本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • / ISBN・EAN: 9784198937065

感想・レビュー・書評

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  • 出だしは良かった。「言葉には力がある」、確かにそうだ。「スピーチライター」?、そんな職業があるのねぇ。と、とても期待が膨らんだものの、途中から、嫌な予感・・・

    この本はもう何年も前に「読みたい本リスト」に入れていたにも関わらず、ずっと手に取る機会もなく、積極的に読もうともしていなかったところ、知人が貸してくれてラッキーとすぐに読み出した。

    幼馴染の結婚式がきっかけでスピーチライターという職業を知り、関わっていくことになる主人公こと葉。こと葉がスピーチライター久遠久美の事務所に通うようになり、話が「政治的」になっていき、思っていた物語の内容と違ってきたので、少し驚いた。この「政治的な」話は、「スピーチ」というものの重要性を説くうえで必要であって、一時的に政治的な話にページを割いているのかな、それにしてはなんだか作者の政治的な考え、政党批判が表に出すぎてないかな、なんて思っていると、ガッツリ政治の話になった。

    正直、苦手分野である。こんな歳で情けなく、恥ずかしいことでもあるが、政治にそんなに興味はない。(興味はないけれど、だからといって政治が先述した「嫌な予感」に直接つながったわけではないけれど)

    それでも、人の心を動かすスピーチ、後世まで残る名スピーチがあることからもスピーチの重要性はすんなり納得できたし、スピーチライターという人がいて、政治や選挙に関わっているということ、それもちょっと関わっているというのではなく、選挙戦ならば状況を左右するほど関わっているということを知ったのは、単純に新鮮でおもしろかった。
    今まで考えたことがなかっただけで、言われてみればスピーチをする方のプロではなく、スピーチ原稿を書き上げるプロやスピーチの仕方を伝授するプロがいたって何の不思議はないのに。

    「政治かぁ、選挙かぁ」とブツクサ思っていた私も、選挙戦を追っているうちに、こと葉と同じように、
    「選挙って、ちょっとおもしろいかもしれない。自分たちが動けば、世の中が変わるかもしれない。」
    と思った。それだけでも、私としては大収穫。

    ただ、こんなに人気で評判の高い作品について、こういってしまうのもなんだけど、私の中ではそこまで評価が高い小説ではなかった。ここが「嫌な予感」の根本原因。たくさんの人が「良かった」「感動した」「大切な一冊になった」と高評価をつけている作品に、自分があまり馴染めない悲しさというか。私ってどこか変なのかな、と一瞬思ってしまったり。

    なんといったらいいのだろう、こと葉にとって全てがうまくいきすぎ、というのか、環境に恵まれすぎ、というのか。初っ端から、友人の結婚式の場だから偶然とはいえ、大企業の社長さんと話す機会があり、典型的な一般庶民の私からしたら「え?主人公もセレブ?」なんて浅い感想を持ってしまい、さらに祖母は高名な俳人で、家族ぐるみで付き合いのある幼馴染のお父さんは議員さん・・・会社では抜擢され、仕事のできるちょっといい男にプロジェクトチームに誘われ、スピーチライターの師匠についていくうちに野党党首にも新人なのに期待されるわ、ついには爽やかイケメンの幼馴染も立候補することになり、スピーチライターとしてサポートすることになるわ・・・ってどんだけトントンやねん!と。ひがみですかね、これは。フィクションだから、と言ってしまえばそれまでなんだけど、まぁ、現実味がなくて。

    だからなのか、それとも私に原田マハ作品が(あまり)刺さらないからなのか、どっちなのかわからないけれど、感情があまり動かされなかった。こう、感情というものに表面があるとしたら、その表面を「感動しそうな場面」や「感動的な言葉たち」がスルスル~と滑っていっちゃう感じだった。私の感情の表面を滑っていっちゃうだけだから、私の感情は不動・・・そんな感じだった。

    なにしろスピーチがそんなに響かなかった。

    とはいえ、思わず涙ぐむ場面は2~3回あったのだけれど、全体的には「う~ん」というか・・・。「惜しい」というのも変なのだが、ちょっとそんな感じ。私がよっぽどひねくれているんだろうな(笑)前にもどこかで書いたけれど、小川糸さんの作品を読んだ後と同じような感覚がある。高評価なのに私には刺さらない。

    あ、でも読んで損した、とかはないです。機会があれば喜んで原田マハさんの作品を読むだろうと思います。

  • このお話は、タイトルと出だしからいって、結婚式のスピーチに終始するOLのお話かと思ったら、全く見事にいい意味で裏切られました。
    作者の原田マハさんは、ユーモアのセンスも程よくて、なんて引き出しの多い作家さんなんだろうと思いました。

    主人公のこと葉は、何もないところから、一人前のスピーチライターになっていくところが凄い!と思いました。
    こと葉の師匠であり上司になる久美との関係。
    厚志、ワダカマ、こと葉の戦いぶりと友情もよかったです。
    スピーチで世界を変えるという久美も、全くもってカッコいい。

    そしてまた、最後のしめには、またしてもマハさんに「やられた!」と思いました。
    脇役のおばあちゃんや厚志の父や恵里ちゃん、千華なども、皆とてもいい味を出していて、読んだ後で、気持ちがあたたかくなる大変素敵なお話でした。
    今まで読んだマハさんの小説の中で面白さでは私はぴかいちだと思いました。

    • まことさん
      ご紹介ありがとうございました(^^♪
      でも、マハさんの本がだんだんなくなっていくのが、ちょっと淋しいです。
      ご紹介ありがとうございました(^^♪
      でも、マハさんの本がだんだんなくなっていくのが、ちょっと淋しいです。
      2019/06/09
    • まことさん
      そうですねっ!私もゆっくり、どんどん読んでいきたいと思います(^^♪
      ありがとうございます!
      そうですねっ!私もゆっくり、どんどん読んでいきたいと思います(^^♪
      ありがとうございます!
      2019/06/09
  • サクサク読めるお仕事小説 スピーチが題材
    初めての原田マハ先生 ブクログで繋がってる方々の本棚に多い作者 なぜかエッセイストさん?と思い読んだことなく この本は評価も高そう 読んでみよう

    タイトルと最初のスピーチの極意十箇条 スピーチの話かな?
    挿入される代表質問 弔辞
    じっくりと同僚千華結婚式のスピーチを作り上げる話かと思ったらすぐに本番 おもしろい名前の人物
    こと葉のスピーチ 序盤100ページ以内で泣かされるとは
    後半は選挙選挙 ワダカマは今川陣営のサポートしてていいのか?最初と最後の久美さんがカッコ良すぎる!

    電光石火、理路整然、軽妙洒脱、拍手喝采、私は号泣。
    『静』のひと文字

  • ちょっとこれ、これは凄かったです!

    原田マハさんの本は、割とたくさん読んでいると思います。『楽園のカンバス』に始まり『まくだらやのマリア』『生きるぼくら』『ジベルニー…』『ロマンシエ』『デトロイト美術館…』『…ゲルニカ』など。
    さんざん読んで、でも結局は『楽園の…』を超えるものってないのかな?なんてことを思っていた私が愚かでした。
    大傑作『楽園のカンバス』とは全く別のジャンルで、こんなに面白くて感動的な一冊があったとは。

    作中のスピーチ、結婚式のものから国会の代表質問、葬儀のスピーチに選挙戦でのスピーチなど、どれも素晴らしすぎて、読みながら何度も感動して涙腺が決壊しそうになりました。

    それにしても、この本を読むと、政治家の中には今川君や小山田さんのように本気で「この国をもっといい方へ変えていきたい」という意欲を持って立候補した人も大勢いるはずなのになあ…と、首をひねりたくなります。

  • 本日は、お日柄もよく、いつの間にか感動の涙を流しました。
    言葉の力が凄すぎて、圧倒的なまま頁が終わる。
    こんなに響く臨場感のある言霊は私はまだ知らない。
    文句なしの最高の言葉たち。
    文句なしの最高の小説。

    本日は、お日柄もよく、良き小説に出会いました。

  • とても爽やかなビジネスエンタテインメント作品。数々の素晴らしいスピーチは、心をうつとともに、非常にためになる。ビジネス書としてもかなり機能しそうな内容でした。

  • 浜田マハさんの本は、読みやすくてグイグイ入ってきて好きです。
    この小説は、スピーチライターという仕事を通じて「言葉が持つ力❕」を描いており、言葉を大切している著者の想いも伝わってきて、とてもよかったです。
    ぜひぜひ、読んでみてください

  • 9月に部署が変わった。
    新しい部署新しい出会い。

    8月にこの本を読んだ。
    このタイミングで読んだことに
    意味があるんだと思った。

    自己紹介も、一つのスピーチ。
    「●●から異動してきました、キョーです」
    今までの自分なら間違いなくそんな入りの
    自己紹介をしていたと思う。

    10カ条を意識して、
    出だしで人を聞く気にさせる自己紹介が
    少しはできた気がする。

    もっと人前で話す経験を積みたい。
    この本を読んで本当にそう思った。

    人におススメしたい本No.1です!

  • いやほんと面白かった!そしてタメになる!
    つつがなくOL生活を送っていたこと葉が、ひょんなきっかけが重なりスピーチライターとなり成長してゆく物語。笑いあり涙あり知恵ありの傑作。
    政治の裏側、言葉を操るスピーチライター達のガチバトル。おもしろい。
    それでいてキャラクターも豊か。満足の☆5です。
    この本のすごいところ。それは明日から活かせる、話に聴衆を引き込むコツが溢れている。
    なぜつまらないスピーチは眠くなるのか、記憶に残るスピーチはどういった特徴があるのか。
    もう、話が長すぎて生徒が寝てしまう、全ての校長先生に読んでほしい。
    それでいて、政治知識まで身に付く。今タイムリーなこともあってお勉強になりました。
    小説としておもしろい上、聴衆を引き込むコツ、知っておきたい政治知識まで織り込まれている。
    こんな読み得な本、他にありますか?いや、ないです。おすすめしまくりたい1冊になりました。

    • ちゃたさん
      こんばんは。ちゃたと申します。魅力満点のレビューを拝見し再読したくなりました(^o^)
      久遠さんがまさにマハさんそのもので、マハさんってこう...
      こんばんは。ちゃたと申します。魅力満点のレビューを拝見し再読したくなりました(^o^)
      久遠さんがまさにマハさんそのもので、マハさんってこういうスピーチするんだろうなとか、自分がマハさんから手解きを受けているなとか始終感じました。本当に一押しの本だと思います。
      2023/12/15
    • ゆうりさん
      ちゃたさんこんばんは!コメントありがとうございます!なるほど!久遠さんの言葉、とても染みて小説の中で1番好きなキャラクターでした(*´꒳`*...
      ちゃたさんこんばんは!コメントありがとうございます!なるほど!久遠さんの言葉、とても染みて小説の中で1番好きなキャラクターでした(*´꒳`*)
      2023/12/16
  • 原田マハさんは本作が初読み。
    同作家さんは、ずっと気になりつつも美術を題材にしたものはどうもハードルが高くて尻込みしてしまい、先ずはこちらの作品から読んでみることにした。


    「スピーチライター」
    いやぁ〜本当に凄い仕事だ!!
    何度も胸が熱くなる作品だった。

    言葉を操ることが人の心を動かすんだってことがダイレクトに伝わって来た。言葉の豊かさ、スピーチの素晴らしさ、ときには言葉の力で世界を変えられることもあるのだ。作中に出てくるスピーチで、何度もリアルに鳥肌が立った。

    物語は、言葉の業界には素人である主人公 こと葉目線で進行する為、読みやすくて面白い。
    読書しながら、久しぶりに声に出して笑ってしまった。
    通勤電車で読む方は、特にお気を付け下さい笑
    こと葉が涙する度に、私も同じ箇所で涙腺が緩んでしまって、何度も泣いたり笑ったり・・・
    もしや、こと葉と同人種かも?と思った。

    私も過去、友人の晴れの舞台で何度かスピーチを引き受けたことがある。当時は、スピーチの基本とか何冊か読み耽って挑んだが、マニュアル本よりも本作と出会ってたらよかった〜と後悔。
    そうすれば、きっと何かが違っていたはず!と思いたい。
    まぁ若かりし頃の初々しいスピーチは、あれはあれで良いものだと思うことにしよう。これから引き受ける時は、そうはいかないけれど笑

    ずーっと気持ちが盛り上がったままで、ラストは更に素敵なオチまで用意されてて、最高の読後感だった。
    作者が言葉ひとつひとつを吟味し、丁寧に紡いで、まっすぐに読み手に伝えている作品だった。

    いやぁ〜原田マハさん恐るべし・・・
    これは、他の作品も絶対読むしかない!!
    しばしこの余韻に浸っていたい。
    出会えたことに心から感謝したい一冊だった。


    以下、特に印象的だったフレーズ

    困難に向かい合ったとき、もうだめた、と思ったとき、想像してみるといい。
    三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。

    だって人間は、そういうふうにできているんだ。とまらない涙はない。乾かない涙もない。顔は下ばかり向いているわけにもいかない。歩き出すために足があるんだよ。

    君のお父さんとお母さんがきみに与えてくれた体を、大切に使いなさい。そして心は、君自身が育てていくんだ。

    ほんとうに弱っている人には、誰かがそばにいて抱きしめるだけで、幾千の言葉の代わりになる。そして、ほんとうに歩き出そうとしている人には、誰かにかけてもらった言葉が何よりの励みになる。

    • アールグレイさん
      はなちゃん★こんばんは

      本日はお日柄もよく、読まれたのですね!
      私もこの本が初原田マハでした。図書館本で読んだのですが、本を返したくなくな...
      はなちゃん★こんばんは

      本日はお日柄もよく、読まれたのですね!
      私もこの本が初原田マハでした。図書館本で読んだのですが、本を返したくなくなりました。購入本なら良かったと何度も思いました。「三時間後の君、涙は止まっている。二十四時間後の・・・・」涙なしでは読めない本。
      でも、原田マハさんの作品は間違えると難しい本を選ぶので、フォロワーさんに聞いています。「風のマジム?」かな「アノニム」だったかな?「キネマの神様」もいいと聞いています。探してみてね!
      2023/11/16
    • はなちゃんさん
      アールグレイさんこんばんは。

      コメント&オススメ本のご紹介
      ありがとうございます!
      アールグレイさんも、本作がマハさんデビューとは奇遇です...
      アールグレイさんこんばんは。

      コメント&オススメ本のご紹介
      ありがとうございます!
      アールグレイさんも、本作がマハさんデビューとは奇遇ですね(*´∀`*)
      初マハさん感涙でした。
      また一つ世界が広がりました。
      当分周りの人にも紹介してまわると思います♪

      次回マハさんは、みなさんのレビューをもとに、じっくり検討したいと思っています。
      まだアート系と長編には、なかなか手が出ないですが(^^;;
      ファン層も大勢いらっしゃるようなので、ブクログ様様です!!
      2023/11/16
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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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