若冲 (文春文庫)

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著者 : 澤田瞳子
  • 文藝春秋 (2017年4月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908256

若冲 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 江戸中期の京都で活躍した絵師・伊藤若冲。
    若冲の絵は、生誕300年に達した今でも数々保存され、私たちの目にも
    触れることは可能(昨年の展示会には行けず残念...!)ですが
    若冲というその人物について残されている史実はごく少ないといいます。
    こちらはその少ない史実に脚色を加えた若冲の物語です。

    ここで描かれている茂右衛門(若冲)には
    心の弱さを表に出すことのできない人の弱さと優しさが隠れていて
    恨みや怒りも面と向かってぶつけるような人ではないようです。
    けれども弁蔵には、それがかえって腹立たしかったのでしょうね...
    それでも弁蔵は、醜いほどに美しい若冲の絵には魅入られてしまっていた...。

    本当の茂右衛門に、憎むべき人、憎まれた人がいたのかどうかは
    わかりません。それでも心つき動かされる何かがあって描いていたというのは
    あるだろうなと思いました。そしてたった一つ、とても残念に思えてならないのが
    ここに登場する茂右衛門さんに、私は負のイメージを抱いてしまったこと...。
    それが存外強烈に心に残っています。
    だからいつの日か、伊藤若冲の絵を観る機会が訪れた時には
    "そんな気持ちで描いていたのだろうか.."という目で観てしまうかも。
    そう思うと、これには気持ちの整理も必要かしらと痛感しています。

    茂右衛門の一番のよき理解者は、"若冲"という号の名付け親でもある
    大典高層でしょうか。
    『老子』第四十五章の一節から名付けられたのは史実通りのようで
    「大盈(たいえい)は沖(むな)しきが若(ごと)きも、その用は窮らず」
    すなわち「満ち足りたものは一見空虚と見えるが、その用途は無窮である」

    この意味を理解するのは少し難しいです。
    わかりそう..なんだけれども雲をつかむよう...。
    それでも『老子』第四十五章を全部読んでみると、そこから伊藤若冲という
    絵師の姿がなんとなくながら見えてくるような気がしました。

  • 歴史小説家の著者が、その類いまれな想像力で、昨年生誕三百年を記念する展覧会で熱狂的好評を博した若冲を、鮮やかに浮かび上がらせた。
    池大雅、丸山応挙、谷文晁や与謝蕪村等々、当時の名だたる画家が登場し、彼の人生に花を添え、一方若冲の妻=姉の仇と憎み若冲の絵の贋作を描き続ける義弟の弁蔵が異様な存在感をもたらす。
    彼の異母妹の眼を通して語られる画家の生涯が、歴史の闇に隠された史実であるかのように、読者に思わせてしまう時代長編。
    作中語られる「若冲はんの絵がもてはやされるんは、他の者には考えもつかん怪っ態さゆえ・・・」「世人は・・・知らず知らずのうちにあの奇矯な絵に、自らでは直視することの出来ぬ己自身の姿を見出していたのだ。」に、現代の展覧会の熱狂の要因を重ね合わせてしまう。

  • 解説で「史実で証明されていないことは、どのように描いても許される。」と書いてあるが、本編に描いてある若冲の生涯の解釈は好きではない。どんな因縁があろうと、若冲の絵が贋作師を意識し、それによって高められたかのような解釈は納得いかない。もやもやする。

  • 【若冲の奇妙にして華麗な絵とその人生。大ベストセラー文庫化!】緻密な構図や大胆な題材、新たな手法で京画壇を席巻した天才は、彼を憎み自らも絵師となった亡き妻の弟に悩まされながら描き続ける。

  • 歴史文学というものは、史実に近い順からいうと、史伝文学、歴史小説、時代小説という区分になると、前に何かで読んだ記憶がある。
    その区分で言うと、この小説は歴史小説の体を取りながら、ほぼ時代小説と言えるのではなかろうか。

    *史伝文学、歴史小説、時代小説の区分とは
    ・史伝文学:吉村昭の小説や司馬遼太郎の一部の小説「坂の上の雲」など。
    ・歴史小説:司馬遼太郎の大部分の小説。
    ・時代小説:池波正太郎の「鬼平犯科帳」や野村胡堂の「銭形平次捕り物控え」等。

    主人公の伊藤若冲の経歴等は比較的残っているようであるが、主要なポイントさえ押さえて、後は作者の自由気ままに物語が展開できたのではないかと思う。

    残された資料では、若冲は生涯独身となっているが、小説では「お三輪」が嫁いできて僅か2年にして、土蔵で首つり自殺をしたことから物語の全てが始まる。
    小説の展開としては、自死した「お三輪」の弟の弁蔵が生涯に渡り若冲を恨み、その贋作を作ることで復讐し、逆にその事が若冲の奇矯な絵がさらに拍車が掛ると言う設定となるなど、かなり思い切った内容にしている。

    また若冲が絵を描くのは、死んだ「お三輪」に対する自分の罪と向き合うためであり、それがきらびやかな絵の中に暗い影を落していると言う作者の若冲の作品に対しての自説を展開している。

    また、作者は京都という町の特徴として、若冲のように京都の老舗の出身者には、その先進性を受け入れるが、反対によそ者で出自の卑しい与謝蕪村(土地を持たない水呑百姓の出身)に対しては、陰で軽蔑や差別するなど、京都の土地柄に対して批判的な目で描いている。

    全体としては、重厚で面白く出来ているが、歴史小説と思って読むと、少し違和感が残るかも知れない。

  • 好きでもないし、納得もできない。知ってる作品の絡め方は、まぁおもしろかったかな。

  • 若冲に興味があったので手に取ってみた

    8話からなる連編で若冲や異母妹のお志乃目線で物事が語られる

    話自体は面白いのだが、
    あくまで創作物ということで史実というわけではないとの事

    良いか悪いかは別にして、
    こういう小説を読んでしまうとこれから若冲の絵を見た時にこの小説に引っ張られる見方をしてしまうんだろうなと思う

    あまり関係ないが、
    実在の画家をモチーフにした作品を読んですぐにその画家の作品をネットで見る事が出来るのはありがたい事だな〜としみじみ思う
    当然実物の感動はないが、おおよその構図が分かるだけでも理解が深まる

  • 最初の2、3章はとても引き込まれるものを感じたが、読み進めていくうちに物語の焦点が定まらないぼんやりした印象になってしまった。視点が義妹だったり若冲だったりとぶれたせいだろうか。若冲の人生を史実も踏まえながら、死別した妻がいてその義弟との確執の中で絵への向かい方が変わっていったという物語性を加えたのは面白かったけど、若冲がその内面を突き詰めていくところが理が立って人間性の魅力にやや欠けていたように思う。作者は史学専攻の修士であり、そのためか文章はとても緻密に書き込んでいて、時代背景、絵の様子などの書き込みは漏れがなく、若冲の絵が忠実に文章に再現されているよう。一方で感性的な部分がやや力が弱く感じられてしまう。登場人物の性格設定は緻密なのに、描写が今ひとつ大胆さに欠けているような印象。とはいえ面白く堪能できた。これだけ書き込める学術背景と筆力があるのだから、今後も素敵な時代小説を世に出して欲しい。自分は今年澤田氏と朝井まかて氏のおかげで時代物に目覚めることができた。

  • 『講釈師、観てきたような嘘をつき』という言葉があるが、歴史上の人物でほとんど史料のない人物を描くのは至難の業だと思う。

    この作品では若冲には妻がいたという設定と、妻の弟、そして腹違いの妹との関係を中心にして私生活がほとんどわからない伊藤若冲の人生を作品と照らし合わせながら描いている。

    それは人それぞれの解釈で構わないと思うのだが、人によって作品を観る目が違うのだと驚いた。
    私にとって彼の作品は、そのどれもが生きる喜びに満ちているものだからである。

  • 類まれな伊藤若冲の画風の根底に迫っていきます。
    青物問屋枡源の主源左衛門から、伊藤若冲へとなるには、妻を亡くしたこと、姉の仇と憎み続ける義弟の存在があったことが描かれます。
    池大雅、与謝蕪村、円山応挙、谷文晁との交流、史実とフィクションが交差しながら、物語が進みます。
    読み応えがありました。

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