屍者の帝国

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021263

感想・レビュー・書評

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  • 最後、こんなの、ぐっとくるに決まってるだろ〜〜〜〜!!

  • ・伊藤計劃のハーモニー、屍者の帝国、そして虐殺器官について考えていた。世界に残された三つの計画は、それぞれ個別でありながら深く絡まり合い、人間の心と脳そして魂の幸福についてある一つの答えを導き出す。その答えは作者の手を離れ、読者である我々の心と脳、そして魂に深く結びつき、そこに一つの種を植える。

    彼は何度も問うた『言葉で人を殺せるか?』と。そして彼はこう答えた。『言葉でしか人を殺すことはできない』

    言葉がなければ人を殺すことは出来ない。この言葉の意味をあなたはわかるだろうか。言葉、つまり意思の記号化がされてない人間は、人を殺すことも、自分を殺すこともできない。言葉とは思考そのものなのだと彼は言った。言葉のないものを凶器にすることはできる。だけど、それは人間の言葉を上書きして動かしているだけにすぎない。思考のないものに、人を、自分や他人を認識することはできないのだ。

    ・もしも仮に、意識のない人間が居たとして、そのものが世界を壊すことができるか。言葉とは自分そのものだ。言葉とは自分の内側にあるものだ。意識は言葉そのものだ。つまり、人を殺すのは言葉なんだ。

    ・私はずっと人を殺せる言葉を探してきた。それは、呪いの言葉という意味じゃない。脳の脆弱性から意識に入り込んで、人をオセロみたいにひっくり返して見たいと思っていた。だって、どうして世界はいつまでたっても平和にならないのだろう。人はなぜ調和を望みながら、同調することを拒むのだろう。

    人はいつも退屈に殺されるのだ。と誰かがいった。多くの人間は平和であることを受け入れることができない。平和であることを望みながら組織に管理されることを拒み、他者と同一であることを拒み、そして結局戦争が始めてしまう。つまり同じ時間を並行した世界に生きることができないんだ。

    このままでは人は争うことから逃げることができない。意識が言葉が人を殺すんだ。意識の統一が出来れば、争いを避けることができる。人は人のままでは幸せになることはできないのだから。


    とまぁ、全てはフィクションだけれど。伊藤計劃が描きたかった未来はなんだったのかと私は考える。なにを彼は望んで居たのだろう。死者を生き返らせ、意識を統一させ、言葉で人を殺す。そんな世界になにを見たのか。

    簡単なハッピーエンドはない。この世界に完璧なハッピーエンドがないのと同じように。100パーセントの正しい答えを人類が得た時、その答えがどんなものなのか私は知りたいと思う。

  • 再読。
    やっぱり読みにくくて、時間が掛かった。
    伊藤計劃が書いたプロローグが良くて、このまま本人が書いていたらもっと面白くなっただろうなと思わずにいられない。
    もちろん円城塔もすきだから、これはこれで楽しめたんだけど。
    円城塔にしては珍しくエンターテイメント性は高いと思う。でも最後がなあ……切ない。

  • 19世紀末の世界を、史実、パスティーシュ、オリジナル設定を縦横無尽に織り交ぜながら「意思・魂」とは何かを描く。受け継いだ者、としての踏み込み切れなさは致し方なく、前作までのどこどこまでも突き詰めていくような感覚を十全には得られない。しかし、それを差し引いても、引き受け、書き終えた円城塔氏には感謝しかない。
    ホームズ、ドラキュラ、カラマーゾフ、風と共に去りぬ、フランケンシュタイン、海底二万里。他にあるのかな。

  • 「あんたは、生命とはなんだと思う」
    「性交渉によって感染する致死性の病」

  • [そこにあり、そこにない楽園]ヴィクター・フランケンシュタイン博士の発明により、屍者が労働力として供給されるようになった19世紀末。英国のエージェントであるワトソンは、密命とともにアフガニスタンの奥地に向かう。そこで彼が耳にしたのは、屍者の小隊と、軍を脱出した一人のロシア人と彼の暗い野望についてであった......。日本を代表するSF作家2名のバトンリレーにより世に出ることができた作品です。著者は、本作の完成前に2009年に早逝された伊藤計劃と、2012年に芥川受賞を受賞した円城塔。


    歴史改変をベースにした冒険活劇的な序盤、そして雰囲気や舞台を一辺させた上で展開される哲学的思索の深まる後半といった形で、SF作品としてまず単純に面白い。伊藤氏が書き上げたのは序盤だけということですが、その独特な世界観や設定を引き継ぎ、一つの大作として完成させた円城氏の筆はお見事の一言に尽きるかと。それにしても、ここまで筆力と類い稀なる感性を持ったSF作家を亡くしてしまったことが本当に残念でなりません。

    〜長い目で見れば、俺たちはみんな死んでいるんだぜ。〜

    それにしても両氏ともにすごい知識量だと思う☆5つ

  • ネタバレあり。
    いやはや、読み切るのに結構体力が要りました。
    最初の頃はイライラしながら読み進んでいたのですが、

  • なんか集中できなかったな。

  • 2016.2.26

  • 素晴らしい素材。少々不完全燃焼ではあるが、それは仕方がない。しかし惜しい…事情が事情だけに尚更惜しい。本人の抑制的な筆で読みたかったと心底思う。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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