弱いロボット (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
3.84
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本棚登録 : 528
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260016735

作品紹介・あらすじ

ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。

感想・レビュー・書評

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  • 映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい手を差し伸べたくなるような愛嬌あるロボット達から教えられたことがたくさん。

    簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。

    • sakana37さん
      映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい...
      映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい手を差し伸べたくなるような愛嬌あるロボット達から教えられたことがたくさん。

      簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。

      2012/09/20
  • ロボットと聞くと何でも助けてくれるドラえもんや、とっても強くて見た目も人間と変わらないアトム、もしくは今現代のハイテクなロボットを思い浮かべるかもしれない。

    しかしながらこの本で出てくるロボットは

    よわい

    外見も一つ目小僧のようなロボット「む~」

    ひょこひょこ歩いてゴミを見つけては人にすり寄る「ゴミ箱ロボット」

    はなんとも外見も中身も不完結で弱そうに見える。「できないならやってもらばいい」そんな他力本願なロボットたち。

    しかしそんな弱いロボットが人は愛くるしく思え、まるで子供をあつかうかのように、彼?(彼女なの?)らとお話をしたり、ゴミを捨ててコミュニケーションをとるのである。

    ロボットの低い目線を通して、コミュニケーションとは何か?弱さとは何か?が書かれている。

    行為の意味は相手に受け取られるまで「不定」になってしまう、しかしながら相手が応答groudingしてくれることにより意味を持つ。

    ロボット=物理的に何かをしてくれるのではなく、ロボットを介して人が成長していく=彼らの弱さが人の発達を助けている。ロボットと人間が対立したり上下関係を築くのではなく双方向の学びを築く。

    周囲に身を委ねながら1つの行為を作りあげていく、そんな弱いロボットをわたしたちに置き換えて考えてもいいのではないだろうか。

  • 出版されてから10年も経っている本をもう一度手に取って読んでみた。
    ロボットに求めるものは何かをもう一度考えるきっかけになった。不完全であるが故の良さという捉え方もあり?

  • ロボットというのは人間がやると一生かかるような計算でも一瞬で答えが分かるような反応を求められているはずが、この本に出てくるロボットは確かに「弱い」。
    ただ、「弱い」=「悪い」というわけではなく、弱いからこその価値、弱いロボットだからこそできることというのがあるという、特に理系や、パソコンを使い慣れている人ほど考えたこともないロボットの使い方というのがこの本には溢れている。

    人の話した言葉に、反響的な模倣を返す(こんにちは〜という問いかけに、むむむむむ〜と返す)『む〜』というロボットが、子供やお年寄りに取ってとてもチャーミングに映るという例を見ると、ロボットは単に人間にできないことをする、というだけではないことに気づく。
    もちろんロボットだから計算されてはいるのだが、計算されていないような反応を人は求める。

    ただ、本の構成としてはなんか起承転結というわけでも、時系列に並んでいるわけでもなさそうで、最初の方に出たロボットの説明があとの方でされたり、一度話したことに似た内容があとでも出たり、割とランダムに出てくる感じがある。一応章立てになっているが、徐々に内容がわかってくるわけでもない。なんか不思議な構成。かと言って不満があるわけではなく、どこから読んでも楽しめる、小説の短編集みたいな感じを受けた。

    こういった、「弱い」ロボットとのやり取り、言い方はアレかもだが、人間同士の原始的なやり取りに近いものを見ることで、逆に人間同士のやり取りが実は如何に高度なものか、実はどれほど難しいことを無意識にやっているか、どれだけの要素が内包されているかなどを考える良いきっかけになる。そして、自分のそういったやり方が実は正しくはないのかもしれないと気づくかもしれない。

    この本が啓蒙の用途で書かれていないのは分かるが、なんか人の振り見て我が振り直せ的な、弱いロボットを知って人間を知る、という感じがした。

  • ロボットといえば、人間の代わりに何の作業をしてくれるものなのか、どのように便利なのかと性能や機能、または、どれだけ人間らしいか、を見るものだと思っていた。そして、医学書院のシリーズ「ケアをひらく」でロボットといえば、介護の代わりのロボットなのか、話し相手、遊び相手の代わりになるロボットの話なのか、などなど想像してしまったけれど、これは違う。目から鱗の連続だった。まず、人間が「何気なく」している会話は、まずロボットにはできない。その「何気ない」に焦点を当てることから始まるこの本書。ロボットは言い淀みをエラーとして処理してしまうが、人は言い淀むことを前提に話し始めるのだ。会話はお互い相手の不足分を支えたり、不足分を委ねられたりして進行する。相手が返してくれると思って言葉を発し、返してくれなければ不安になるし、返さなくてはならない責任も感じるものである。そして、ただ歩くという行為でさえ、地面に委ね、地面に支えてもらっているという不安定さがあると、本書にはある。また、「支えてあげるもの」「守るもの」があって、人は成長することがある。ただ色を指摘するだけのロボット、ゴミを集めたいのにゴミを拾えないロボット、それらに対して、今まで弱者でしかなかった人が、教える側にまわって、少し変わっていくし、そんなロボットが人と人のコミュニケーションの触媒となっていく。人は1人では生きてはいけない。改めてそれを、ロボットという無機物を通して再確認する1冊だった。

  • 「毎日新聞」(2012年9月30日付朝刊)の「今週の本棚」で
    紹介されていました。
    (2012年10月1日)

  • 【何も出来ない、けど一緒にいる。そこから始まるコミュニケーションを俯瞰してみられる本】

    誰かが一緒にいてほしい。でも、自分の行動で相手が離れたら嫌だ。
    そんなおもいを、ロボットが穏やかに埋めてくれるかもしれない。
    そんな思いが感じられた本でした。

    人と一緒にいるときに無意識のうちにしていることは何か、子供が自分以外の未知の存在に対してどう関っていくのかを、ロボットを通じて語った本です。

    私のお気に入りは「む〜」ちゃんと子供たちとのやりとりです。む〜は何か動くわけでもないけれど、目のようなカメラで子供達を見つめながら、リアクションをします。
    それを見て、子供たちが

    「この子はどこから来たの?」
    「お腹空いてるのかな」
    「眠いのかもしれないね」

    と、まるで年下の子供の面倒を見るような姿をしたというのです。

    それがとても愛おしくて、
    何も出来ない、けどそこにいるだけでも価値を産めること。

    そして、子供の中にある大人が周りの人へどう接しているかを良く見ているのを感じるやりとり。

    穏やかに人間がロボットと関わる中でどんな不思議なやりとりが生まれるのか、気になる人におすすめの本です。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB10094985

  • [ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。]

  • 身体とコミュニケーションについてとても深く考察された素晴らしい本。
    「私たちは地面を歩いていると同時に地面が私たちを歩かせている」というのはとてもハッとさせられました。
    読んで損はない一冊だと思います。

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著者プロフィール

豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授

「2022年 『知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承1 ロボット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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