傷を愛せるか

著者 :
  • 大月書店
4.17
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本棚登録 : 715
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272420124

感想・レビュー・書評

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  • 後ろめたさや醜い感情も含めての自分を生きていく、その手助けをしてくれる本。

  • 結構良い本だったと思うけど積読でダラダラ読んでたのもあって印象に残った部分が思い出せない エッセイとかであっても付箋をつけながら読むのを習慣にしたい
    人生は基本苦であって人に傷つけられたりあるいは人を傷つけたりしながらそれでも私たちは生きていかねばならない訳ですが、日々生まれるそういった傷に対して一つ一つ丁寧に向き合っていきたいですね

  • 傷を否定せず、傷と一緒に生きる、弱さを受け入れ生きる。
    タイトル見ただけで、それを言わんとしている本なんだろうなと思った。そう教えてもらい、楽になったことを思い出した。

    筆者は精神科医師。トラウマ、DV、性的虐待が専門。
    医学界新聞に書いたエッセイだそうです。

    私は大きなトラウマ、傷を負って、生きるか死ぬかみたいなことを経験してきていないけど、擦り傷、切り傷くらい?の傷をつくってかな?と思う。人に傷つけられること、人との軋轢、人との違いで、自分で自分を傷つけること。

    傷、自分の負の部分、痛みや悲しみを人はよくないものというし、それを表には出せない空気がある。
    そうした周りの空気が一層、本人を苦しめる。
    そんなの当たり前とふつうに受け止めたらいいのになぁ。

    例えば、転んで、膝をすりむいて、血がだらだら流れたら、かさぶたになるのを眺めて、治るのを見守る。傷のあとが残る傷も、ずっと痛む傷も、時々うずく傷も、いろいろある。
    自分の身体にできた、痕跡とは上手に付き合っていくもの。
    そうやって、心にできた見えない傷とも付き合っていく。

    世界との違和感、傷を抱えた人を見てきた、作者の目は客観的であり、優しい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「作者の目は客観的であり、優しい。」
      微妙な差異も見逃さない鋭い視点を持ちながら、片一方に寄り過ぎないのが素晴しい。
      「作者の目は客観的であり、優しい。」
      微妙な差異も見逃さない鋭い視点を持ちながら、片一方に寄り過ぎないのが素晴しい。
      2013/07/25
  • 付箋をぺたぺた貼りながら読む。有意義で充実してなきゃいけないんだなあ、のんびり、スカスカじゃだめなんだなあ、そういうのは「無駄」と見なされるんだなあ、とひそかに反発を感じる著者に共感する自分もいれば、人生の終わりに 有意義だったと想いたいと明言し、常にそれを判断材料に生きている人を眩しく思う自分もいる。
    変わるときには閉じなければいけないのだ。というのは、個人的にお守り的な言葉だな。
    人は傷の上にやさしさを、やさしさの上に、強さを築くのだ。たぶん。

  • 丁寧な言葉、大切な仕事

  • 「ははがうまれる」がとても良かったと話したところ、同じ筆者のこちらのエッセイを勧めてもらった。
    自身の身辺について書いたものが多いのだけど、「ははが〜」と同様、押しつけがましくなく、人に寄り添う姿勢がいい。
    心臓を優しく撫でてもらっているような気分。
    他の作品も読みたい。

  • 精神科医、医療人類学。開くこと、閉じること。繭のなかの変態。冷静に観察すること。「なにもできなくとも、見ていなければならない。」だれかが自分のために祈ってくれること。エンパワーメント。肉体労働、頭脳労働、感情労働。ヴァルネラビリティ。「スタンドアップ」鉱山のセクシャルハラスメント。など

  • 心を癒してくれるパワーを持った一冊。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心を癒してくれるパワー」
      寄り添うと言う形容がピッタリな人だと思いました。。。
      「心を癒してくれるパワー」
      寄り添うと言う形容がピッタリな人だと思いました。。。
      2013/07/25
  •  著者が精神科医であり、さらにこのタイトルからすると、ひどくまじめな本に見えるが、これはエッセイである。軽いとかいい加減という意味ではないが、学術的な本ではない。

     著者は心のどこかで、常に客観視し続けている自分に恐れにもにた感情を抱いている。だけど、その「見ているだけ」という行為が誰かのためになることもあると、肯定に意識を転じることもできる。それは客観視ゆえの性質だと思う。

     研究をしたり臨床をしたり、旅に出たり、著者はその客観的な視点でものごとを見つめている。それは一見非常にクールだが、やはり心に負担はあるようた。でも著者は前を向いている。その視点が心地よい。
     精神科医でも悩み、考え生きているんですよ、と示されており。いかに患者に寄り添う仕事なのか考えさせられる。

     「ホスピタリティと感情労働」は、「肉体労働」でもなく「頭脳労働」でもなく、日常で感じている感情を出している振りの己へのダメージについて書かれている。「感情労働」なんて単語を始めて聞いた。しかし読むと「なるほどなぁ……」と思う。

     「見えるものと見えないもの」は、オカルトについてわたしが懸念する「見える人」にとって見えるものが、わたしにはわからない。証明できない。それゆえに、そこに拠り所を求められない(=実感できないから)ということ、例を用いて、実にわかりやすく説明してくれていて、すっきりした。
    (ちなみにオカルトは否定しないけど、わたしの判断する領域じゃないなと思っている。わからないから)

     書籍のタイトルにもなった「傷を愛せるか」は、著者の傷(トラウマやPTSD)に対する真摯な気持ちが伝わり、エッセイというより祈りにも似ている。
     冬の香りがする良書。オススメ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「エッセイというより祈りにも似ている。」
      確かに、そうでうね。
      今、噛み締めるように読んでます。
      「エッセイというより祈りにも似ている。」
      確かに、そうでうね。
      今、噛み締めるように読んでます。
      2013/07/25
  • 最初のほうは鬱鬱した紀行の味わい。
    いじましいとかそういうんじゃなくて「鬱蒼とした」とか「曇天」の重さ。
    なんとなくアン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈物』を想起した。

    後半は『週刊医学界新聞』に連載されていたというエッセイ。
    論文では取りこぼしてしまうモヤモヤ。
    脆さ・傷・付け込まれやすさ…弱点となりうるもの、を、抱えておきたい。
    抱えた人を切り捨てる社会を容認したくない。というようなこと。

    出てくる本や映画や場所のすべてに触れてみたくなる。

著者プロフィール

宮地尚子(みやじ・なおこ)一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は文化精神医学・医療人類学。精神科の医師として臨床をおこないつつ、トラウマやジェンダーの研究をつづけている。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。主な著書に『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)がある。

「2022年 『傷を愛せるか 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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