STAND―立ち上がる選択

著者 :
  • いのちのことば社
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本棚登録 : 48
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784264025917

作品紹介・あらすじ

レイプ被害から立ち上がり、全米で性暴力被害者の写真プロジェクトを展開した日本人フォトジャーナリスト。

感想・レビュー・書評

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  •  レイプ被害から立ち上がり、全米で性暴力被害者の写真プロジェクトを展開した日本人フォトジャーナリスト大藪順子氏の手記。
     彼女は、自宅でレイプ被害に遭い、辛い状況下で、葛藤しながら、新しい家、新しい仕事、新しい教会を選択していく。彼女のフェアな陳述書が裁判官の心に届き、加害者には20年の刑が下される。また、彼女は加害者に手紙を書き、投函したことで、うつからも解放されるのだ。
     その後、写真プロジェクト「STAND:性暴力サバイバー達の素顔」を立ち上げ、70人ものサバイバーに直接取材をして撮影し、写真展や講演を行っている。一人ひとりの被害や、思いが丁寧に書かれており、本書の中にもサバイバー達の写真が載せられている。
     読み進むほどに、彼女は立ち上がっていき、読者も、彼女と一緒に立ち上がっていくことができる。そして、皆が立ち上がる力を、自分も立ち上がる力を持っていると気付かされる。
     最後に、あとがきの著者の言葉を紹介する。

     「この本が、泣寝入りを強いられている性暴力被害者へ届くことを願っている。その一人ひとりが、世界でたった一人の特別な存在であること、つらい経験があるからこそ、被害後の人生をもっと輝いて幸せに過ごすことが可能であることに気付いてもらえるように祈りつつ。」

     被害に遭ったのが自宅というところや心身の不調に気付いたのが被害から1年もたってからというところが自分と同じで分かるわかると読んでました。彼女の本に勇気づけられて、読んですぐに私も被害現場の自宅から引っ越しをしました。
     読む前は、アメリカ生活が長い著者とは文化的にも思想的にも感覚が違って読んでも違和感しかないのかと偏見を持ってしまっていましたが、被害者の苦悩に国境はないなと思いました。

  • 著者の、強姦被害に遭ってから回復し、立ちあがるまでの手記。
    迷いや力強さを感じる。

  • とっても勇気ある著者です。たくさんの方に読んでほしいです。

  • 読んでよかった。こういう立ち上がり方もあるんだなあと思った。強いなあとも。そして、キリスト教の神についても考えさせられた。しかし、性犯罪の多いこと、刑罰が軽いことは問題である。問題であり続けている。加えて、被害者の尊厳の回復や人権保護は当たり前のことなのに、セカンドレイプなどが依然としてあり、被害にあったら被害後も苦しめられるような状況がある。性犯罪被害の場合、表に出て意見を主張したり、自己の経験を語ると、好奇の目でみるおばかさん達が絶対に存在する。そのような恥知らずを気にしない強さは本当は必要ない。被害者が声を大にして権利を主張しなくても、救われるような体制がもとよりあれば、被害者が必要以上に強くならなければならないこともなくなるだろう。精神的苦痛を味わった上に、事後にも苦痛を増やさないように、刑罰を重くすべきだし、出所後の対策も厳重にすべきだ。嫌悪感を声高に主張しなければ意志が伝わらないほど、一部の人間の想像力は摩滅していると思うと、恐ろしい限りである。

  • 「婦人公論」昨年7月22日号の小林美佳さんとの対談も拝見しました。

    大藪順子、この名前も私たちは決して忘れてはならないでしょう。

    去年12月15日(月)夜の滝川クリステル主演の報道番組の性加害者のドキュメントで今全国の刑務所に性犯罪服役者は3,500人いて繰り返す再犯率が11%だとか。

    甘いなって感じです。実際はこの5倍はあるはずです。要するに、泣き寝入り、というか、ただひたすら隠蔽工作に懸命になるばかり警察に届けることはもちろん、親兄弟や友達に話すこともできないで、闇から闇へ葬り去られることの方が圧倒的に多いと思います。

    ここ数年、様々な出会いの中で、堰を切ったように積年の苦悩を露土する方々に接する機会がありました。

    76歳の上品な女性が50年前の事件を語り、43歳のキャリアウーマンが17歳の時の恥辱を話して下さり、女子高生が中学生の時の変態教師のことを、怒り心頭口角泡を飛ばして持っていたナイフを喫茶店のテーブルに突き刺して語ってくれました。

    被害体験を語る・・・確かにそれは普通の常識的な感覚では躊躇してしまう、そんなことはとんでもないことかも知れません。誰にも言わず一生自分だけの秘密にして葬り去りたい、という例がおそらく過去、人類史上数十万件いや数億万件に及んであったと思います。

    戦乱の世はもとより平和な泰平の世の中でも、鬱屈した男の暴力的な性の欲望は、私たちのすぐ身近な顔見知りの「あいつ」にも存在するのです。

    小林美佳さんもそうですが、お二人の勇気に対して冒瀆するとか茶々を入れるとかいうことでは決してありません。

    そして、レイプは魂の殺人です、という深い訴えを、単なる被害者の達観した思いのようにだけにして終わらせたくない、と思っています。

    そう、いつまでも、このまま、またどこかで被害者を現出させる、自然の成行きに任せてなるものか、と言う決意が必要なのではないかということです。

    とにかくまず、この「レイプ」という男の性暴力が身近に存在するという認識を持つこと、そして防衛のための方法も伝授するということを、幼稚園はもちろん小学校・中学校・高校で正規の授業で扱う、ことが男性教師の反対に会うなら、密かにでもいいでしょう、女性教師が女子だけを集めて性教育ばりに行うこと。

    女性に生まれたことがイヤになることが時々あります。それは、私は精密な日記を幼稚園の頃から書いていますが、それによると痴漢にあったのは78回、レイプ寸前まで行ったことが18回、この世の男はみんな変態か変質者と思っていいという実体験をしています。

    ただ勝気な私は、一番最初から黙ってされるがままではいませんでした。義理堅い私は、必ずきっちり受けた屈辱の十倍以上の報復をしています。

    最近の電車の中での痴漢には「骨折り損のくたびれ儲け」という教訓をプレゼントしています。行為に及んだ指をねじ曲げてへし折るとか、少しの空間があればひざか足で金蹴りを贈って、何人かはその場で失禁とか、狂ったように大声で泣き叫ぶ、という具合ですが、こんな風な隠密裏の反撃ではなく、私自身が半狂乱になって仕返しとして公然と対決、金蹴りや髪をつかんでむしり取ったり、顔を爪で掻きむしったり、その後は、何か必ず武器を持つようにして、たとえばサランラップや旧式ファックスの紙の芯は硬くて丈夫で力を込めれば相当の威力を発揮しますし、一本の箸で必殺仕事人ばりに眼潰しの効果を出すこともできます。実際に、顔をボコボコにしたこともありますし、6人の眼に命中して失明したかもしれません。(私って残酷?)

    最初少し抵抗しても、すぐ力尽きて力が抜けて恐怖に慄いているような感じにしていると、油断してくるので反撃がしやすい。大男というか体力的にも歯が立たなそうなバカでかい男は、自信過剰が多いので、ナイフかカッターで身体のどこかを切り裂いてやれば、俄然恐怖に恐れおののきます。

    とにかく無駄な抵抗はしないで、されるがままに恐怖のあまり何もできませんって風に見せかけて、だが冷静にどこでどう反撃に出るかを計画し、瞬時に圧倒的にコテンパンにやること。これを私は、まだか細い・ひ弱な少女時代から実践してきました。

    もしかしたら18人の私の愛しのレイプ犯のほとんどは、障害者か性的不能者として一生をお送りあそばすかもしれません。(レイプ犯に相応しく、自業自得ですが)それほど激しい徹底的な報復・反撃をした覚えがあります。血だらけにしたことはもちろん、骨が砕ける音を記憶して、もって励みとしています。

    いざ、忌まわしい痴漢やレイプに寛大なこの男社会を改善し、この世からなくなる日まで私たち女性は闘わねばなりません。そして、レイプしようとすると、もしかしたら殺されるかもしれない、という意識を彼らに植えつけなければなりません。

    (尚、上記の文章には多少以上の誇張やフィクショナルな部分があるかもしれませんので予めご了承下さい)

  • 自宅でレイプにあった著者が、さまざまな人に支えられながら、あきらめず、自分しかできないプロジェクトをしようと思い立つまでのプロセスがよく分かる。「一人の力は小さいように見えるけど、実はすごく大きな意味がある。小さい一人がどんな状況でもあきらめないことによって、周りもがんばろうと思ったりするような、そんな連鎖反応が大きな力を生み出していくと思うの。(本文 p.166)」写真がとても美しい。性被害にあった人が何を求めているのか、私たちがその人に対してできることは何なのか、が考えることができる。080306読了。

  • 2008.2.16
    神さまはいかなる時も私達と共に居られ、私達が求めれば、適った時にいろんな形で助けを与えてくれる・・・。

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