空色勾玉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
4.00
  • (365)
  • (364)
  • (276)
  • (40)
  • (4)
本棚登録 : 4206
感想 : 351
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198931667

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『おすすめファンタジー』として紹介されていたので手に取ってみた!
    おもしろかったし、これがデビュー作といわれると驚くしかない。
    日本神話が詳しくなくてもそのままたのしめる。

    『巫女』というと特殊な能力があるのかな、と期待してしまっていた辺りが現代創作もので作られた脳みそだったのかな、と読み終わってから思ってみたり。
    でもね、鎮めの技ってなんだったんだろうな……

    目覚めたちはやがかわいかった!

  • 日本の神話を現代によみがえらせ、なおかつ卓越した想像力で壮大なファンタジーを描いてみせた衝撃のデビュー作。

  • 日本神話を題材にしたファンタジー小説。小学生の頃に読んで、日本史に興味を持つ子供になっていればよかった。


     歴史知識のある大人では純粋にわくわくできないのが悲しい。まぁだいたいこんな感じの征服者の横暴が跋扈したのが古代日本史だろう。空想だけど、リアル。

     中沢新一さんの解説がおもひろかった。

    _____
    p523 「昔々」という神話論理
     神話の論理とは、非現実を正当化する言葉である。神話にも、その世界の理がある。その理は決して破綻してはいない。現実的な理に基づいて、現実世界とは異なる可能性世界は運営されている。だから神話は空想だけれど、リアルなのである。
     古代の人にとって神話はもう一つの現実だった。現代人からすれば理解は困難だが、「昔々」という魔法の言葉を使って、もう一つの現実である神話を語り続けてきたのである。神話は現代にも引き継がれている。それは、これまで生きてきた人が神話を非現実と思いながらも、どこか現実として認めて語り継いできたからである。
     「昔々」という言葉は魔法のことば。この文句から始まることで、人々は「かつて存在したこともないし」「今も存在しないし」「これからも存在しないであろう」別の現実世界の物語を神話の論理で進めることができるようになる。人々はこのキーワードでリアルという縛りから解放されて、神話に心奪われるようになる。

    p528 ファンタジーの中世
     中世がファンタジー小説の題材になることが多いのは、中世は近世に入る直前であるから。近世の産業社会の準備をしながらも、その問題に本格的に入り込んでいない、理想状態の世界だからである。という。
     現代に繋がる可能性を秘めたファンタジーを語るにあたって、中世の終わりが分岐点に適しているのである。だから中世でif世界を語ることで、世界の変革や現代社会への批判のメッセージを込めるのである。

    p531 西欧ファンタジーのテーマ
     日本神話と西欧神話のテーマ性は違う。荻原規子はそこに気づき、ペンを執ったのだ。
     西欧ファンタジーは「力(権力)の起源はどこか」がテーマである。指輪物語のように、ホビット達が国家や権力を持たずに自然と調和して平和に生きてきた世の中に、力で支配を進める者が侵入してきたという展開である。権力がせめぎ合って作ってきたヨーロッパの歴史へのアイロニーなのかな。
     日本神話には「力」に限らないテーマがあるという。それが、「部族や家系による国家の軌跡」である。天皇家の支配に戦争はあったが、一大征服戦争はあったとは記録されない。力でねじ伏せて、王として君臨するという「強者の正義」は語られない。征服戦争は勇者の証として意気揚々と語られそうなものだが、逆に隠されている。国譲りは血塗られた歴史ではなく、婚姻関係などの交渉取引によって行われていったという残し方がされるのが日本神話。
     日本神話は光と闇の物語とされる。朝鮮から渡来した天皇家の文明という「光」が、自然に調和した非合理な土着民の思想(死の矛盾)である「闇」を照らしていく。光に照らされて行き場を失う闇の姿は、固有の文化を破壊される者のように見えるが、文明によって合理化される遅れた人々の空虚感なだけなのである。合理化に伴う、非合理を失う切なさ。それが日本神話。

    p535 荻原規子のテーマ
     萩原規子は光で照らすものと、それを受け入れられない闇の者の間に立つ仲介者を描くことにテーマを持っている。日本神話『記紀』には記されなかった仲介者を探求する、そこに価値があるという。なるほどね。

    p536 要約
     この物語の世界は、世界創造の男神と女神が作り上げた舞台である。しかし、火の神出産で女神は命を落としてしまう。それを悲しみ、死の世界に男神は女神を救いに行こうとするが、そこで見た女神の醜い姿に絶望し、死の世界と断絶することになる。そうして、生と死、光と闇の世界は互いを憎み合うようになり、敵対し戦に発展するようになった。そして物語が始まる。天上の男神は自分の息子である照日王(太陽)と月代王(夜)の二人を地上に遣わして、女神の生み出した霊を殺し、天上の光が隅々を照らす国家を作ろうとした。
     この両対極にある二つの対立を軟着陸させる存在を見つけ出し、描ききったのがこの作品である。
     地上に残された女神の末裔である狭也と、天上の男神の子でありながら闇の事に関心を持った稚羽矢という、若い仲介者による事態の解消が描かれている。

    _____

     この物語の良い所は、日本神話を土台にしているから、日本神話の興味関心を持つキッカケに最適だということだろう。

     いきなり難しい名前ばかりの古事記とかを読み始めるのは難しい。だからこの物語で概要を掴みつつ、好奇心を高める。それからチャレンジするのがよいだろう。児童文学としてGoodだと思う。

  • 1988年に発表されたというのに驚きだった。
    今も違和感なく読めて、とても面白かった(●^o^●)

    神さまが地上を歩いていて、普通に生きているというのが、おもしろいなと思った。
    また、輝と闇の争いという背景が、とても素敵だった。

  • 元々は1988年刊と相当前の作品だが、たまたま私は上橋菜穂子氏の「獣の奏者」を先に読んでいたので、冒頭から相通ずる雰囲気を感じた次第。
    「日本書紀」と「古事記」、いわゆる記紀をベースに独特の世界観を描き出しており、登場人物は、地上に住み日々過ごしている普通の人々はもちろんのこと、そこに何と神たちまでが加えられている。
    ギリシャ神話に登場する神々が、欠点や短所を備えた人格を持つ、まるで等身大の人間かのように随所で表現されていることはよく知られているが、この作品における輝の大御神や闇の大御神、照日王に月代王といった神たちもそれと同様に、人智を超えた特殊能力を無論有している一方で、読んでいる途中に「あれ、彼らは人間じゃなくて神なんだよね?」と自問してしまうほど、"人間ぽく"設定され、描写されている。
    そしてそれが物語の味を引き立てるスパイスとして見事に効いていて、生命が有限であるからこその美しさや、壊れやすくかけがえのないこの世界そのものの意義といった骨太のエッセンスが、ズドンと真っ直ぐ読者の心に響いてくる。

  • ファンタジーって好きだけど、日本のファンタジーって読んだことなかった。古事記・日本書紀を元にして書かれたファンタジー。面白かった!

    神様たちのお話だけど、人間っぽくて好き。輝の大御神(男)なんて、闇の大御神(女)が好きだったけど、腐乱した状態を見て嫌いになった。でも闇の大御神が、自分より子どもたちのことを慈しむもんだから、嫉妬してる。赤ちゃんに嫉妬するお父さんだ(笑)

    光と闇。不死と黄泉がえり。天と地。男と女。

    いろんな相対するものが出てくる。それらをつなぐ、水の乙女と風の若子のお話。

  • ファンタジーが読みたくて検索していたら高評価だったので読んでみました。

    日本の神話がベースになっているところは新鮮でした。
    そうですね、ただ少し求めていたものと違ったのか、自分の中でそれほど盛上りはなかったのですが、登場人物の名前や、文章の美しさにはひかれるものがありました。

  • これをきっかけに荻原規子さんの勾玉三部作を一気読みすることになりました。

  • 児童書。中学生から、と書かれているが、小学校高学年でも読みこなせると思う。歴史ファンタジー、しかも日本書紀・古事記の時代の。予備知識はほとんど必要なく、楽しく読み進めることができる。古代日本語って美しいなと感じることができる。
    どこから見つけてきて、読む本リストに入れたのだろうか?

  • 日本の神話をベースにしたファンタジー。子どもの頃に読んだ神話の中の黄泉の国や天照大神を久々に思い出しました。万の神の国、日本。昔の人はいろいろなものに神様を見出したのでしょう。そして、そういう感覚を日本人は大切に代々引き継いできたのだなぁと改めて思いました。
     光に焦がれる闇(くら)の氏族の狭也と、それに反する輝(かぐ)の御子稚羽矢。大蛇の剣によって二人の運命はよりあわさっていくのですが、若い二人は共に未熟で、岩姫や伊吹王の寛容さに救われ、己を見出していきます。狭也が、争うことに葛藤し、己の無力さに打ちひしがれ、悩みながらも前を向いていこうとするまっすぐさを持っているなら、稚羽矢は まだ何色にも染まらない真っ白な純粋さをもっています。そんな二人がお互いを必要としているのに引き裂かれてしまったら…。
     終盤、一気に読ませる、素晴らしいファンタジーでした^^

全351件中 91 - 100件を表示

著者プロフィール

荻原規子・東京生まれ。早稲田大学卒。『空色勾玉』でデビュー。以来、ファンタジー作家として活躍。2006年『風神秘抄』(徳間書店)で小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞(JR賞)、日本児童文学者協会賞を受賞。著作に「西の良き魔女」シリーズ、「RDGレッドデータガール」シリーズ(KADOKAWA)『あまねく神竜住まう国』(徳間書店)「荻原規子の源氏物語」完訳シリーズ(理論社)、他多数。

「2021年 『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

荻原規子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
村上 春樹
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×