嘘をついた男

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 32
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309203416

感想・レビュー・書評

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  • ジャン=クロード・ロマンが何を思って森を彷徨い、車を走らせていたのか、空白の時間と黒い穴を事実の力をかりて埋めていくのだが、本人存命にも関わらず〈要〉は謎のままフィクションとして描いているところが面白い。
    それにしても犯した罪<18年間の嘘と家族虐殺>は重くて闇すぎる。

    事件や、事件について執筆するにあたっての作者の葛藤(この小説が世の中に出たことで与えうる影響など)には共感する。

  • あるちょっとした機会でこの作家のことを知り、いちばんオススメの本作を読んでみる。フィクションかと思って読み進めていると、ん?そうではないらしい。確かめるためにちょっとページを遡って読み直す。こういう構成嫌いじゃない。むしろ、この時点で既に物語に引き込まれている。映画で大好きなフィリップ・K・ディックが同じ箇所で登場し、この作家とは感覚が合いそうだとワクワクした。
    この予感は的中で、2つの世界を据えて展開していく物語に引き込まれ1日で読了した。
    人物描写も好みだ。ラディケもそうだけど、体感覚で人物の性格をカテゴライズし、メタファーとして使う技に長けている。特にフロランスの描写とロランの両親の描写が印象的。レポートのようだと言う人もいるけれど、私はエマニュエル・カレールの硬質で男前な文体のファンになった。訳者も巧い。
    そして最大の魅力は、サイコパスであるロランの心の闇がそうさせるのか、はたまた悪魔に取り憑かれているのかとオカルトちっくな想像を掻き立てるところ。ただのエンターテインメントではなく、現実の裏にある真実を見ようと試みるところに骨太さを感じる。

  • 先日読んだ『自分のついた嘘を真実だと思い込んでしまう人』で取り上げられていたので読んでみた。
    フランスで起こった「ロマン事件」に関する本です。
    一体どうして、医学部を卒業したふり、WHOに勤めているふりができたのか、全く関わりを持たない私には想像もしようがない。
    そもそも、人の言うことを(よほど相手を嘘つきだと知っていないかぎりは)最初から疑ってみることは稀だろう。
    何度か出てくる、それぞれが変だな、と思うこと。
    果たしてそのようなとき、悪感情を抱いていない夫に対して、恋人に対して、親友に対して、疑いを(その違和感を)確認することができるかどうか。
    こういった事件を知った以上は「そういう人」もいるということを覚えておきたい。
    また、事件発覚後、彼を支えた人たち(彼の新たな嘘を疑うことのない人、彼の事件は必然だったというような見方をする人)が出てくるが、前掲書における「イネイブラー」とはまさにこの人達を指すのだな、と納得した。
    彼は無期懲役となったが、最低収監期間22年の条項つきだという。それは今年、2015年までだ。

  • これは小説と言っていいのか?
    真面目系クズのジャン=クロード・ロマンが嘘だらけの人生の末に引き起こした惨殺事件についてのレポートのような本。

    アニメ「長門有希ちゃんの消失」第1話でこれ見よがしに映り込んでいたので興味を持って読んだ。
    嘘つきは長門か、あるいはキョンか。あの平和な世界の先にも、こんな悲劇が待ち受けるのか……。

  • 深淵を覗き込む時、その深い洞もまたあなたを覗き込んでいるのだ——「FBI心理分析官」に引用されたことで、犯罪ウォッチャーにはよく知られたニーチェの言葉である。
    この言葉の意味するところが知りたければ、長くもない本書を読んでみればいい。何もない虚無、ただただひたすらのむなしさというものを、しみじみと味わうことになるだろう。

    5人を殺し、もしかするともう1人殺し、これは確実にさらに1人を殺しそこねたジャン=クロード・ロマンという男は、善良な人々がその所業から想像するような大悪人ではない。彼の徹底した小物ぶりと、引き起こした事態のアンバランス、それがむなしさを呼び起こす。
    犯人自身のみならず、子供騙しとしか言いようのないその嘘にころりと騙されていた(被害者含む)近しい人々、同じくころりと騙されている拘置所ボランティアたち、「そんなつまらないことで…」と最初のきっかけにあきれ返る読者たちと、そう言いつつ彼らもまた、似て非なる局面で似て非なる嘘を重ねて生きている、その集積体であるところのうつし世なるもの。
    何もかもがむなしくなる、そんな本である。

    2014/6/8読了

  • もはや人間ではない。暗く深い「空洞」がそこに在るだけだった。
    最も恐ろしいものも人間で、その凄まじい恐怖を感じさせられた。

  • ロマンという、18年間身内と親戚をだまし続けた男の実話に基づいた小説。
    こんなことが実際にあるのかという驚き。
    ちょっとしたきっかけによって人生が狂い始めることって
    よく小説に描かれてるけど
    実際の人生にもありうるんだなぁ。
    恐いな。
    最後に家族を殺してさえしまわなければ
    なんとか救われたのに・・・
    自分だけ生き残ってしまうなんて悲劇中の悲劇。

  • フランスで実際に起こった、家族惨殺事件をもとにしたお話です。映画化もされましたが、そっちの方はあんまりです。

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