影を買う店

著者 :
  • 河出書房新社
3.54
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本棚登録 : 470
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022314

作品紹介・あらすじ

「本書に収録されている作品は幻想、奇想――つまり私がもっとも偏愛する傾向のもの――がほとんどです。消えても仕方ないと思っていた、小さい野花のような、でも作者は気に入っている作品たち。幻想を愛する読者の手にとどきますように」――皆川博子

感想・レビュー・書評

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  • 現実世界を歪んだガラス越しに見るような、地続きの幻想掌編小説集。
    表題作もいいけど釘屋敷水屋敷も好き。

  • 「影を買う店」は面白かった。
    「影をはがす」という表現も面白かった。
    私的に、影をはがす=命を削るということではないかと思った。
    削られるのか、はたまた削るのかは分からないけれど。でも、影というものがある限り私たちは生きている訳。つまりは影が剥がされることによって薄れていくというのは死に向かっているということを表現しているのかもしれないと思った。
    店に通う度に、死に向かって行く。
    死にたい気持ちも、時が経てば変わるってことはないんだよね。そんなの、理想論に過ぎないよね。。

  • 喫茶店の隅の席に、いついってもM・Mを見かけないことはなかった。書き物が終わったM・Mが立ち去った後、残された薄い影を店主がさりげなくはがす。-表題作「影を買う店」-
    単行本未収録の作品をまとめた幻想小説集。

    不思議で、一見とりとめのない話が脈絡なく絡み合うようなショートストーリー。すじのある話が好きな私には、正直戸惑うものが多かった。
    「更紗眼鏡」が一番好きかな。

  • 海外を題材にした長編モノが好きなのだが、筆者の真骨頂は幻想小説に「昇華」されていると個人的に確信している。

    20篇の短編は彩鮮やか、が一貫して貫くのは生と死が蠢く空気感、幻想を超え蠱惑的とでも言おうか。
    執筆は60歳台から70歳代の20年にわたっているとはいえ、とてもそれを現実的に認識できないほど凄い。

    表題の「影を買う店」と「猫座流星群」「柘榴」が脳裏に食い込んだ・・とはいえいずれ劣らぬ秀逸作揃い。
    「影を」戦争で国内が荒み退廃した社会の中の姉と弟・・湿気を帯びた性的サデックスの高まりに  う~~んというひりつく状況と転変。読み終え「やがてひっそりと・・」という想い
    「猫座」はとてつもない残酷な設定と流れ、何れの人物ももっとも嫌悪を抱きそうな輩ばかり。子供の残酷な遊びとは言い切れ過ぎない絞首刑
    「柘榴」アルアル設定の戦時中女子高・・流れるピアノ曲の官能的な旋律・・映像的

  • 表題作の「影を買う店」と「柘榴」が好き
    たまらない人にはたまらない世界観だと思う

  • 上級者向けの幻想小説。自分の立ち位置を確かめながら、ゆっくり、けれど決して味わいすぎずに進まないと迷子のおそれあり。ゆるやかに言葉をのみこんでいれば、いつの間にか暗闇に落ち、見つけた光はまやかしで、妖しく口元を歪ませた幼女は、あなたの子供ではないでしょう。

  • とくに「柘榴」「釘屋敷/水屋敷」が印象に残った。「柘榴」は映像化してほしいくらい。

  • 1995年からの2013年に発表された、単行本未収録の21編の幻想小説をまとめた短編集。

    初出媒体も一編の長さも様々だが、どの作品も耽美、退廃、官能、死の色が濃厚でありながら品がある。
    皆川博子愛にあふれる編者の後書きによると、「幻想のための幻想」である「純粋幻想小説」だと言う。まさに、作者の作り出す特異な世界に幻惑されるのを楽しむための作品集。

  • 短編21編が、すべて皆川さんらしいとしか言えない幻想小説でどれもが一つ読むたびにもう一度読み返したくなるようなとても濃いものでした。モノクロの中に時々赤や青などの原色がすっと差し込まれるような強烈な印象を与えてくれるもの、終始全く音を感じないほどどっぷり浸かってしまうものなど、皆川さんの世界がぎっしり詰まっています。時間のある時にゆっくりじっくり一つずつ堪能したい本です。好みはすっと世界に入れる「迷路」「更紗眼鏡」。印象深かったのは読後題名がじわじわと沁みこんできた「墓標」。時間をおいて再読したいです。

  • 前半は姉と弟、厳格な父親(そして弟が夭折する)という人間関係が多い。そういうテーマで編んだのかと思ったが、たまたまなよう。

    「影を買う店」
    弟の通夜の席で聞いた、彼が生前よく行っていたという喫茶店。
    「使者」
    詩人志望の青年からの手紙を受け取った出版人。普段ならば無視するであろう手紙に返信したのはその署名が維持ドールであったからだ。彼にはかつて、同じ名のイジドール・デュカスの詩を誰よりも早く知りながらその価値を見いだせなかった失意があった。
    「猫座流星群」
    姉弟の遊び相手として、少し年上の使用人の息子である勝男がやってきた。彼は手作りプラネタリウムで流星群を見せ、いらないおもちゃで戦車を作り、小さな断頭台を作った。
    「陽はまた昇る」
    アンソロジー『黄昏ホテル』収録。少女と<風>の沈むホテルに関する会話。
    「迷路」
    方向音痴である私は銀座のとある画廊へとたどり着けずに迷っていた。
    「釘屋敷/水屋敷」
    釘のびっしりと刺さった柱のある釘屋敷、座敷に井戸のある水屋敷。
    「沈鐘」
    蔵の中のその井戸は、女が身を投げたとき、千切れた振袖が残ったために振袖井戸というのだ、と彼は言った。そうして、西洋の山の姫と鐘造りの伝説を語った。
    「柘榴」
    アンソロジー『エロチカ』収録。N先輩がきっと好きなやつ。
    「真珠」
    口づけする口の内から真珠が次々にあふれるという夢。
    「断章」
    水の話。
    「こま」
    今、昔、映画。
    「創世記(写真:谷敦志)」
    「蜜猫」
    部屋が増殖する家と猫と私。
    「月蝕領彷徨」
    視覚的な詩。
    「穴」
    視覚的な詩というか絵というか。ルイス・キャロルみたい。
    「夕日が沈む」
    『命を大切に』が浸透した結果、切断された指さえ死んではならぬと生き延びるようになり、それは熱帯魚のように愛好されるようになった。
    「墓標」
    視覚的な詩と小説。母の店にやってきた東京からの子連れの客。彼はブラック・アートというマジックを見せる。
    「更科眼鏡」
    視覚的な詩と小説。川に笹舟を流す子供。
    「魔王 遠い日の童話劇風に」
    「青髭」
    「連禱 清水邦夫&アントワーヌ・ヴォロディーヌへのトリビュート」

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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