窓の灯

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 438
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (119ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017372

感想・レビュー・書評

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  • 第42回文藝賞受賞、青山七恵のデビュー作。
    向かいのアパートの部屋の窓をのぞく、という設定は、すごく私のなかの好奇心を刺激しました。
    私のあずかり知らぬところで、全く無関係に、誰かが生活している。
    そんな人たちの、矛盾や、欲望や、幸せと不幸せを暴きたいという気持ち。
    ただただ純粋なその気持ちが、まりもとミカド姉さんという、とても小さな世界で淡々と揺さぶられていました。

    筆致には、島本理生の「シルエット」のような感触がありました。
    むだのない短い会話文が逆に新鮮だった。
    グラスにまとわりつく朝露のような水滴とか、ずるがしこいネオンとか、描写する上でそれらを選びとる作者の視点が好き。

  • 図書館がコロナ対策故に閉じられたことにより、どこかで買うかと渋っていました。
    言葉に溺れて言葉が下手でどうにも言葉を見ることが怖くなって言葉から遠退きました。それでも、ラジオが流れてきたら国語辞典を手に取り、相手に何かを伝える時に筆記をすれば文字を繰り、誰かとの関わりの中で言葉をうまく使おうとすると避けることは違いました。
    ずっと暇な時間があり、本が置かれてあり、本を手に取ることになりました。文章に目を通す。でも、うるさくて進められない。読んでいても流す。そんな中、あかりの湖畔に出会い、綺麗、だった。途中嫌なシーンになり急下降はしたものの青山七恵さんが読みやすくて、全て目に留まったら読んでみたいと伝えていたところ、この本をいただきました。とても綺麗な状態の初版本。選評の文が載っている帯が巻かれる。栞紐がうぐいす色でクリーム色の紙に蹲り光が留まり、開かれた形跡が見受けられない。装丁から物語に入る扉が閉められている静けさを保っていました。私が買ったとしてもこんなに丁寧なものは手に取れないのではないかと思う。
    半分まで一気に読み進めることができ、令和2年内に読み終わりまとめとしようと思っていたのだけれど、実生活の主要なことを優先すると節目に切り良く読み進めるとは行かず、年末年始の一冊となった。
    見たくない言葉というのがあって、私の中を汚したくない、傷付けたくない、というのが申し訳ないけれどどうにもあり、これは物語的に売れないよというのが途中まででこぼしてしまった感想だった。文章がうまいから読めるよとは呟いた。(口紅の蓋を閉める。~ 姉さんは唇をすり合わせて、口の端を指先でぬぐった。)この文章は色気よりももっと気品のように響き、ほっとした。
    読み終え、自分の中を流す安心感を探しているように受けとめられた。それは大学をやめてしまったように、自分のことを見つめる境遇になっている時に陥りやすいように思う。その状態は陰湿であり、それがゆるやかに物語となっていた。

  • 大学を辞め、時に取り残されたような喫茶店で働く私は、向かいの部屋の窓の中を覗くことが日課である…。
    ゆるやかな官能を奏でる、文藝賞受賞作。

    雰囲気は良い。設定などは面白そうだと思ったのだけど、あまり合わなかった。
    青山さんは「花嫁」がすごく面白かったので、他にも期待したいところ。

  • 装幀/町口覚(マッチアンドカンパニー) 写真/松木匡史

  • 大学を辞め、時に取り残されたような喫茶店で働く私。
    向かいの部屋の窓の中を覗くことが日課の私は、やがて夜の街を徘徊するようになり——夜の闇、窓の灯、ミカド姉さんと男達……ゆるやかな官能を奏でる第42回文藝賞受賞作。
    (アマゾンより引用)

    この作家さんの書くお話、嫌いではないんだけど、どのお話読んでも
    「……で?」って感想に行きつく(´・ω・`)

    今回もまたそんな一冊でした

  • 読みやす過ぎて心に引っかかるものがなかった、という表現は適切ではないかもしれませんが、読了後に感じたのは間違いなく「喉越し良すぎて食べた気のしない冷やし素麺」でした←

    多分、これは作者の力量云々の話じゃなくて、読み手の好み、相性の問題でしょう(同じようなこと何度言ってんだろ…)

    で、私の場合、恋愛小説を読んだ時に、「引っかからない」ことがあまりに多いので、「恋愛小説おもんない」という結論に直情径行にも飛びつくわけです(浅はか)。

    「のぞき」という行為を通して、せっせせっせとイマジネーションを働かせる主人公・まりもの内面に、もう少しフォーカスしていたら良かったのかなー。もう少し変態性が際立ってたら良かったのかなー←←

    彼女の雇い主兼庇護者でもあるミカドが特別視する「先生」とのエピソードも、ちょっと物足りない。

    いろいろなことが始まる前に、全部終わってしまったような消化不良な印象が残りました。
    素麺には薬味必要よ!←←←

    青山七恵先生は初体験だし、レビュー見てたら他の作品の方が評価は良いようなので、そちらを読んでみよう、うん。


    以下、amazonよりコピペ!
    大学を辞め、時に取り残されたような喫茶店で働く私。向かいの部屋の窓の中を覗くことが日課の私は、やがて夜の街を徘徊するようになり——夜の闇、窓の灯、ミカド姉さんと男達……ゆるやかな官能を奏でる第42回文藝賞受賞作。

  • さわさわと吹く、生暖かい風の匂いがしてくるようなお話でした。1時間くらいで一気に読めました。こういう、自分だけがシャボン玉の中に浮いているような、周りの世界からうすーく隔てられてるような感覚、なんとなくわかります。

  • 覗く。
    切り取られた窓から人の感情が見えるのかな。
    感情は見えないけど、切れ端は見えるような気がする。
    まりもはそれが見たかったのかな。

    窓の灯の中で、自分じゃない誰かが生活していると知るのは、
    とても安心するんだけどとても心もとなくもなる。
    そういうのが静かに表れていたように思います。

  • 夏の夜のお話。まりもの気持ちは何となくわかる。その世界の姉さんって確かに得体の知れない感じがするから。でもその得体の知れなさに男性たちは魅了されているのだと。雨上がりのコンクリートの匂いがするお話。でも最終的に何を伝えたいのかは未だに分からない。

  • ジャケ買いw

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著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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