カレーソーセージをめぐるレーナの物語 (Modern&Classic)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309204390

感想・レビュー・書評

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  •  淡々とした書きぶりで読みやすく、終戦間近の人々の暮らしぶりが丁寧に紡がれている。 親子ほども歳の離れた兵士を匿い深い仲になるが、戦争終結を告げられず悩む主人公レーナの強かで現実的な在り方がまるで本当の事のように感じられた。

  • 第二次世界大戦中に脱走兵を匿い僅かな期間を一緒に暮らしたレーナがカレーソーセージを『発明』するまでの話を主人公に語って聞かせる話。素朴で、貧しげで、それでも何やら美味しそうな食べ物に関する挿話が興味深かった。

  • カレーソーセージというのはドイツではよくある庶民的な屋台料理だそうです。
    ソーセージをいくつかに切って炒め、ケチャップにカレー粉を混ぜて絡めたもの。
    ブリュッカー夫人が作るシーンでは本当に美味しそう!

    語り手が子供の頃、伯母と同じアパートに住んでいたレーナ・ブリュッカー。吹きさらしの屋台で手際よく作ってくれたカレーソーセージの味が忘れられず、老人ホームまで話を聞きに行きます。
    事の起こりは第二次大戦末期、ハンブルク。
    子供達も巣立ち、夫が出征したまま他の女性に走ったため、一人暮らしだったレーナは空襲の夜に出会った若い海軍兵曹ブレーマーが死地に赴くと知ってアパートに案内し、そのまま匿って同棲生活を始めます。
    物のない時代に、工夫を凝らして蟹スープなどのご馳走に似せた料理をふるまうレーナ。
    従軍した体験やカレーを初めて食べた思い出を語るブレーマー。
    脱走兵は捕まれば銃殺なので、隠れているしかなくなったものの、まもなく連合軍が上陸。しかし、レーナは彼を引き留めたくて、それを言えない。
    実は彼にも秘密があり…
    複雑な状況がすんなりこちらの胸に飛び込んでくる書き方でテンポ良く読ませ、文句なしに充実した時間を過ごせました。
    何よりも、たくましいおかみさんのレーナが魅力的。戦後の物々交換を上手くやってのけるあたりの展開も生き生きと描かれていて、すごく面白いのです。そして、思いがけない偶然から生まれるカレーソーセージ!

    既に敗色の濃い時期にナチスへの密告をする近所の人もいる一方で、反骨精神のあるコックの行動なども傑作。
    特殊な状況下でのはかない恋も納得のいく展開で、結末にほのぼのとした感慨を残す、味わい深い物語です。

  • カレーソーセージというファストフード誕生を巡る一人の女性の悲恋の物語。食べ物が人間に与える幸福と苦悩が、敗色濃いナチス・ドイツで脱走兵をかくまいつつ、不器用だがしたたかに日常を生きるレーナの人生と共に語られる。

  • カレーソーセージという一つの料理の歴史が、ドイツ人女性レーナの口から語られる。
    しかしなかなかカレーソーセージの発明秘話には行き着かない。彼女と若い脱走兵との出会いから物語は淡々とすすむ。
    特に期待していなかったのに、とても感動する結末。おすすめの一冊。

  • 北ドイツの方で、よく食べられている「カレーソーセージ」がどうやって生まれたかと、自称「カレーソーセージ」を発明した女性レーナの話を聞き書きしたもの、というスタイルの小説です。
    終戦間近のハンブルク。そこに暮らしていた、一人暮らしの中年女性レーナが、若い水兵をかくまうことから話が始まります。えー、全然カレーソーセージ関係ないじゃんという話の始まりから、進んでいく物語。終戦後のドイツ、という暗い時代でも、物語に暗さがないのは、レーナのたくましさがあるからかな。話に引き込まれるんですが、常に「カレーソーセージはいつ出てくるんだ」と頭の片隅に気になります。焦らされ系ね。食べ物の美味しそうな小説は、好きです。読んだ後に、その食べ物が食べたくなるようなやつね。

  • カレーソーセージというファストフード誕生を巡る一人の女性の悲恋の物語。食べ物が人間に
    与える幸福と苦悩が、敗色濃いナチス・ドイツで脱走兵をかくまいつつ、不器用だがしたたかに
    日常を生きるレーナの人生と共に語られる

  • 小説の形式の妙、ディティールの描き方、主人公の濃さ、のめりこんで読んだ一品。主人公が、とにかく魅力的なんだ。

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著者プロフィール

1940年生まれ。ミュンヘン在住。1970年代から作家活動を始め、『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』(1993, 浅井晶子訳、河出書房新社)、『赤』(2001)などで人気作家に。戦後の西ドイツで民主主義教育を受けた第一世代にあたり、60年代の学生運動にも参加。良心的でユーモアのある作家として定評がある。2001年にバイエルン芸術アカデミー賞を受賞。2003年に出版した自伝的な本書によって、ドイツにおける記憶の文化とナチスについて社会的な議論を巻き起こした。

「2018年 『ぼくの兄の場合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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