帰ってきたヒトラー 上

  • 河出書房新社
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感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206400

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • 面白い。どこに着地すんだ?これ?下巻へ!

  • 2018.07.09 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • 自殺したはずのヒトラーが2011年のベルリンの空き地で意識を取り戻す。時代の変化に戸惑いながら以前の考えのまま再起を狙うヒトラーと、彼を私生活の領域でまでヒトラーになり切った演技をするコメディアンとみなす周りの人々のギャップを描いたスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)であり、風刺的な作品です。
    面白い。英語にすればfunnyでありかつinteresting。可笑しくて興味深い。
    一つには徹底したすれ違いの面白さです。誰かが称して「アンジャッシュのコントみたい」。なるほど。
    さらには2011年の世の中を1945年の目で見た世相風刺があります。服装、インターネット(なぜかヒトラーは「インターネッツ」と呼んでますが)、携帯電話、ドラッグストア、カミソリ、テレビ番組。便利と言いつつチクリチクリと批判してきます。ただ、描かれる世相が余りに現代ドイツで私には良く判らないところもあります。多分、ドイツ人でないと感覚がつかめないような俗過ぎるところもあって、普遍性には欠けるか。
    そして、ヒトラーが魅力的なのです。民族主義はどうにもなりませんが、女性や子供に対しては優しい。何故かマインスイーパーに嵌ったりもします。振り返ってみればヒトラーは(少なくとも首相になる過程では)一般庶民による選挙で選ばれているのですから、演説の上手さとともに何らかの魅力も持っていたのでしょう。
    作中でヒトラーは言います。「そして総統は、今日的な意味で<民主的>と呼ぶほかない方法で、選ばれたのだ。自らのビジョンを非の打ちどころがないほど明確に打ち出したからこそ、彼を、人々は総統に選んだ。ドイツ人が彼を総統に選び、そして、ユダヤ人も彼を総統に選んだ。」
    怖いですね。これが作者の一番言いたかった事なのでしょうね。

  • もしあのヒトラーが現代に戻ってきたら。
    ヒトラーが世間にばかうけして一躍時のコメディアンになる。

    現代世相の風刺がとても良い。
    ただ、ヒトラーの思想(優生主義)は受け容れられるものではなく、これがギャグとして認知されているからいいわけである。

  • 2011年にベルリンのとある空き地で目が覚めたのは、1945年5月に自殺して死んだはずのヒトラー。21世紀のドイツにタイムスリップしたのか、なんなのか。彼は何のために蘇ったのか。

    とにかく、現代人とヒトラーの会話の噛み合わなさっぷりに抱腹絶倒、爆笑の連続。いやはや、何度吹き出したことか。本を読んでこんなに笑ったのはひさしぶりだ。

    ヒトラーはいきがかったキオスクの店主の世話でテレビ局の人間と知り合い、お笑い芸人としてデビューすることになる。まさか「本物の」ヒトラーとは誰も思わないから、番組はバカ受け。ヒトラーは「ユーチューブのヒトラー」と呼ばれる人気者になる。

    小説は終始ヒトラーの一人称で語られるので、ヒトラーの思考をトレースしているような気分になる。訳者あとがきによると、これがとても大変苦労されたそうだ。しかしながら、あの弁舌の勢いそのままの訳文はとても読みやすい。

    著者のはしがきが読者にある警鐘を与えている。そのことばの意味は下巻で明確になる。

  • 伝わらないというかあまりにもコミカルすぎた。ドイツで発表された風刺小説。2012年の発表から2015年の8月には映画公開という恐ろしいスピードの出世作。ただ、これをよくドイツで発表できたなと思う。日本では興行成績は2億7000万に終わっている。

    「帰ってきたヒトラー」

    タイムスリップしたヒトラーがなぜかテレビ番組の人気者に、そして現代社会に訴える表現や言動は限りなく過去と同じようになのでしょうけれど、引き込まれる。現代にマッチしている。ただ、文字にはまるで臨場感がないため、普通の作品となっている。

    映画を見てしまった人間にしてみると普通の風刺小説かもしれないが、やはり題材が題材なだけに好き嫌いは否めないかと

  • ずっとヒトラーの一人称で進む本作は、ヒトラーの素朴でああるがゆえの明快で魅力的な思考に読者も知らず知らずのうちにどんどん乗せられてしまい、ややもするととんでもない結論にさえ一定の「正しさ」を認めてしまいかねない危うさを感じさせるところに最も大きな問題提起がある。ナチスのスローガンは今でこそ全て明白な誤りとされているけれど、当時はそうではなかったのであって、それも極端な結論だけを見るのではなく、その結論を導く鮮やかさを見れば、現代の人々も容易に納得のいくものである。本書はそうした当時の人々の置かれた状況を再現することで、我々に生々しいナチスの息吹を感じさせる点で非常に効果的な手法が取られており、成功しているように思う。第2第3のヒトラーがコメディアン程度で終わってくれることを切に願う(もう遅いかもしれないけど)

  • あの、アドルフ・ヒトラーが現代にいきなり存在することになったら?
    ヒトラーの一人称で進む、勘違いものの風刺小説。
    うん、そりゃあ芸人扱いですよね。
    まともな感性扱いはされない。
    自分を完全に信じ切っている人というのは今ならむしろ迷惑でなければ崇拝、もしくは放置される感じはある。
    にしてもヒトラーも周りも勘違いしてはいるものの彼自身はかなり現実的で適応力が高いのに目を瞑って読むと現在の批判的な話が結構的を射ている気がしてしまう。
    だからこそ風刺小説なのだろうけれど。
    ユーチューブとか携帯を使う総統の図を見たいので映画版も観ようかな。

  • 星3.5。ヒトラーが自殺する直前に現代のドイツに時間を超えて跳んだ話。アイディアはありきたりだが、ヒトラーの口調が落としどころ。

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著者プロフィール

1967年、ドイツのニュルンベルク生まれ。エルランゲン大学で歴史と政治を学ぶ。ジャーナリストとしてタブロイド紙や雑誌などで活躍。その後、『帰ってきたヒトラー』で一躍有名になり、映画でも大成功を収める。

「2020年 『空腹ねずみと満腹ねずみ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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