トランプ大恐慌:ウォール街からの警告

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198644109

作品紹介・あらすじ

米株市場はテックリーダー株(IT関連)の時価総額の肥大化によって異常事態を呈しており、市場のクオリティを著しく落としている。つまり暴落、間近かだ。賢明な投資家たちはみな市場から逃げ出している。ニューヨークダウ2万ドル超えをあおる日本のマスコミにはウォール街の裏事情が読み切れず議会と折り合わないトランプの大型公共投資等の政策に強い期待を抱く。米国バブルが崩壊すればアベノミクスもその道連れになる―。

感想・レビュー・書評

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  • 米国においてトランプ氏が大統領になって仕事を始めてからもうすぐ一年になろうとしていますが、日本経済にどのような影響を与えたのでしょうか。

    日経平均は選挙対策のせいもあるかもしれませんが、ずっと上がり続け、為替は殆ど変化していないので、どの業界からも文句は出ていないような気がします。

    この本ではいずれ米国発の大恐慌が来ると予測しているようですが果たしてどうなるのでしょうか。少なくとも私の知る限り、アメリカの状況はよくわからない部分が多いので、前半の1章から3章にかけての米国に関する記述については、現在のアメリカを理解する上で参考になりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・安倍首相は昨年と今年(2017)の二度のトランプ大統領との会談で、完全に舐められてしまった。その証左が最近の円高ドル安である。政府・日銀による金融緩和による円安政策がその会談を契機にしぼんできた(p23)

    ・トランプの財政政策は1980年代のレーガンのものをすっかり踏襲したか拝借したもの、大幅減税(連邦法人税の減税、多国籍企業への優遇措置、富裕者向けの所得税等)、軍事費の増加、インフラ投資(p29)

    ・シェールオイルの採算コストが80ドルのところはあるが、一方で20ドルのところもある。高いところは閉めて20ドルのところは増産している、日本が認識していない点(p44)

    ・米国株式相場が5月にピークを打って、その後に下がるのは、税の還付申請の締め切りが4月15日、還付実行が四月末か五月初旬、日本よりも一か月遅いスケジュールなので、還付金を受けた人の目が株式に向かうため5月にアメリカ株が高値をつける(p49)

    ・アメリカの失業率4%台とは、あってはならない、アメリカの全人口の13%が非識字なので、文字の読めない人にも、文字が読める人に与えられてきた仕事が回ってくることを意味する(p52)

    ・自動車ローンの負担が、アメリカの個人借り入れ状況を厳しくしている、所得に比べて借金の比率が非常に上がってきていて、リーマンショック直前と酷似している。住宅を買うためのサブプライムローンが、今回は自動車ローン及び奨学金ローンに代わっている(p68、98)

    ・先の大統領選では、ダークホースが二人いた、一人は緑の党、ジル・スタインという女性候補、ヒラリーに対するダークホース、トランプに対するダークホースは、第三の党と言われる「リバタリアンの党」のゲーリー・ジョンソンで、もともと共和党主流派にいた人、当初は10%も支持を得ていた。終盤でトランプが追い上げたのは、ヒラリーのメール疑惑よりも、ジョンソン候補の支持率が下がったため(p83)

    ・アメリカにおいて残業代が出るのは、年収2.5万ドル以下の人で、それ以上稼ぐ人には残業代を払わないのがアメリカの法律で定められていたのが、今回の改正にて上限が4.8万ドルに引き上げられた(p89)

    ・実際に工場で働いている人、個人営業、いわゆる額に汗して働いている人達は、こぞってトランプ支持、逆に、ウォール街で働く金融関係者、弁護士、IT経営者からは総スカンを食っていた(p94)

    ・アメリカでは大学に入れるかどうかは、マイノリティに対する保護の意味合いから、黒人受験生にゲタを履かせているという事実がある。アジア人には無い。これで不利を被るのは、合格すれすれラインにいる白人の受験生である(p98)

    ・下院選挙で共和党が勝つか不思議に思うが、その理由として、一般に民主党支持者は政治に関心が薄く、下院議員の選挙には行かない。アメリカに長く住む筆者の目にはそう映る(p100)

    ・アメリカ株が暴落すれば、為替は絶対に円高に大きく振れてくる、円キャリートレードの金がアメリカから日本に戻ってくる、円を買うことになるので(p123)

    ・本来なら、北ユーロ(ドイツ、オランダ、デンマーク、フィンランド等)と南ユーロ(フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル等)に分けるべきであった(p140)

    ・日本と違って、対米輸出品の7割をアメリカ関連の多国籍企業がつくっていることから、中国からの輸入品に20%の関税を課せば「アメリカファースト」に矛盾が生じる(p141)

    ・実際にはSDRはそんなに使われておらず、いまのところステイタスシンボルとは言い難い(p147)
    ・中国の外貨準備高が、わずか1年で1兆ドルも減少しているのは、為替介入をしているから。中国の場合、外貨の換算は本来先進国が外貨準備に換算しないものも含めている。(p149)

    ・インドでは高額紙幣の廃止により、笑いが止まらないのが、「ペイtm」はじめとするインド国内のモバイル決済サービス企業と、ビットコインである。インドの金融政策と中国からの資金逃避がビットコイン需要増加の二大要因となっている(p174)

    ・ビットコインは、年間インフレ率が高いアフリカなどの途上国から富裕層が国際送金する際、インフレヘッジ、格安な手数料の面から有効な手段として評価できる。ビットコインに替えたらすぐに買い物で使ってしまうべき(p184)

    ・ビットコインのメリットは、地域政権の準備通貨的保証に絡まないで済むということ、昔のゴールドと同じ意味合い(p184)

    ・お互いに保護貿易でビジネスをすれば当然アメリカが強くなる、アメリカの言い分としては、他国と同じように保護貿易に切り替えるということ(p189)

    ・自動車業界は、モジュラー化が進み、白物家電やパソコンと同じように電気自動車が製造されるようになれば、自動車業界の構造自体は変わる、インテル・グーグルの下請けになってOEM企業になり下がる(p198)

    2017年12月3日作成

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著者プロフィール

日・米・欧で活躍するファンドマネジャー。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了後、ドイツ・ケルン大学、イギリスLSEに留学。野村総合研究所研究員、ロンドンのチェース・インヴェスターズ、ニューヨークのAIGグローバル・インヴェスターズを経て独立。欧米ファンドのグローバル株部門でトップクオーターを続ける成績をあげる。これまで訪問した日米の会社は1500社を超え、その徹底した現場主義には定評がある。著書に『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』他多数あり。

「2019年 『米中壊滅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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