- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784254209815
作品紹介・あらすじ
第1章では「可視化の歴史と現状」について述べることにしました。可視化の源をたずねますとはるか縄文時代にまでさかのぼっていくように思います。そこで、縄文土器に見られる美しい渦模様から考察を始めて、近代科学の眼を通して古代文化に学びつつ、約5000年の昔に夢を馳せていただくことにいたしました。ついで、近世に戻って、実際に可視化技術を利用して近代科学の発展に貢献した6人の方を選び、その業績をエピソードを含めて、興味深く記述してみました。最後に可視化の利用の現状について概要が述べてあります。第2章では「流れと可視化」というタイトルで、まず流体の力学の基礎について解りやすく解説してあります。ついで、可視化の実際として、いろいろの現象について、可視化写真を眺めつつ、現象をどのように理解していくかを懇切丁寧に説明してあります。最後に、実際に可視化するにあたって、注意すべき事柄が述べてあります。第3章「可視化記録と機器」では、まず"写真の撮り方"として、撮影条件の整備、撮影機器と材料、撮影の実際、撮影後の処理について説明され、つぎに"ビデオの撮り方"として、ビデオ制作の概要、撮影機器、撮影、撮影条件の整備、編集、編集装置について説明され、最後に"特殊な記録法"として、高速度カメラの解説、これを使った流れの可視化応用例、高速度撮影の実際、赤外線・紫外線の記録などにわたって詳細に述べられています。なお、実際に利用されるのに便利なように、巻末に現在市販されているカメラ、ビデオの一覧表の掲載しておきました。
感想・レビュー・書評
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空気や流れの可視化に個人的な興味があり、読みまくっていた。層流と乱流を見分けたオズボーン・レイノルズ、超音速を可視化したエルンスト・マッハ、境界層を考え出したプラントル、カルマン渦、どれも衝撃だった。
物体の受ける力、球のまわりの流れ、マグナス効果、流れの表し方を研究するにつれて、スポーツにおける動力学や流体力学へと没入していく。原子までのミクロのレベルでの応用例を考えると、結局は、芸術や哲学にたどり着いていくのが面白かった。火焔土器、ゴヤの名画、尾形光琳、そして万能の天才レオナルド・ダビンチ。この本は、物理屋にとっては名著であり、すべては流れの中にある。熱力学や量子力学も含め、粒子と波動をどのように包括的に捉えていくのか、それに対する哲学的な解釈はとても面白いのだ。AIや「頭のいい生き方」を定義しようとするいまの日本人には、こうした本を書いたり、理解できる人はいなくなるだろう。基礎研究を疎かにして国の経済発展などあり得ないのに。詳細をみるコメント0件をすべて表示