- Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260020282
作品紹介・あらすじ
認知症ケアの新しい技法として注目を集める「ユマニチュード」。攻撃的になったり、徘徊するお年寄りを“こちらの世界”に戻す様子を指して「魔法のような」とも称されます。しかし、これは伝達可能な《技術》です。「見る」「話す」「触れる」「立つ」という看護の基本中の基本をただ徹底させるだけですが、そこには精神論でもマニュアルでもないコツがあるのです。開発者と日本の臨床家たちが協力してつくり上げた決定版入門書!
感想・レビュー・書評
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新聞の書評で気になった一冊。介護の現場で支援する側と受ける人たちの関係性によって、驚く程の機能回復を導くことができるという、ゆえに”Humanitude ユマニチュード”は魔法か?との表現にもなる。
基底となる考え方は、個人への尊厳と、慈愛の情、介護という立場ではなく人と人との対等な関係性。イラストと簡潔な文章で書かれる内容は、言われてみると至極当然なのでが、これが実際にできているか。
印象に残る内容が一つ。生まれたての赤ん坊とあなたはどのように接しますか。伝わる伝わらざるにかかわらず、目を見て話しかけ、これから意思を持って育っていくであろう柔らかく小さな存在に、敬意と慈愛を持って接しているではないか。介護を要する人々も同じ。
既に他界した母の最期は、意識なく寝たきりの状態で、特養にて支援していただきました。訪れるたびに介護していただいた方から、「昨日お話していたら、目の反応がちがうのよ、声も出たのよ」と。改めて皆さんのご支援に感謝申し上げたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2014年の報道特集で放送された映像をネットで見て、初めてユマニチュードを知った。とても衝撃と感動を覚えたので書物で読みたくなったのだ。包括的コミュニケーションに基づいたケアの方法で、①見つめること②話しかけること③触れること④立つことが基本の4つの柱だ。人としての尊厳を大事にするという行為を精神論ではなく技術でするから誰にでもやろうと思えばできる。自分もやがて認知症になる可能性は十分にあるので、こんなケアを誰もができるようになればと思う。
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認知症の人に対するアプローチを教えてくれる本。医療や介護に関わる人は全員が読んだ方がいいと思う。もちろん介護が必要な家族がいる人たちにも読んでほしい。
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1時間あれば読み終わります。絵が多いので。とっかかりとしてはいいと思います。ユマニチュードの基本は 1.見つめること 2.話しかけること 3.触れること 4.立つこと
です。それぞれ技法があります。
そして、具体的なケアは 1.出会いの準備 2.ケアの準備 3.知覚の連結 4.感情の固定 5.再開の約束という手順を踏みます。基本的な人間関係や子育てにも通ずるところがありますね。 -
帯には「認知症ケアの新しい技法」と銘打ってありますが、表紙カバー裏には、「ケアを必要とするすべての人に使える、汎用性の高いもの」と書かれていて、読了した僕にもそう思える内容でした。<人は、他者から人として遇されなければ「人たる特性」を持つことができません。あなたが私を人として尊重し、人として話しかけてくれることによって、私は人間となるのです。>『ユマニチュード入門』裏表紙カバー裏の文言。 母親を介護している身としてそのとおりだと思うし、大切な前提でしょう。人間扱いしなくなることによって、被介護者は人間性を無くしていき介護がどんどん困難になっていくし、介護するほうもそんなふうに人を扱うことで人間性をなくしすさんでいったりもする、つまり悪循環。「いわゆる効率化」で、被介護者の気持ちを考えずに抑制したり拘束したり無理に手をつかんでひっぱっていったりしてしまうけれど、ユマニチュードの方法論で「いわゆる効率化」をやめると、被介護者が人間性を取り戻していき介護がうまく回るようになっていくようで、これはほんとうの効率化になる。実践は難しいことは難しいけれども、とくに介護する側のこころに大きくやわらかくポジティブに作用するのがユマニチュードだと思った。怒鳴ったり、無理に掴んでひっぱっていったりするのって、自分の本意に反する点でまず介護する側のこころがやられるし、そういう行為に慣れたら慣れたで道を踏み外す選択を不可抗力的にしてしまったことになります。ユマニチュードの哲学、方法論、技術は、うまく世間に浸透していくと超高齢社会の光になるのではないか。
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ケアを行なう人々がケアの対象者に「あなたのことを私は大切に思っています」というメッセージを常に発信する。これが哲学としてのユマニチュード。
精神論でなく、極めて具体的で実践的、技術であること。そして、すでに感情を閉ざしてしまったひとに対しても、第三の誕生を促すことができるのだという記述に救われる思いがした。実践すればいいのだ。合理的でいてとても温かい。
[more]<blockquote>P032 「人間の獣医」になってはいけない
P043 「見ない」は「居ない」
見る技術:水平に/正面から/近くで/時間をかけて(上から/横目で/近づかずに/ちらっと見るのがもっともネガティブ)
P060 反応のないひとへのアプローチテクニック
話す技術:依頼/予告/実況中継
P064 必要な行為でも攻撃にしか感じられない
触れる技術:ひろく(飛行機の離着陸のように)/ゆっくりと(一定の重みをかける)/感覚野の小さい背中や腕などから
5歳児の力以上は使わない
P076 1日20分立位のケア
持ち上げない
P085 「第三の誕生」をもたらすために、ケアをするひとたちは、そのための技術を身につける必要があります。
P090 責めるのではなく変えればいい
よかれと思って懸命やっているのだから
P093 出会いの準備 ケアの準備 知覚の連結(見る話す触れるの2つ以上を行なう。矛盾させない) 感情の固定(いい気分を残す・確認する) 再開の約束
P100 合意が得られなければ諦める 3分以上かけない
P107 しっかり視線を捉える
P131 記憶できないひとには再会の約束を書き留めておく</blockquote> -
イラストが多く、ユマニチュードについての入門書として、大変わかりやすかったです。
あくまでも、入門書といった雰囲気ではあります。 -
介護現場において、人間の尊厳を大事にするケアということはどういうことか、それを技術化したのものがユマニチュードだと理解した。
日本にも優れた介護者はたくさんいるのだろうが、そういう人々のケアの手法は技術化されておらず、またそうしようという努力もほとんど行われていないのではないか。
優しい心が大事など、精神論が語られるばかりで、ケア手法や業務改善や環境改善の工夫が行われないため、もっぱら看護師や介護士に過剰な負担がかかり、燃え尽きてしまうのではないか。
優しい心も技術化・メソッド化してしまえば、伝達可能となる。
優れた技術として、たくさんの介護者に教えることができると同時に、介護する相手にもそれを伝えることができる。
高齢化の先進国であるはずの日本が、まずやらなければならなかったことのはずである。