日本神話の起源 (徳間文庫 お 20-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784195990063

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  • 大林太良(おおばやし・たりょう)先生の『日本神話の起源』。諸星大二郎先生がオススメと紹介していたのが手にとったきっかけ。影響を受けてるというか元ネタ、タネ本ですね。諸星作品の巻末の参考文献にも大林太良先生の本はよく出てきます。

    タイトルそのまま、日本神話の起源を探る本。比較神話学といって、古事記や日本書紀、風土記などの神話伝承、伝説(現実に影響を受けてはいるけど、要するにファンタジー)を、世界中の神話と比較することで、「日本人とは何者であるか、どこから来たのか」を探っていきます。

    比較神話学で有名なのは、スターウォーズの元になった『千の顔をもつ英雄』のジョーゼフキャンベルとか、もっと前だと『金枝篇』のフレイザーとかも一応そうなのかな。大林太良先生は、戦後のこの分野での一番有名な人じゃないかなと思います。

    地層と似た感じで「文化層」という言葉があって、文化が伝播した時期が古いのか新しいのか、日本で言うと縄文時代か弥生時代か古墳時代なのかなど、はっきりとは断定できないけれど、神話を調べることである程度までは推定できる。

    昔からよく言われていて、私もなんとなく知っていたのは南方系と北方系、古モンゴロイドと新モンゴロイド、南方の漁労民と北方の遊牧民。あとは、アメリカ先住民(インディアン)に、日本人と共通の風習があったり、環太平洋地域の神話は似ているものが多い。他に、イースター島の人々のルーツを探ると台湾あたりまで遡れるとか。このへんはこの本に載ってませんが、私の持つなんとなくの基礎知識。世界中の神話を通じて、そのあたりをより詳しく知ることができる。

    当たり前の考えで行くと、日本は元々多民族国家で(台湾みたいな小さい島ですらそう。友達が喋るガチの薩摩弁とか、同じ島内なのに何言ってるかさっぱりわかりませんよ?)、「国家」という概念ができて、形成されていくにつれて、表面上は文化的に同質化した、させたというだけだと思う。かつて「日本は単一民族国家だ」と発言した政治家が何人もいたけど、歴史的経緯を考えると、同質化してる時期の方が特殊なのでは?と思う。古代から海外の文化の流入や影響を受けているので、日本の神話が独立して特別なものではない。そして逆に、世界の神話と比較することで日本神話の独自性も見えてくる。

    読んでいるうちに気になるのはやはり「天皇家のルーツ」で、結局のところ断定はできないけれど、この本の中では一応アルタイ系遊牧民ということになっている。昔流行った騎馬民族征服王朝説は現在は全く主流ではないそうで、この本でも肯定はされていない(例えば、中国の都に似た都が日本にあるのを根拠に、日本は中国人が作ったとはならない……のと同じことかなと)。
    宮内庁管轄の古墳を全部調べれば色んな調査が進むというのに……先日テレビで見たけど、バチカンは資料をなるべく公開するようになってきたそうです。公開しない方が憶測を呼んで陰謀論が出てくるとか笑。

    世界の神話を読んでいて面白かったのは、漁労民だと魚や釣針など、農耕だとイモや粟や稲、そして酒など、その民族にとって重要なものが話に出てくる点。あと有名なのが、大蛇や龍はだいたい川の象徴。ビルマの神話にカレーが出てきたのには笑えた。

    序盤は若干読みにくいと感じましたが、内容は特に難しいことは書いてない。むしろ簡単。後半に行くにつれてどんどん面白くなりました。大林先生は研究者なので……大学の先生って、教え方が下手な人がけっこう多かったことを思い出します。あと、書き方が論文だよなあと。論文を一般向けに書いてるような感じの本です。

    しかし、各章の最初の1ページ目に概要をまとめてくれているので、ざっと中身を知りたい方はここだけ読むと言いたいことが全てわかるという、超便利な構成!全7章なのでたったの7ページ読めば済む!笑

    さらに、巻末についてる9ページほどの補論に、基礎知識として知っておきたい内容がわかりやすくまとめられている!先にこちらから読んだ方が良いと思います。巻末のまとめに近づくにつれてわかりやすく、面白くなっていく。読みやすいんだか読みにくいんだか笑。

    それと、カバーデザインが死ぬほどダサい。この徳間文庫版は1990年に出たもので、時代を感じさせるけど、それにしても手抜きとしか言いようがない泣。そのうちちくま文庫あたりからカッコいいカバーになって再出版されそうですね。

  • 比較神話学的な観点から、古事記および日本書紀において語られる種々の神話的モティーフの由来について考察をおこなっている本です。

    本書の冒頭で著者は、日本神話を「内」から考察する文献学的研究と対比して、「日本神話の様々なエピソード、いろいろな構成要素を、世界の他の地域における類似した神話や習俗と組織的に比較研究する」という「外」からのアプローチを掲げています。日本列島にやってきたわれわれの祖先は、大陸や南洋からこの地にたどり着きました。日本神話には、さまざまな文化の流れや影響の交差点をなしており、たんに類似した神話を収集するだけではなく、民族の移動や文化の伝播にも注意をはらう必要があると主張します。

    こうした立場に立って、本書では主として華南、東南アジア、ポリネシアから伝来した神話的要素と、内陸アジアの遊牧民文化に由来する神話的要素が結びついて、日本神話が構成されたという見解が示されます。そのさいに著者は、擦文土器や鉄製武器などの考古学的資料の分布についても言及しながら、神話の伝播過程の担い手であった民族や文化の影響関係についても目配りをおこなって、日本神話の起源を探求しています。

  • かなり古い本ではあるが、
    日本神話を各国の神話・伝承と比較していて面白かった。

    ポリネシアの影響を受けているのも意外だったし、
    他人の空似だと思っていた、
    ギリシアのオルペウスの神話とイザナギ・イザナミの神話が、
    イラン語系の民族、印欧語系民族(ギリシア)、アルタイ民族という順に伝播し、日本に伝わったのではないかという説は
    驚きだった。

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著者プロフィール

1929-2001年。東京生まれ。1952年東京大学経済学部卒業。1955-59年フランクフルト大学、ウィーン大学、ハーヴァード大学にて民族学を学ぶ。ウィーン大学にてDr.phil.を取得。東京大学教授、東京女子大学教授、日本民族学会会長、北海道立北方民族博物館館長等を歴任。毎日出版文化賞、朝日賞、福岡アジア文化賞受賞。著書に『東南アジア大陸諸民族の親族組織』『日本神話の起源』『稲作の神話』『葬制の起源』『日本神話の構造』『邪馬台国』『東と西 海と山』『銀河の道 虹の架け橋』など。他にも多くの著訳書がある。

「2019年 『神話学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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