黄金の少年、エメラルドの少女

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 260
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309205991

感想・レビュー・書評

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  • 暮らしぶりの差や、時代による世情の違いが広がりや奥行を生む。複雑なのに絡まることのない糸みたいだ。

    人間のエゴと運命に対する無情と慈悲の両方を感じる。

    かたくなな意思で何かを守り続けること、自分の意思とは違うものでそれまでの何かが変わってしまうこと、そんなのが入り混じってる。

  • 文学

  • イーユン・リーの紡ぐことばはだいぶシビアで容赦ない。なのに時に滑稽で、ちょっとした優しさもある。
    中国という自分にとっては謎(というか理解できない点)の多い場所が舞台になっている話がほとんどなので、文化的にも読んでいて面白い。
    密度の濃い短編集。

  • どれも面白かったが、代理母とその依頼人を扱った「獄」が印象的だった。代理母を申し出た若い女性の過酷な生い立ちや心情が胸を突く。
    イーユン・リーにすっかり魅せられ、作品をほとんど読んでしまった。
    近代中国という不条理な異世界に生きる人々に、図らずも強い共感を覚える。

  • 昔から本を読むのは好きだったが、本当の意味での'読書'の面白さを知ったのは、二十歳を少し過ぎた頃だったように思う。きっかけはウィリアム・トレヴァーやアリス・マンロー、そして本書の著者であるイーユン・リーの作品集をふと手にし、貪るように読んだことだ。
    市井の人々が過ごす、一見ありふれた人生のベールを1枚剥がした時にあらわになる、意外な側面。それを著者の進める物語の流れに乗って、体験するスリルと快感。文字にすると何とも陳腐な表現だが、これがたまらなく'癖になる'のだ。
    本書もそんな読書の愉しみを味わい尽くすことのできる短編集である。
    'この広い世界には、私たちが暮らす代わり映えしない退屈な日常とは全く違う人生を送る人々がいる'という、当たり前の事実を忘れがちな私に、本書は様々なことを教えてくれた。

  •  中国は独占者のような強く引き付ける力がないと、人々は砂の様にバラバラになってしまう、というが、この孤独感は日本人より深いと思う。それが近代という時代の流れで、家族という形態が変わりつつあるなかで、なおさらその深さを増しているように作品から受け取られた。
     青春時期を過ぎ、中高年になってから、その色彩はとても濃い。
     『彼みたいな男』の「世間なんてちゃんと物をみていない」、といった断言、そしてその先の選択肢として死がある、という表現に、諦観している人生を思う。
     中国現代の傷、文革、天安門事件の深みは心の闇として残り続けているのを感じる。

  • 優しさ
    流れゆく時
    表題作が好き
    淡々とした語り口の中にぐさっとくる一文が沢山ある。中国的価値観と自分の持っている感覚の相違も興味深い。死には死をもって報いるとか…

  • 中国が舞台の短編9話。

    「獄」は以前なにかの本で読んだことがあった。
    優秀な娘を事故で亡くしたアメリカ在住の中国人夫婦が、中国で体外受精でこどもを望み、若い娘に依頼して妊娠させて妻が一緒に暮らすはなし。

  • 中国系作家の米文学。親の世代が文革を経験し、自分たちは中国と米国を行き交う、近現代の中国が描かれる。
    ファンシーなタイトルにそぐわず、内容はシビアだ。タイトルに惹かれなかったため出版時に手に取らなかったくらいなのだが。なにより、主人公たちの孤独に共感する。人は孤独で、他人と分かりあえなず繋がることがとても難しい。「優しさ」の主人公は私なんだと思う。しかし、この孤独に共感する世界中の大勢の人たちによって読まれているのだと思うと、ささやかな連帯感を感じる。
    謝辞と後書きで敬愛する作家にトレヴァーを挙げているが、イーユン・リーも心理描写がたいへん巧みで人物に血が通う、優れた短編作家だ。

  • 黄金の少年、エメラルドの少女 - bookworm's digest
    http://tacbook.hatenablog.com/entry/2015/02/28/131333

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著者プロフィール

1972年北京生まれ。北京大学卒業後渡米、アイオワ大学に学ぶ。2005年『千年の祈り』でフランク・オコナー国際短編賞、PEN/ヘミングウェイ賞などを受賞。プリンストン大学で創作を教えている。

「2022年 『もう行かなくては』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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