夢で逢えたら (文春文庫 よ 40-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915766

感想・レビュー・書評

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  • 女性の生きにくさが、分かりやすい題材と重くなりすぎないタッチで描かれています。

    ここに描かれているエピソードの数々をどれだけ「おかしい」と思えるかで、女性の生きにくさが改善されていくのだと思う。

    一人一人の人をただ尊重するだけの事なのに、なぜそれが難しいのか。
    そもそも、「世界の半分の人を尊重しない」なんて、誰が聞いてもおかしいと言うことに気付けば変わりそうなのに。

  • 相方が引退し、ピン芸人となった真亜子と、局アナからフリーとなった佑里香。一見相容れない2人が、地方のバラエティー番組で共演することとなる。
    テレビ業界ものということで、昔っからのテレビっ子である自分は絶対楽しめる!と思い、発売が待ち遠しかった。読み始めたら予想通り即ハマった!トリコさんらしいテレビ小ネタがそこかしこにちりばめられ、テンポの良い掛け合いも心地よく、夢中で読みふけった。女芸人×女子アナ。水と油かと思えた2人が、徐々に距離を縮めていく過程は読んでいてワクワクした。
    ワクワクする一方で、容赦なく描かれるジェンダー問題。これがまた、思い当たること多すぎて心の内側を引っかかれるような痛みを感じる。「女」芸人、「女子」アナだからこそ感じる生きづらさ。自分自身がこれまで感じてきた数々の理不尽さを思い出し、よくぞここまで斬り込んでくれたと拍手喝采ものだ。自分の中でないことにしてきた、悔しい思いやモヤついた出来事。女として生まれたからには、大なり小なりそんな経験があるだろう。ここまでうまく言語化してくれた小説、今までなかなか出会えなかった。テレビが舞台だからこそ、軽やかに痛快に、でも確実に急所を突きながら展開するストーリー。まさに、溜飲が下がります。
    これは本当に、今読んでほしい作品だな。コロナにも触れているし。連載終了後、よくスピーディ-に文庫化してくれたなとありがたくなる。そして、懐かしいようで新しいような、かわいい色遣いのカバーイラストも最高です。

  • 文句なしで面白かった。何だろう、わかるわかるの連続で、読後感もずっと本の中にいる感じ。
    なんでこんなに生きづらいんだろうと思う。なんで男性と同じような仕事で、プラス女性の生きづらさを解消するタスクを解決しないと前に進めないんだろう。
    ただ、解決する方法を考え、変化を恐れず実施したら、ちょっとは変わっていくのではないか。そう思っている人は割といるんじゃないか、行動を起こしていく中で、という言った同志もみつかっていくのではないか、と励まされた。
    そう、励まされたのだ。

  • 思いがけずすごく「今」の話だった。
    そしてすごく攻めてる。
    ちょっと読みづらい部分もあったけど、感じるところの多い小説。

  • 著者、吉川トリコさん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    吉川 トリコ(よしかわ トリコ、1977年10月19日 - )は、日本の小説家。静岡県浜松市出身。愛知県名古屋市在住。

    で、今回手にした、『夢で逢えたら』の内容は、次のとおり。(コピペです)

    女芸人の真亜子。芸人顔負けのキャラクターの女子アナ佑里香と共演するうち、業界や世間の理不尽に立ち向かう気持ちが芽生えていく。

  • 社会の空気が感じられる面白い作品。固有名詞もバンバン出てきて小説なのか現実なのか分からなくなってくる。女同士の連帯が描かれていてとても良い。
    10年後に読んだら昔はこんな社会だったなーと懐かしく思えるくらい良い方向に変わっているといいな。

  • 小さい頃からそして今でもテレビが大好きでテレビを見て過ごしている。だから真亜子と佑里香のいろんな番組を引用しながら軽快に会話するあの空気感がとても好きだった。
    同じ時代に生きていると言うだけで遠くに住んでいても共通の話題が見出せるテレビというツール。
    そしてその中で提示される時代時代の生きづらさ。
    それは勧善懲悪のような簡単なものではなく、違和感はあるけど安心感もある、だけど確実に自分を蝕んでいる気配もある複雑なもので、正論だけでは太刀打ちできない。
    そういう笑いを楽しむ自分もいるのも事実で、そういう価値観を全否定したい自分もいるのも事実。
    佑里香の自分で選べずに他人の目に正解を委ねてしまう感じに共感した。

  • 笑っていいとも!にレギュラー出演するのが夢だったテレビ大好きな女芸人の真亜子と、お嫁さんになるのが夢だっためるへんちっくな女子アナの佑里香、という、一見対照的なふたりの女性の葛藤や生き方を明るく陽気に下ネタたっぷりで描いた一冊だ。

    葛藤や生きざま、といっても、ふたりともあまり深く物事を考えず、勢いで生きているのだけれど、その勢いの合間合間に、女性の生きづらさ、みたいなものが見え隠れする。

    そもそも男芸人とか男子アナって言わないのになんで女芸人とか女子アナっていうんだよ、というジェンダー的な内容なのだけれど、いわゆるフェミニズムの論調みたいな過激さや重さはないし、真面目じゃなくて、でもだからこそ、彼女たちの感じる違和感や辛さがリアルだ。

    なぜ女を捨てないと男と対等に張り合えないのか。なぜ男がやっても笑われて許されることを女がやると潰されるのか。真っ向から意見を返すと、その内容の是非ではなく「可愛げがない」「美人が台無し」というまったく関係のない容姿の話にすり替えられるのか。

    日本社会では当たり前でふと疑問に思ってもうまく目をそらしてきた疑問に、真亜子も佑里香もがっつりぶつかっていて、彼女たちに改めて言語化されると、はっとする。

    実在のお笑い芸人の名前や闇営業問題や#Me Tooも出てきて、令和の今この時代のこのタイミングに向けて書かれた一冊だなあ、と思う。

    単純なエンタメ小説というには、扱われているテーマが重いけれど、自分は面白く読んだ。

  • 元気出ますね!
    一方で、「夢で会えたら」って、乙女心がせつない(笑)

  • 面白かった。

    他人を切ることでブレイクした女芸人とお嫁にいくことを生きがいとしていた女子アナウンサーが地方番組で出会う。まったく違う二人だけれど、次第に各々もってた女としての生きづらさ、理不尽さに気付き、爆発させる物語。

    ジェンダーの話だけれど、固い文章なわけではなく、とにかく展開ややりとりに笑える。だからといって、問題をウヤムヤにする書き方はせず切り込んでいくのが読んでいて痛快であり、辛いところもあり。

    主人公たちと世代が近いこともあるけれど、特に2018年〜2020年の芸人の流れ(闇営業、第7世代の登場、ブルゾンちえみの変化、阿佐ヶ谷姉妹とばんばん実在する人物名もでてくる)、本当に今コロナ下になるまでの世間の風潮が書かれているので、フィクションだけれどリアルで面白い。

    「男だから」「女だから」と括るのはもう古いことであるのはわかっているつもりでも、固定されてしまった概念はなかなかなくなるものはないなと思った。

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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