墜落の村 ---御巣鷹山日航機墜落事故をめぐる人びと

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021454

作品紹介・あらすじ

"御巣鷹墜落事故三部作"完結。1985年8月12日、日航機123便墜落。墜落現場・御巣鷹の尾根をかかえる上野村は、事故と遺族にどう対処し、「聖なる山」を守ってきたか-。墓守りとなった元極道もの"ナラカツ"、陣頭指揮を執った元零戦乗りの村長黒沢。二人の関わりを軸に、村民の献身と絆を描くノンフィクション・ノヴェル。

感想・レビュー・書評

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  • 1985年8月12日、乗員524人を乗せた日航ジャンボ機が上野村の御巣鷹山に墜落。警察や自衛隊、マスコミ、遺族が殺到し、貧しい過疎の山村は一夜にして日本で最も人口密度の高い村となった。

    元軍人パイロット村長のリーダーシップのもと、村民たちは救助活動を終える。その次は訪れる遺族たちへの対応だ。その中心となったのが、元チンピラの村会議員、通称「ナラカツ」。義理人情は厚いが破天荒、かつては村の厄介者であった彼の物怖じしない性格が、当たらず触らずの対応しかされない遺族たちと意外に相性が良かったようだ。ナラカツは老体を引きずり、遺族を山へ案内し、慰霊地の管理と毎年の慰霊祭の準備を続ける。

    前ぶれなく、突然に身内を失ってしまった航空機事故遺族たちが、ナラカツの存在で「この山に堕ちたことで救われた」と思ってほしい。この小説は、日航機墜落事故のその後を描くドキュメンタリーでもあり、ナラカツの成長記でもある。

  • 同じ作者なら「墜落遺体」を読んだ方がいいと思います。
    仲沢勝美さんの事故前の話で半分ぐらいを占めてます。あんまり墜落後にフォーカスされてないと思う。

  • 1985年夏の日航機123便墜落事故に関する本は沢山読んできた。
    この作品は、墜落現場となった御巣鷹山の尾根をかかえる上野村の住民からの視点で描かれている。

    暴力ばかりふるって村の鼻つまみ者だった、ナラカツこと仲沢勝美。
    駐在所の警察官、里見雄大。
    当時の村長、黒沢丈夫。

    前半は彼らの人となりを詳しく描き、後半は彼らがどのように事故と関わり、事故後も遺族と深く接してきた様子を描いている。
    心のに残ったのは、遺族の言葉。

    「飛行機事故のことより、息子たちがこの世に存在していたということさえ忘れ去られていくのが、何よりも淋しいんやわ。怖いんよ。だから上野村に来るんよ。ここへ来たら息子たちに会えるし、話もできる。この村の人たちは、誰も、事故のことを忘れたりしないもんなあ、癒されるんやわ。」

    あれから30年近く。事故のあった夏になるとTVなどで報道されるけれど、だんだんと私たちの記憶は小さくなっていく。
    遺族は決して忘れないけれど、この村の人々は、そんな遺族にいつまでも寄り添っているのだな。

  • 1985年8月12日に起きた日航機墜落事故、本書はその墜落現場となった群馬県上野村の人々を描いたノンフィクション小説である。話は元特攻隊員だった当時の上野村村長、上野村と縁の深い警察官、過去に犯罪歴のある村会議員を中心に描かれている。

    特に村の厄介者だった男が村会議員となり、険しい山中にある事故現場で黙々と墓標を修繕したり、不器用ながらも遺族の方々に寄り添う姿には非常に感銘を受けた。
    犠牲者や遺族の心情を考えると、絶対に不幸中の幸いなどと軽々しく言えないが、上野村の人々が起した行動により、悲しみが癒された遺族も多かった事を知り、少しだけ救われた気がした。

    事故から25年以上が経過し、高齢化によって現地に行く事ができなくなった遺族も増えているらしい。村長として陣頭指揮を執った黒沢丈夫氏も2011年にお亡くなりになってしまったが、上野村の人々には、いつまでも犠牲者や遺族のみなさんに寄り添う存在であってほしいと思う。

  • 1985年8月12日弐発生した日航機123便墜落事故。本書は事件をめぐる人々、とりわけ現場となった御巣鷹山の尾根をもつ上野村に住んでいる人々を中心に描かれております。ナラカツと黒沢。二人の個性がミソ。

    日航機墜落事件の際、現場で指揮を執った元警察官の筆者によるノンフィクション・ノベルです。事故現場となった御巣鷹山の尾根を抱える上野村というところが舞台です。主人公は二人いて、幼いころから乱暴を働き、『ナラカツ』と呼ばれ極道者として村民から忌み嫌われ、恐れられている仲沢勝美と、事件の際に村長として陣頭指揮を執った元零戦のパイロットという異色の経歴を持った黒沢丈夫を軸にして物語が進められます。

    筆者をモデルとしたとおぼしき警察官、里見が上野村に赴任するところから話はスタートします。与太者を引き連れて無法の限りを尽くすナラカツを柔道の一本背負いで投げ飛ばした里見にさしものナラカツも一目置かざるを得なくなります。その後、ナラカツは殺人事件などで2度の懲役を経た後、なんと村会議員として活躍することになるのです。一方の黒沢は学問を志し、紆余曲折があったものの、当時としてはエリートコースのひとつである海軍兵学校へと進み、零戦のパイロットになるものの、終戦を迎え、生まれ故郷であった上野村へと帰郷し、村長になったという経歴を持っております。

    そんな彼らの元へ文字通り降って起こったのが、1985年8月12日、日航機123便墜落という大事件でした。520人もの犠牲者を出した凄惨極まりない 事件現場。それを自衛隊、警察官らとともに村民一丸となって事故収束へと向かう姿が描かれておりました。里見は任期満了の後、いったんは上野村から離れるのですが、定年で退官した後、家族とともに帰ってくるのです。それを快く受け入れるナラカツの描写は本当にぐっと来るものがありました。

    ナラカツは事故で犠牲になった方へと建立された慰霊碑を守る『墓守』としてその後の人生を送ることになります。遺族の女性が村へ来たときに泊まる所がないからというのを快く自宅に泊めるナラカツ。そして彼女が結婚相手を連れてきたときのエピソードも心にぐっと来るものがありました。

    日航機123便墜落事故の話はものすごく凄惨なものなのですが、この事件は絶対に風化させてはならないと思うとともに、事件をめぐる人々の存在があったということも、決して忘れてはいけない。そんなことを僕に思わせてくれるものでございました。

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著者プロフィール

飯塚訓
1937(昭和12)年、群馬県に生まれる。日本大学法学部卒業。1960年、群馬県警察官として採用され、以後、警察本部課長、警察署長、警察学校長等を歴任。
1985(昭和60)年、高崎署刑事官在職時に、日航機墜落事故が発生、身元確認班長になる。1996年、退官。
著書に、『新装版 墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便』(講談社+α文庫)、『墜落の村 御巣鷹山日航機墜落事故をめぐる人びと』(河出書房新社)、『完全自供 殺人魔大久保清vs.捜査官』(講談社)、『墜落捜査 秘境捜索 警察官とその妻たちの事件史』(さくら舎)、『刑事病』(文藝春秋)などがある。
現在は、講演活動などを通じて、日航機事故の語り部として、命の尊さを伝えている。

「2015年 『新装版 墜落現場 遺された人たち 御巣鷹山、日航機123便の真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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