- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260042345
作品紹介・あらすじ
会話がうまくできない、雑踏が歩けない、突然キレる、すぐに疲れる……。病名や受傷経緯は違っていても、結局みんな「脳の情報処理」で苦しんでいる。高次脳機能障害の人も、発達障害の人も、認知症の人も、うつの人も、脳が「楽」になれば見えている世界が変わる。それが最高の治療であり、ケアであり、リハビリだ。疾患ごとの〈違い〉に着目する医学+〈同じ〉困りごとに着目する当事者学=「楽になる」を支える超実践的ガイド!
感想・レビュー・書評
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表紙から医療についての本で、自分には関係ないかと思っていました。しかし読んでみると参考になることが多く書かれていました。
HSPの傾向が強い、不安が大きくなりやすい、そのことと、日常生活で脳がどう疲れて、どういう症状が起きやすいのかの関係がよく分かりました。
当事者の視点で、ユーモアもまじえて書かれているので、読みやすく実践的です。
ルポライターをされているとのことで、社会に切りこむような視点は少しはらはらして、男性ならではのように感じました。
日常生活をふり返り、生活の工夫をながら、何回か読み返していきたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ライターである著者が脳梗塞後の高次脳機能障害の当事者体験と、援助者へ向けてのお願いを綴った一冊。
カラフルでポップな表紙と、語り口調から手に取りやすいですが、内容はしっかりと(!)ケアについての中核を語っています。
「ケアをひらく」シリーズは医学書とは違って専門用語の羅列なしに読める援助者へ向けたシリーズなのですが、本書は「脳コワさん」と著者が称する「高次脳機能障害」の人たちにスポットを当てた本です。
病前は実際に当事者からヒアリングをして記事を書いていたという著者ですが、そんな「実際に接する体験」を持つ人であっても、やはり当事者になってみて初めて気づいたことが多いということに、まず、この症状の複雑さ・難しさを感じました。
知識として知ってはいても、実際に当事者が感じていることのほんの少ししか理解はできていないものなんですね。
たとえが工夫されていることもあり、具体的に当事者が感じている不自由さ、情動などが想像しやすいところが著者ならでは、のポイントでしょうか。
確かに風にあおられながらグラグラの自転車を漕いでいるところに、色々と言葉を浴びせられたりすると転んでしまうよなあ、と思いつつ、実はどんな生活の場面でも接することの多い「受付」が鬼門であることにも驚きました。確かに受付の人って、脳コワさんでない我々からしても早口で聞き取りづらいし、忙しいとピリピリした雰囲気があったり、キビキビした”全能感”の漂う人を怖いと感じている人もいるのではないでしょうか。
個人的には、「健常者・障害者」や、「疾患のある人・ない人」に関わらず、やっぱり切羽詰まっていたり体調がすぐれなかったり、落ち込んでいたりすると過ごしにくい、「社会的な場面特有のやりにくさ」について、今いちど考え直してみて、誰でも極力ストレスなく日々を過ごせるようになることが一番だな、と感じました。
それは障害者福祉といって障害者に健常者が「譲歩する」とか、「やってあげてる」、「あわせてあげてる」、とかではなくて、皆が過ごしやすい社会にすることだと思うし、何よりそういうギスギスした場面とか誰かが困っている状態を放置して、出来る人だけ進んでいく社会って、なんか違うな、と思うんですよね。
日常的に意識していないとやってしまいがちな「相手から出てこない言葉を自分の言葉で置き換える」、「苦しい、不自由だという訴えを“できてますよ”と言って(訴えそのものを)否定してしまう」などは覚えておいて(語弊がありますが)損はないですね。
考えてみれば、普通に誰かと会話していて「いや、困っている風には見えないし、出来てるよ」って言うのは訴えそのものを否定しているし、寄り添えていないんですよね。でも、相手が「リハビリをしている人」だとそういう言葉を言ってしまいがちなんですね。
これはかなり盲点というか、なるほどなと思わせられた点でした。
脳コワさんに接する時だからこうする、脳コワさんだから特別な配慮をする、ではなくて、本当は誰かと会話をするときは相手の話調子を見ながらの方がいいし、ゆっくり・はっきりと話せるほうがいいよね、ということにも繋がっていくのではないでしょうか。
ある意味で最近注目されてきている「発達障害」が特別視されていることと同じく、「脳コワさん」が特別視されるが故に、それが高じて差別や特別扱いにつながらなければいいな、と思いました。
「そういう人もいるよね」と受け止めて、「じゃあどうしたら困りごとを減らせるのか?」という視点に立てたらもっと両者ともに苦労せずに済むのかもしれません。
かねてから気になっていた「最貧困女子」や「されど愛しきお妻様」の著者さんだったんですね。
またこちらも読んでみたいです。 -
例えがあってとても分かり易い。
「人の言葉は情報のムチ」
苦しさを否定することの罪
待つこと、全肯定すること、尊重すること、
父が脳出血で意識の障害があり
少しの時間面会ができた。
母は「お父さん、どうしちゃったの!
答えてよ、目を開けて!」と言った。
私はみていて、話したいけれど話せない
目を開けたくても開けられないのでは
と思った、想像だけれど。
その後色んな本を読んで見た。
脳がコワレタ、という著者の本には
これだけはやらないでほしいこと
援助する人にわかってもらいたいことが
具体的に書いてあった。
全てできないけれど、最大限父のパーソナリティを
尊重したいと心から思った。
急に全てがわからなくなったわけではない、
表情から感じ取れること
口を動かして伝えようとしていることは
すごくよくわかる。
理解したいし、本人の意思を尊重したいと思う。
社内にも脳疾患を患ってから復帰してる人がいる。
周りの理解があるのと、ないのでは違う。
知らないことばかりだったけれど
知ることで、できることがある。 -
この方は後遺症としては間違いなく軽度だろう。
脳卒中後、自宅に退院し執筆業に戻った点からも明らかである。
しかし、「軽度」に一体何の意味がある。
間違いなく病気によって損なわれたものがあり、苦しんでいる人がいる。「軽度だから気にしなくて大丈夫。良かったね。もっと大変な人がいるよ。」とでも言おうか。
「苦しい」と思っている人がいる。そこに耳を傾けて、目を向けるような医療者になりたいなと読んで思いました。 -
全医療従事者の必読をおすすめします。
当事者の方が医療従事者向けに書いた本。
病院というところが『とっても特殊な環境』であることに気づくことができます。
この本に書かれていることを知っているか否かで、医療の提供の仕方が大きく変わります。
自分の提供している医療が、本当に当事者の方のためになっているのか?自己満になっていないか?
と、とても考えさせられました。
当事者の方からの歩み寄りに応えていけるよう、日々の関わり方を改めることができました。
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かなり当事者の様子がよくわかる内容だと思います。
高次脳機能障害が中心。発達系は似たり寄ったりで、参考になるところもあり。
当事者が読んで理解を深めたり、自分で支援したりというのもあるけど、
やっぱり支援者さん界隈におすすめというか読んでほしい内容だと思います。
文章を書くお仕事だったから、病気のあとでもここまで書けるんだろうなあと、すごいなあと思いました。 -
2階書架 : WL348/SUZ : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410166762
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疲労が蓄積されるからではなく認知資源が減少することでしんどくなる。だから何もしていなくても疲れる。脳コワさんは認知資源の最大値が少なくなっているため常人よりも限界が早い。なるほど。
告げるべきは病名ではなく「何ができて何ができないのか」それこそが当事者の知りたいことであり、援助者が根気よく見守るべきポイント。それには膨大な時間を要するので医療者というより周囲にいる全ての人が援助者としての心構えをもつべし、と。あと「人を頼れる人になる」というのは誰にとってもライフハックだなぁ。
*自閉症の方への応対は脳コワさん全般に適用できる、と。 -
生きるのがちょっと楽になりそうな方法や工夫が書いてあって、良い本だった。
脳がコワれていない普通の人が、脳コワさんの不安や困難を想像しやすいような比喩が使われていて、分かりやすいと思う。
例えば、感情が制御できないぐらい大きくなってしまう症状で、当事者が必死に耐えているのに、
p32
「我慢できない」「すぐ怒る、すぐ泣く」といった言葉にされたならば、、正直当事者としては心を閉ざすしかありません。
p33
怒りなどのマイナスの感情を自分の中に抑え込むことは、火傷しそうに熱いものを吐き出すことができずに喉元にため込むような、そのこと自体にリアルな苦しみを伴う
あぁ、これは苦しそうだ。こうやって比喩にしてもらうと、想像がつきやすい。
個人的に心に残ったキーワードは「特性を障害化」と「環境調整」。
どんな人でも、様々な特性があって、それが障害化するかどうかは、社会による、ってことだと思う。
そして、困ったことが困らないようになるための「環境調整」。これは平たく言うと「工夫」なのだと思う。
楽に生きられる工夫を探していきたいな。
あと、興味深かったところ。
p91より
「障害者差別のある当事者が障害を抱えたときに(「俺は障害者になんかなってない!」みたいな)告知する言葉なんかあるのか?人権教育から始めるしかないのか」と思考硬直した僕にとって目から鱗だったのが…
答えは本書で。 -
著者は元々健常者で、脳梗塞後に高次機能障害を患いました
社会福祉系を主に取材するライターさんで発達障害に明るく、病後の体験をエッセイとして書かれています
本書は高次機能障害を患ってから発達障害者の気持ちが理解できたと話しています
読んでいて「そうそう、嫌な気分がこびり付いて離れないし、書類手続き一つとってもマトモに進まないんですよ。そして周囲から理解は得られませんから(笑)」とクスッとなりました
支援者のあの関わり方が嫌な気持ちにさせられますよね、とか当事者へ向けて書かれた説明がどうにも癪に障るような表現なんですよね、など同意出来すぎておもしろくなります
当事者からすれば「そうなんです、そうなんです」と首を縦に振りっぱなしで、慣れてないと都度ショックを受けてしまうだろうなあ、と見守る目線になれました
発達障害を客観的に見ることもでき、本書は健常者、発達障害者の両方の気持ちを探れる、覗ける一冊です