猫を棄てる 父親について語るとき (文春文庫 む 5-16)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167919528

作品紹介・あらすじ

父の記憶、父の体験、そこから受け継いでいくもの。村上文学のルーツ。

ある夏の午後、僕は父と一緒に自転車に乗り、猫を海岸に棄てに行った。家の玄関で先回りした猫に迎えられたときは、二人で呆然とした……。

寺の次男に生まれた父は文学を愛し、家には本が溢れていた。
中国で戦争体験がある父は、毎朝小さな菩薩に向かってお経を唱えていた。
子供のころ、一緒に映画を観に行ったり、甲子園に阪神タイガースの試合を見に行ったりした。

いつからか、父との関係はすっかり疎遠になってしまった――。

村上春樹が、語られることのなかった父の経験を引き継ぎ、たどり、
自らのルーツを初めて綴った、話題の書。

イラストレーションは、台湾出身で『緑の歌₋収集群風₋』が話題の高妍(ガオ イェン)氏。

感想・レビュー・書評

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  • 隙間時間で読ませて頂いた。
    お父様について語る息子。この作品で何を思うわけでは正直なかったが、独特な表現、感性とでも言うべきか、難しいことは考えずに読んで、あゝそうかで良いのかなと。文学の評価云々をすべき本ではない。

  • タイトルの通り村上春樹さんが父親について語っています
    村上春樹さんは好きです
    だけど、村上春樹さんの父親には興味がありません…w
    すみません…
    以上ですw

    ただ、私は自分の父親について語れるのかな…
    語れるほど父親のことを知っているのかな…
    きっと語れないです…
    あなたはどうですか?
    父親について語れますか?

    • 1Q84O1さん
      ほん3さん
      お父さんは破天荒な人だったんですねw
      ほん3さんは破天荒の血は引き継いでないです?
      ほん3さん
      お父さんは破天荒な人だったんですねw
      ほん3さんは破天荒の血は引き継いでないです?
      2023/08/27
    • 1Q84O1さん
      ゆーき本さん
      うちの父親も孫には甘々でしたねw
      私は誇れる父親!ではないですね…
      子どもたちに将来語ってもらえるようにしないとw
      ゆーき本さん
      うちの父親も孫には甘々でしたねw
      私は誇れる父親!ではないですね…
      子どもたちに将来語ってもらえるようにしないとw
      2023/08/27
    • 1Q84O1さん
      かなさん
      いい人でした、我慢強い人でした、と娘から語ってもらえるかなさんのお父さんは素敵な人なんでしょうね!
      私も娘からそう言ってもらえるよ...
      かなさん
      いい人でした、我慢強い人でした、と娘から語ってもらえるかなさんのお父さんは素敵な人なんでしょうね!
      私も娘からそう言ってもらえるように「がんばれ!自分」w
      2023/08/27
  • いつの頃からか、私は村上春樹作品が苦手になり、自分では手に取ることがなくなった。昔はよく読んでいたのになぁ。そして前回、「女のいない男たち」を貸してくれた人が今回また村上作品を貸してくれた。

    副題のとおり、村上春樹が父親(たまに母親)について語った短い文章。
    村上春樹さんは、かなり長い間父親とは疎遠だったということだが、そういえばそんなことを聞いたことがあるようなないような。

    父親が亡くなった後、父親の経歴、戦争体験などをたどり、自分のルーツを見つめて、こう書いてあった。

    「我々は結局のところ、偶然がたまたま生んだひとつの事実を、唯一無二の事実とみなして生きているだけのことでなのはあるまいか。」

    その通りだと思う。私も最近ぼーと似たようなことを考えている気がする。私がこの世に生を受け、生きていることに意味なんてなく、単純に偶然にすぎない、というようなことを。もちろん、だからといってこの生をちっぽけだとかは思わない。この偶然に意味を持たせるのが人間なんだと思う。

    そして、村上春樹さんは少しでも父親の経歴が、特に戦争体験が違うものとなっていたら自分は存在しなかったということを考え、こう書いている。

    「戦争というものが一人の人間ーごく当たり前の名もなき市民だーの生き方や精神をどれほど大きく深くかえてしまえるかということだ。」

    あらためて戦争のある時代(今も海の向こうではあるわけだけど)に、ままならない人生を送った人たちを想った。

    村上春樹さんの文章としては短いし、とても読みやすかった。これは借りて良かったと思った。

    • URIKOさん
      >Jon Jonさん
      コメントありがとうございます。
      同じですねー。何なんでしょうねぇ〜。
      個人的には読んでいる時も読んだ後にも感じるあの疲...
      >Jon Jonさん
      コメントありがとうございます。
      同じですねー。何なんでしょうねぇ〜。
      個人的には読んでいる時も読んだ後にも感じるあの疲労感がもう無理な気がして読もうと思わないのですが、読んだら読んだで楽しめるのかも、とも思います…優先順位は低いですが…
      2023/04/28
    • Jon Jonさん
      わかります。
      若い時は、あの何とも言えない世界に対応するパワーがあったけど、今はそれが重くてムリみたいな感じですよね笑
      わかります。
      若い時は、あの何とも言えない世界に対応するパワーがあったけど、今はそれが重くてムリみたいな感じですよね笑
      2023/04/28
    • URIKOさん
      そう!パワーがいるんですよねぇ。
      そう!パワーがいるんですよねぇ。
      2023/04/29
  • 京都の「安養寺」というお寺の次男として生まれた父。
    三度の招集を体験したが、悲惨な戦争から何とか生き延びることができたこと。
    戦争で亡くなった人たちのために、毎朝小さなガラス・ケースに収まった菩薩にお経を唱えていたこと。

    あの時代を乗り越えてきた人たちがいたからこそ、今の私たちがこうやって幸せに生きていられるのだと思う。

    亡くなった父へ向けて書かれたこの文章は、エッセイとも小説とも受け取れる、とても深みのある一冊だった。

    「ねじまき鳥クロニクル」で読んだ、残虐な場面が思い出される。

    そして、猫にまつわる印象的な思い出。
    物言わぬ小動物は、もしかして、家族に何か大事なことを伝えてくれるような役目を果たしてくれているのかもしれない。

    後の方に書かれていた「降りることは、上がることよりずっとむずかしい」という言葉が印象的だった。
    村上春樹らしい言葉で、どこか本音のようなものがうかがえる。

  • 村上春樹が父親の記憶を辿る。
    それは悲惨な戦争の一部分を記したものであったし、
    春樹氏の父の思い出であったし、
    それらの記憶にそっと温もりを添える猫の思い出でもあった。
    これらの事を丁寧に思い返し、調べ、文章の形にするには、辛さを伴う作業であったと思う。
    親の歴史を辿るには、自分にとって蓋をしたはずの楽しくない思い出と向き合う事も必要だったであろうから。

    本書を最初に目にした時は、あまり好きなタイプの表紙・挿し絵ではなかった。
    けれど読み進めるにつれ、温かく、どこか懐かしいガオイエンさんの絵が、しっくりとはまっていくのを感じた。
    村上春樹本人もあとがきで、彼女の絵には不思議な懐かしさを感じると述べている。

    私事だが、今年の夏は父親という存在について考えさせられる年だった。
    パートナーのお父様が亡くなった。
    私の父は大きな手術を受けた。
    これまでの「普通」が失われてしまった。
    だけど私達はこれからも生きてゆくので、これからは今の形が普通の日常になってゆく。

    そんな事もあってか、「猫を捨てる」をしみじみと読んだ。
    父と母が出会い、そして生まれてきた一人の息子としての村上春樹。
    素の彼がそこに居た。

    「ここに書かれているのは個人的な物語であると同時に、僕の暮らす世界全体を作り上げている大きな物語の一部でもある」と言う。
    世界的に有名な物書きであることが、お父様の歴史を辿るのにプラスに働いたことも多いだろう。
    だけど私は、普通の暮らしを送る何者でもない私だ。
    父が健在であるうちに、母が健在であるうちに、共に時間を過ごし、もっと話をし、私の暮らす世界を作り上げている物語を知ろうと思った。

    • TAKAHIROさん
      傍らに珈琲を。さん
      先日は「楽園のカンヴァス」の感想へのコメントありがとうございました。美術館通いが趣味なのであれば、楽しめる作品だと思いま...
      傍らに珈琲を。さん
      先日は「楽園のカンヴァス」の感想へのコメントありがとうございました。美術館通いが趣味なのであれば、楽しめる作品だと思います。私の美術館通いは、ド素人のミーハー心からで絵画への造詣などほぼ皆無なんです(笑 ちなみにここ何年かでは、ゴッホ展、横山大観展、バンクシー展、フェルメール展なんかにいきました。ところで、傍らに珈琲を。さんは足立美術館はもう行かれましたか。島根県にある美術館ですが、私のイチオシで特に日本庭園が素晴らしくていつ行っても心揺さぶられます。

      話は変わりますが、村上春樹は私もたまに読んだりします。本作も以前に読んだんですが、父との思い出が綴られた何となく郷愁のようなもの感じさせてくれたエッセイですね。ちなみに私は子供の頃に本作の舞台である西宮周辺で生活していましたのでリアリティを感じつつ読み進めた記憶があります。
      傍らに珈琲を。さんの感想の最後の一文にとても共感しました。私と私の父との関係についても思いを巡らせるきっかけとなりました。
      今後ともよろしくお願します。
      2022/11/18
    • 傍らに珈琲を。さん
      TAKAHIROさん、コメント有難う御座います。
      西宮で過ごされた期間があるんですね。
      ご自身の見た西宮の風景と重なりますね。

      共感して頂...
      TAKAHIROさん、コメント有難う御座います。
      西宮で過ごされた期間があるんですね。
      ご自身の見た西宮の風景と重なりますね。

      共感して頂けたこと、嬉しく思います。
      こうして自分自身の両親に置き換えて考えられたのは、村上さんが一人の村上少年としての思いを飾らずに明かしてくれたからだと思っています。
      TAKAHIROさんが仰るように、郷愁を感じますよね。

      マハさんの作品も是非読んでみたいと思っています。
      少し前にNHKでゲルニカに纏わる番組を観たところなので「暗幕のゲルニカ」の方を先に読むかもしれませんが。

      私の美術館通いも好きなだけで特別詳しくはないです 笑
      コロナ禍で何となく足が遠退いてしまい、先日久しぶりに岡本太郎展に行ってきました。
      写真OKだったのでとても楽しく、作品からパワーを貰ってきました♪
      前回美術館に行ったのは2019年のクリムト展、ゴッホ展、コートールド美術館展だったので、3年ぶりでした。

      島根県足立美術館、行ったことはないのですが素敵な所ですね。
      検索してみて思い出したのですが、こちらも以前、テレビの特集で見たかもしれません。
      美術館から庭を眺めたときに一番美しく見えるよう、植木の剪定が緻密に行われているとの番組でした。
      あの枯山水のお庭は、足立美術館だったように思います。

      長くなりました 笑
      こちらこそ、今後とも宜しくお願いします。
      2022/11/18
  • ・春樹も晩年なのだな……としみじみ。
    ・「ねじまき鳥クロニクル」を「思い出さないわけにはいかない」(春樹風フレーズ)。
    ・最近ウィリアム・フォークナーを読んだり中上健次を思い出したりすることが多いが、春樹もこういう「先祖調査」をしていたんだな。おそらく一般人のように何となくではなく、春樹らしくキッチリと。作品にどれくらい織り込まれているのかはいずれ研究されるだろうけれど。
    ・萩尾望都の両親との確執も連想。

  • 個人的に最近、「僕らの暮らす世界全体を作り上げている大きな物語の一部」というのが染みる。
    もちろん村上春樹さんの物語は僕なんかにとってあまりに大きな物語だけど。

  • 初audible で読了。中井貴一朗読。
    運命、決められたものではなく偶然の意味で、の流れって面白いなと思う。村上春樹の違う一面が伺える。

    2023.6.30

  • 阪神間のこと、興味深い。

    関係ないけどノルウェイの森の緑ちゃんみたいな人が、カレーを食べにいった国分寺の喫茶店にいて感動した。

    絵もあって、字が大きめの文庫本だったから一瞬で読んでしまった。

  •  村上春樹が父について語った本。
     その父は、お寺の次男として、大正6年に生まれた。戦争の被害を一番に受けた世代。
     そして息子が父に関して良く覚えていること、それは毎朝、小さなガラスケースに収められていた菩薩に向かって、長い時間お経を唱えていたこと。子供だった息子は尋ねる、誰のためにお経を唱えているのかと。仲間の兵隊や、当時は敵だった中国の亡くなった人たちのためだと。

     そして、父はただ一度だけ、当時まだ小学校低学年だった息子に語った。自分の属する部隊が、捕虜の中国兵を処刑したことがあると。
     戦争体験をほとんど語ることのなかった父が、なぜそのことを語ったのだろうか?息子に言い残し、伝えなくてはならない、〈引き継ぎ〉だったのではないか、と著者は推測する。

     父と息子は、その後、20年以上も顔を合わせない疎遠状態になってしまった。90歳を迎えた父と60近くになった息子が、父の亡くなる少し前に顔を合わせる。それは和解のようなものだったと著者は言う。

     戦争の影を背負った父の思い出、その始まりと終わりに、猫を巡る印象的なエピソードが語られる。

     必ずしも親密とは言い難かった親子関係。それでも、いやそれだからこそかもしれない、亡き父について語ることとした著者。
     淡々とした文章の奥に、いろいろな感情の揺らぎが感得される、そんな作品だった。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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