白い闇の獣 (文春文庫 い 107-3)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919696

感想・レビュー・書評

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  • 驚いた。これは社会派推理小説の傑作である。
    少年三人に娘が殺された。それから4年後、犯人が転落死する。犯人は一体。
    主人公・香織の調べる事件はまるで迷宮だ。それが複雑になり過ぎず、かと言ってシンプルになり過ぎもせず見事に描かれている。よくもまあこれだけの複雑な絵図を作っておきながら分かりやすく昇華させたものである。作者には万雷の拍手を贈りたい。本作には胸を抉られるような描写も展開ももちろん出てくる。それだけではなくミステリとしても、ヒューマンドラマとしても読み応えは抜群だ。ミステリの技巧と人間ドラマの心、それが見事に融合した稀有な傑作と言っていいだろう。

  • 少女が殺された描写はあまりにも切な過ぎる。
    何故、お母さんは暗くなっているであろう時間に娘が迎えに行くことを許したのだろうとつい現実的なことも考えてしまった。
    最後も後味の悪さしか残らなかった。
    犯罪は少年達が起こしたのかもしれないが、少女は周りの大人の犠牲になってしまったと感じられた。

  • この怒りと悔しさをどこにぶつければ良いのか。

    何の罪もない少女が誘拐され残虐な手口で殺される。
    捕まった少年は己の罪を反省する事もなく世に放たれ、少年法を盾に再び罪を犯し続ける。

    守るべきは被害者遺族であるはずだ。
    だが幾度も名前や顔が報道される被害者に対し、少年法で守られた少年の事は一切明かされない。

    更生の機会を与え、社会復帰を図る為という大義名分は理解出来ても、それが期待出来ない少年達もいるはずだ。
    法で許されないなら復讐をと考える気持ちが私には理解出来る。

    世に蔓延る理不尽と不条理にメスを入れた社会派ミステリ。

  • タイトルの意味が気になって購入。

    被害者・遺族、関係者たちは自分を責める。
    責め続ける。
    なにも反省しない法に守られる少年。

    香織が見た俊彦の目。
    目に宿る光、優しい目を持った彼が本当に犯行に及んだのか…。ずっと姿が見えない俊彦と、関係者の証言。

    香織、俊彦がとった行動。


    こどものある問題がいきなりでてきたから、もう少しヒントがほしかったかも。

  • 泣き寝入りするしかない少年犯罪の被害者家族がそれぞれ抱える自罰意識。犯人を憎むよりあの時自分がこうすればという後悔に苛まされる。そして犯罪を繰り返す少年たち。沢山の問題を投げかけどんどん悪い方へ転がっていくような中、最後に元担任の起死回生の一閃。善悪は置いておいて小説としてスッキリしました。

  • うーむ。そうなるか。
    この展開は読めなかったなあ。
    なーんか、後出しジャンケンぽいけど。
    まっ、おもろければ良えねんけど。

  • "犯人は誰だろう"犯人探しにこの小説のストーリーがあるのかと思い読んでいたけど、全く違う。犯人など脇役。神などいないと思うほど自分を責め続けた被害者の家族、その罪や過ち。そこに関わった人の個々に抱いてきた思いがじっくりと書かれていて、点が少しずつ、本当に少しずつ繋がっていった感覚だった。
    ただ犯人探しをするストーリーよりも格段に深く複雑に刺さる。罪を知ってくれる、そして赦してくれる相手が居ることはどんなに救われるかなぁと最後に考えた。

  • 一気読みできる面白さだが、最後でもう一段、話を盛り上げる作品。
    心にある罪滅ぼしに向き合いながら、俊彦を探す香織。
    『この世界に神の慈悲などない。ただ、真っ白な闇が広がっているばかりだ』

  • いや〜さすが!伊岡瞬!面白かったです^_^ミステリーに出てくる女性は本当に魅力的でしかない…^_^

  • サイン本を手に取りました。
    読む前にサインを目にしたときは、本当に手書きだぁ!本物だぁ!(不躾ながら)先生、生きてる!とわくわくしました。
    読了後、サインペンの筆の運びの生っぽさが、あとがきにある『文責を一身に負う覚悟』と相まって、胸にずしりと来ました。
    覚悟が、解説がないことにも表れているように思えます。
    何に対しての覚悟なのか私が察することはできそうにありませんが、法律・道義・倫理と不条理な現実との間にある凄まじい葛藤があとがきを書いているそのときにもおありだったのだろうかと想像しました。
    憎むほどの、命に絶望するほどの不条理に対峙したとき私が何を思うのか、わかりません。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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