなく気付いてから、二人の関係は変わってしまう。
    誰だって、レミちゃんのように世界につまずいてしまう可能性はあるのに…。

    人と人との関わりにおいて、「あの時どうするべきだったのか」と悩むことは多いし、後悔は絶えない。その後悔の一粒が、この小説を読んだ後はレミちゃんの影とすこし重なる。
    レミちゃんは今、幸せに生きているのだろうか。

  • これから成長して大人になりつつある女の子と、
    大人になりきれずにいる女性の物語です。
    主人公は高校受験を控えた女の子。
    両親と居候を含めた4人で暮らしています。
    居候というのは両親の大学時代の友人です。
    学生の頃は輝くばかりに才能あふれる女性でしたが、
    メンタル不調を起こしてからは、
    定職に就くこともなく、
    世の中と少しばかり距離を置いて過ごしています。

    大人は成長して大人になるのではなく、
    成長しきれない部分もあるのに
    大人のふりをしていられるから、
    大人でいられるのかもしれません。

    いくつになっても素直でいられるのは良いことですが、
    素直さが必ずしも世のため人のためになるかといえば、
    そうとも言いきれないのが哀しいところではありますネ。
    大人だって子供だって、
    生きていくのはたいへんなんです。
    子供ままでいることは、
    もっともっとたいへんなんです。
    どうしようもあることを
    どうしようもないと自分に言い聞かせて、
    そんな醜い自分と向き合って
    生きていかなければなら頼ならない・・・
    それってすごく辛いことです。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 15歳の藍子の家に突然転がり込んできた不思議なおとなのレミちゃん。
    「ふつうじゃない」レミちゃんとの生活は、優しさ、温かさ、疎ましさ、不安、恐れ、様々な気持ちを生み出しながら過ぎていく。

    人にはそれぞれキャパがある。どこまで人に優しくできるか、人を許せるか、受け入れるか。
    自分のできる範囲の狭さに苦しむことは、きっと誰しもが感じることだと思う。
    人に優しくできなかったときの苦々しさや後ろめたさ、人に頼りたくないのに自分でもどうにもできない苦しさや不安、レミちゃんも藍子もきっと誰も悪くないけど、その罪悪感や苦しみに苛まれて辛くなってしまうんだろうな。
    繊細すぎるレミちゃんだけど、どこかでのびのびと生きていられますように。

  • レミちゃんはなぜ?
    謎だらけ

  • 痛い痛い。
    心が痛い。
    ジリジリ、ズキズキ、、、。
    レミちゃんのせい(笑)
    レミちゃんが、全部悪いわけじゃないけどレミちゃんのせい(笑)

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著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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