スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296107711
#DX

作品紹介・あらすじ

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「求められているのは発想の転換だ 」
―――東京大学大学院工学系研究科教授、松尾 豊氏

「これから始まる二回戦、日本にはすごいチャンスがある」
―――早稲田大学大学院経営管理研究科教授 入山 章栄 氏
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「次戦に備えて日本が採るべき戦略とは」


デジタル庁創設で出遅れたデジタル化を急ぐ日本政府、
DXを果敢に叫び、コロナ禍を生き延びようとする日本企業。

日本が抱えてきた課題を一気に顕在化せしめた新型コロナは、
容赦ない変革を日本企業に突きつけています。
グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップルといった
いわゆるGAFAと呼ばれる企業群はコロナ禍を追い風に変え、成長を加速させています。

完全にGAFAに覇権を握られ、生きる道を失ったかに見える日本企業。
そして、「失われた30年」を過ごしてきたと言われる日本企業。
しかし、本当に日本は失うだけの時間を過ごしてきたのでしょうか。

「選択と集中」ができなかった日本には、技術や人の多様性が残りました。
そして、これこそが今から始まる二回戦で大きな武器と変わるのです。

GAFAが寡占したかに見えるデータは実は一部。
二回戦はハードウエアに強い日本企業に大きなチャンスをもたらします。
活用されていない貴重なデータの多くが現実世界に眠っているのです。

本著で紹介する「スケールフリーネットワーク」は20世紀後半に発見された、
比較的新しいネットワーク理論です。

この理論をビジネスに応用することで、
イノベーションを起こす土壌を作り出すことができます。

スケールフリーネットワークを実践してきた東芝執行役上席常務・最高デジタル責任者で、東芝デジタルソリューションズ取締役社長を務める島田太郎氏、『アフターデジタル』や『DeepTech(ディープテック)』などのベストセラー本を通じて日本が進むべき道を照らし続けるフューチャリストの尾原和啓氏が、スケールフリーネットワークがもたらすインパクトを解説します。

感想・レビュー・書評

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  • 有形資産を持っている会社は大体スケールフリーネットワークの実践を考えているとは思う。けれど「どこまで自社技術を提供していいのか」で悩んでいるのではないだろうか。ここで情報提起してくれている東芝さんは実際にスケールフリーネットワークの仕組みを実践しているので、参考になると思う。

    また、これからどうDXを進めたらいいかについて、定義→定着→展開の3ステップで描かれており、それらの東芝さんでの実践についても書かれている。ここも参考にされたい。

    全体を通し、シーメンスから島田さんがきたことにより、「東芝内では当たり前になりすぎていたものが価値化した」点が大きかったように思う。中にいる人が別の視点から物を見ることは難しい。別の点に光を当て、それに価値があると伝え、実際に次のビジネスにしていく。こうしたことを求められる外部人材登用役員が今後も増えていくように思う。

  • これはスゴイ本だ。
    今年のマイベストの中に入ってきそうな予感がする。

    スケールフリーネットワークという概念自体をよく知らなかったけれど、
    この本によると元ネタは、複雑系や「新ネットワーク思考」という書籍に詳細が書かれているようだ。
    こちらの本も読みたくなってきた。

    ※新ネットワーク思考
    https://booklog.jp/item/1/4140807431

    さて、本題。

    GAFAに代表されるようなネット企業に負けっぱなしの日本企業(主に製造業を想定)ですが、
    これからは、サイバーの世界とフィジカル(現実)の世界を繋いだ2回戦が始まり、
    その際に大事になってくる考え方が「スケールフリーネットワーク」。
    この戦いには戦い方次第では日本企業にもチャンスがある!というのが著者の主張です。
    ポイントは、イノベーションが起こる「場」をつくるということでしょうか。

    そして、著者はそれを実際に東芝で実践されています。
    東芝と聞くと、原発ビジネスで大コケして、粉飾もあって、
    もうとんでもない企業というイメージかもしれませんが、
    そこからトップが変わり、デジタルに強い著者も招聘し、
    会社のDXを進めているようですね。
    こういった改革はトップのコミットなくては進みませんが、
    東芝の改革は期待が持てそうな気が個人的にはします。

    次は、皆さんの会社だ!ということで、製造業に勤める人は、
    今後の会社の変革のトレンドを押さえる意味でも
    有意義な(というよりマストな)一冊だと思います。

  • 東芝、島田さんの考えがわかる本。
    サイバーとフィジカルの融合、その中でどう日本企業は戦っていくか、ということがテーマ。

    個人的には後半の松尾先生との対談が面白かった。

    スケールフリーネットワークを作る。

    ユーザーが欲しいものはユーザーが一番わかっている、ユーザー体験を提供するのではなく、ユーザーがことを生み出せる場を提供する

    米お金を投じる、EUデジュールスタンダードに続く、規模に頼らない方法がアセットのオープン化、みんなを呼び込みスケールフリーネットワークを作る。

    サイバーの世界ではGAFAに大敗したが、フィジカルの方が圧倒的に規模がでかい、両者を融合した世界で日本企業は勝機あり。

    スケールフリーネットワークが作れればマネタイズのポイントはいくらでも見つかる。大事な技術は自社で持っておけばいい。どうやって儲けるかを書かないところがやはりポイントですね。

  • 東芝社長(当時は役員)の島田太郎と、京都大学の人工知能研究者の尾原和啓の共著。「スケールフリーネットワーク」を起点とした日本企業のDXの方向性について論じた内容となっている。

    「スケールフリーネットワーク」とは、ノートルダム大のバラバシ教授らが発見した現象で、ランダムネットワークとは異なり、大多数のノードがごくわずかなリンクしか持たない一方で、膨大なリンク持つノード(ハブ)が存在するという、ネットワークの形のことである。
    これにより多様な要素が繋がりやすくなり、イノベーションやパーコレーション(何かが飛躍的にネット上で広がる現象)が起こりやすくなるとされる。

    著者らはインターネットの普及と日常化フェーズである「一回戦」は、北米企業の独り勝ちとなったと振り返った上で、現在の世界のビジネスはあらゆるフィジカルなものがインターネットを介してつながるフェーズ「二回戦」に移りつつあるとする。

    一回戦では「広告」「小売」がサイバー化したが、これはGDP構成比では8%に過ぎない。
    対してこれからの主戦場となる製造業はGDP構成比で25%と、はるかに規模が大きい。
    だからこそ衰退する日本経済はきたる二回戦に備えて、自社の製品を中心としたスケールフリーネットワークを構築し、本当の意味でのDXを遂げなければならない、というのが本著の主張。

    この主張は安宅和人『シン・ニホン』でも著されていたもので、目新しいものではない。しかし、本著では島田氏がシーメンスや東芝での経験や事例を踏まえて書かれているため腹落ち度が高いと感じた。

    JTCのDXは非常に難易度が高い。保守的な社員が多い上にデジタル能力が低く、そもそも経営陣がDXとはなんたるかを理解していない。これではDXなど何年かかってもできない。

    本著ではDXの手順を「定義」「浸透」「展開」としているが、これを丁寧に、粘り強く進めていくしかないと感じる。
    自分も典型的JTC、かつFAを担う企業に籍を置く身として、DXと製品をコアとしたサイバーフィジカルを推進していきたいと思う。

  • フリースケールネットワークとは、大多数のノードがごくわずかなリンクしか持たない一方で、膨大なリンクを持つハブとなるノードも存在するネットワーク。つまり、スケールフリーネットワークは各ノード間に極端な「格差」が存在する不平等な世界。(p.43)

    ノード数とリンク数は「べき乗則」のグラフとなり、アマゾン・ドット・コムのロングテールのようになる。(p.46)


    何が起こるか予測できない世の中では、スケールフリーネットワークが持つ多様性が大きな強みとなる。(p.47)

    アマゾンは、ほとんど売れないような膨大な商品も用意しておくことで、「アマゾンで探せば何でも見つかる」という状態を作り上げ、顧客を集めた。リアル店舗ではできないスケールフリーを、オンラインの強みを生かして実現した。

    スケールフリーネットワーク上では、一部のハブが膨大なリンクを持ち、強大な力を発揮する。逆に言うと、少数のリンクしか持たないノードが無数に存在する。(p.48)

    企画を標準化する方法は3つある。アメリカ式の「お金を燃やす」(巨額の資金を投資する)形。ヨーロッパ式の「デジュールスタンダード」(何年もかけて関係者で話し合って規格を決め、標準化団体に登録する)の形。

    日本が採るべき戦略は「アセットオープン化」。自社製品の一部をアセットを先に開放し、あるいは仕様を公開して、誰でも接続可能にすること。多大なコストも時間もかけずにスケールフリーネットワークを作れる強力な手段。(p.76)

    日本はいわゆるデジタル世界競争の一回戦では負けてしまった。この一回戦は、いわゆるGAFAが出てきた時代。二回戦はサイバーフィジカルの時代。周りにある様々なものがネットにつながっていく時代に入るので、全然勝負が変わってくる。モノとモノがつながったり、人とモノがつながったりするため、良いモノを作れなければならない。(p.196,197)

    ただデータを集めたら勝ちという時代は一回戦。二回戦はデータをユーザー体験に投資していく戦い。(p.198)


  • 東芝の新社長が書いた本! と期待値が高すぎたのかも知れない。
    シンニホンと言ってることが重なる
    新しい言葉を作っているが、今あるものを言い直しただけに感じた。
    この本を読むならNewsPicksで、島田氏の単独インタビューを読んだ方が面白い。

  •  GAFAはネットの世界で価値を爆上げしてきたが、まだ殆どはリアルの世界がある。これからはリアル部分のDX化が進んでいきGAFAも狙っている。リアルの世界の多くは製造業となり、製造業の割合が多い日本にチャンスがあるという内容。
     そしてなぜDXしていったのかをスケールフリーネットワークという視点から解説。

     GAFAがやってきたことをフィジカルでキャッチアップしていければアセットを多く持つ日本企業にもチャンスがある。
     それにはDXが肝となり、そこに持っていくマインドセットが必要。(ここが一番難しいところ)
     例えば、デジタル化を進めていくと、省力化となり、その結果売り上げが下がる現象がでてくる。(ここでみんなついて行けなくなる)
    旧来のビジネスモデルを崩しているのでビジネスモデルの転換(マネタイズの場所を変える)を考えていく。小さな成功例をたくさん作ることで皆にマインドが広がっていく。
     本書では東芝のDX化の例がでているので参考になるのでは。

  • ハブとなるプラットフォーム作り
    スケールフリーネットワークは人モノ仕組み問わず無限に繋がれる
    継続性と膨張性を持ったネットワーク

  • シーメンス幹部の座を投げ打ち、厳しい経営環境からの復興を目指す東芝に転身した島田太郎さんが主に記述しています。

    スケールフリーネットワークや島田さんの目指しているイノベーションの世界、ものづくりに強い日本だからこそできる世界を論理的かつ明快に描いている素晴らしい著書です。

  • 2024年2月24日読了。現東芝社長の島田太郎氏と尾原和啓死による、ものづくりに知見のある日本にいかに今後の世界で優位に立てる強みがあるか、を語る本。「スケールフリーネットワーク」の概念が少々わかりにくいが、要はロングテールのこと?こだわりの少品種展開がニッチ顧客に刺さればすごいことになるよ、ということだと思うが少々楽観的シナリオに過ぎる気もする…。それを実現できるミッションやカルチャー、人材を持っているような会社がないのが日本の問題なんだと思うが。逆転の可能性を信じてがんばっていくしかないわな。

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著者プロフィール

東芝執行役上席常務・最高デジタル責任者。90年に新明和工業に入社し、航空機開発に携わる。PLM(製品ライフサイクル管理)を手がけるシーメンスPLM(当時SDRC)へ。同社の日本法人社長を経て、シーメンスのドイツ本社に勤務。その後、日本法人の専務としてインダストリー4.0を推進。東芝では、事業のデジタル化の責任者としてDXを推進している。

「2021年 『スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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