死神の浮力 (文春文庫 い 70-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 546
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906474

感想・レビュー・書評

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  • 実際は☆3.5。

    死神の精度、随分昔に読んで以来だったのでぼんやりとしか覚えていなかったのですが読み出して割とすぐに思い出しました。

    死神の千葉が担当するのは娘を殺された作家・山野辺。
    無罪判決が下った容疑者への復讐を、妻・美樹と共に目論んでいる。
    真面目に仕事をするタイプの千葉はその復讐に同行するー。

    「ガソリン生活」でも感じたのですが、伊坂氏の作品における登場人物の作り込みは、本当によく出来ていると思います。
    ずっとずっと存在していて、ずっとずっと仕事をしている千葉の経験や感覚、配慮の仕方や、一方で配慮できないところ。
    そういった所に矛盾がない。
    すごい想像力と描写力だなあ、と唸らされます。

    個人的に印象に残った箇所は
    「人は死んでも、誰かの記憶に溶けるから、全体としては減らない」
    という考え方と
    「人間ができるのは、自分をコントロールすることではなく、コントロールできない言い訳を考えることと、目標を変更することだ」
    という考え方。

    山野辺の復讐は困難を極めますが、読後は爽やかな気持ちになれます。

    伊坂ファンとして気になったのは「轟さん」の出演の仕方でしょうか。轟さん、どうして?と。

  • ”陳腐なハッピーエンドが現実になったら、すごいことだから。”

    シンプルで優しい結末ほど物足りない。。
    それは人が映画や小説に非現実を求めるからにすぎないが、私の好みも現実で起こったら困ることばかりだと気づいた。
    タイムトラベルやミステリーは好きだけど、実際起こったらパニックになるし決して楽しめるものじゃない。
    現実では陳腐なハッピーエンドがどれだけ幸せな結末か、今となればよくわかる。
    人間は”日々を積むこと”が生きることだから。
    平和ボケとは、それを保つためにみんなががんばっているから。

    千葉にとっての”監査部”は人間にとっても会社であり社会でもある。理不尽なことがあっても毎日を摘んでいくことしかできない。

    タイトルは物理的な「死神の浮力」でもあったが、”人がいなくなっても誰かの記憶に溶けるから減らない”という考え方はまさに私が自分の記憶に溶かしたところだったので好感を持てた。
    ”死ぬことは誰にでも訪れるけど、それは決して怖いことじゃないよ”と教えてくれるために、先に行って確かめてくれたような安心感をくれた。

  • 面白かった。伊坂幸太郎の死神シリーズ二作目、今回は前回の短編集の構成とは異なり、長編だった。主人公の死神である千葉の言動は、やはり前作と同じで、生きている人間を俯瞰的に眺める軽佻浮薄な人柄だった。ただ、今回は前回よりも千葉の死神的観念というものが少し、しつこかった気がする。そのせいもあって物語の中盤は少し読むのがダレてしまったが、後半の盛り上がりは面白かった。

  • 同じ年頃の娘がいるので、
    最初の方は特に読むのが辛くなって
    休み休み、読みましたが、
    やっぱり千葉さんがよい!
    ラストは泣けました。

  • 会話の中で伊坂幸太郎の話題があがる度に「ゴールデンスランバーの映画は観たことある」としか言えなかったけどやっと伊坂幸太郎の小説を読んだことがある側の人間になった 伏線回収の鬼

  • どちらかというとゴールデンスランバーのような読みこごこちでした。先が気になる内容はさすがだと思いました。私の好みよりはやや超え気味のぶっ飛んだ世界観ではありましたが。
    伊坂幸太郎さんの作品はどれも映像化しやすそうな文章ですね。

  • めっちゃ面白かったー!!
    死についてよく描かれている作品はそれだけで大好きなんですが、この作品は死に対して独特な解釈をしていて本当に面白かった…!
    「人は死んだらどうなるのか」は人には知ることのできないテーマだからこそ、怖くて魅力があると思います。
    無になってしまうのは怖いから、死後の世界や輪廻を信じたり、肉体から解放されると解釈して、安心しようとする。
    でもこの作品には他の作品とは違う安心がありました。本当大好き。

    ストーリーも特に後半がよかったです。
    これから読む方は前作『死神の精度』から読んで欲しいです。あんまり繋がりはないけど、そっちのほうが面白いと思います!

  • まいったなぁ、おもしろかったなぁ、笑。

    読後に「パンセ/パスカル」を読みたい気持ちにさせる小説がこれ以外にあるのかな、笑。

    全般にわたって、場に合わないはずの千葉の発言が、溶け込む様子がたまらない。
    読後の爽快感も良い。

  • 素晴らしい小説だと思いました。前作である"死神の精度"も面白かったですが、それを遥かに上回るスピード感、痛快さ、面白さです!伊坂幸太郎さんの作品は"火星にでも住むつもりかい?"がお気に入りなのですが、この作品が一番好きになりました。伊坂さんの長編は本当に密度が濃くてハズレがないです。

    死神の千葉さんがとにかく面白くて魅力的!死神なのでだいぶ普通の人とズレている発言や行動をしがちなのですが、そこが可愛くて面白いです。

    テーマが重たく、かなりハラハラする展開なのでハッピーエンドになのか不安だったのですが、本当に良い終わり方でした!!終盤で山野辺さんが本城に言った一言、そして本の最後に千葉さんが放った一言には本当に胸が震えました。どうやったらこんなに高い完成度のお話が書けるのでしょうか.....??初めから終わりまで面白くない時が一切無かったです。

    途中にカントの格言や参勤交代についてなど、豆知識がたくさん盛り込まれていて少し知識も増えました(笑)
    ワクワクする小説です!!

  • 千葉さんのマイペースっぷりがおもしろい。音楽がそんなに好きなのか。山野辺夫婦に降りかかった不幸は辛すぎて、あまり深く考えないように読んだ。暗くなりがちなストーリーの中で、やっぱり千葉さんは輝いていた

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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